高周波回路

【入門】低周波回路と高周波回路の違い

電気回路においては、取り扱う周波数によって「低周波回路」と「高周波回路」に分類されることがあります。

そこでこの記事では、低周波回路と高周波回路のそれぞれの違いについて解説します。

 

 

低周波と高周波の境界

低周波と高周波の境界について考えるためには、周波数と波長の関係について理解しておく必要があります。

周波数と波長

周波数 f と波長 λ は、以下の関係で表されます。

また実際の伝送線路においては、誘電体の波長短縮の影響も考慮する必要があります。

波長短縮の詳細はこちら↓

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境界

そして低周波と高周波の境界については、伝送線路の電気長(波長短縮を加味した長さ)と伝送信号の波長によって定義することができます。

具体的には、信号の波長 λに対して伝送線路の電気長が λ/20以下の場合には「低周波回路」とみなすことができます。

例として、信号の周波数が 10MHzだったとすると波長 λ=30m となります。このときに  λ/20 = 1.5m となるため、伝送線路の長さが 1.5mより短い場合には低周波回路としてみなすことができます。

ちなみに λ/20というのは、位相で考えると 360 / 20 = 18° に相当します。

境界の目安

とはいえ、信号の周波数によって逐一「低周波」か「高周波」かを考えるのは煩わしいです。

そのため「低周波」と「高周波」の分類については、100MHzを一つの区切りとして捉えるとわかりやすいです。

特に電気回路を実装するプリント基板において、周波数の高い(高速)信号に対して 15cm以上の配線を適用することはほとんどありません。

そして、この 15cmを基準として λ/20 の考え方を適用すると λ=3m となり、このときの周波数は 100MHzとなります。

 

集中定数回路と分布定数回路

ここまで「低周波回路」と「高周波回路」の分類について波長をもとに考えてきましたが、これは即ち「集中定数回路」と「分布定数回路」の違いと言い換えることができます。

集中定数回路

例えば300mm の伝送線路と周波数が低い信号(10kHz)があったとします。

この信号の波長は λ = 30 km と伝送線路の長さ 300 mm に対して波長が非常に長いです。

このような場合、伝送線路上を信号が伝搬するときに伝送線路上で信号は位相がほとんど変化しないため、どの箇所でもだいたい同じ振幅となります。

つまり伝送線路全体を単純に一つの線として捉えることができるということで、これが集中定数回路の特徴です。

分布定数回路

一方、分布定数回路は、同じ伝送線路に対して信号の周波数が 1GHz だったとすると、信号の波長は λ = 300 mm となります。

この信号が伝送線路を伝搬する場合には、伝送線路上の場所によって信号の位相が異なるため、場所ごとに振幅が大きく変化します。

このような場合、伝送線路は長さが少し変わっただけで通過する信号の振幅が変わってしまうため、伝送線路を単純に1つの線として扱うことは難しいです。

そのため、単位長さあたりにコイルとコンデンサが分布した有限長の伝送線路として考える必要があります。

 

 

低周波回路の特徴

低周波回路の特徴は、一般的な電気回路の法則(オームの法則やキルヒホッフの法則)が適用できるということです。

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特に回路図で表されるような、単純化された部品と配線として回路を捉えることができ、そのため回路の電気的な振る舞いを簡単な数式をもとに考えることができます。

 

高周波回路の特徴

一方で高周波回路は、伝送線路の長さの影響を受けるため「インピーダンスマッチング」の考え方が重要になります。

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また高周波回路においては、電子部品の周波数特性についても考慮する必要があります。

例えば同じ静電容量のコンデンサだとしても、部品サイズによって周波数特性が異なります。

周波数特性が違うということは、周波数によってインピーダンスが異なるということを意味し、そのためにインピーダンスマッチングに必要な静電容量に違いが生じるということに繋がります。

このように高周波回路では、低周波回路と比較して考慮すべきポイントが非常に多いため、一般的には難易度の高い回路と言われています。

 

 

おわりに

今回は「低周波回路」と「高周波回路」の違いについて解説しました。

それぞれの回路とも、考慮すべきポイントは異なりますが、伝送線路の電気長と信号の波長をもとにして分類するということは理解しておくと良いです。

今回は境界として 100MHzが一つの目安となるとお伝えしましたが、小型のアプリケーションにおいては伝送線路が短くなるため、より高い周波数まで低周波回路(集中定数回路)として扱うことができます。

そのため、このあたりについてはアプリケーションの性質に合わせて、柔軟に思考を切り替えることができるようにしておくことが大切です。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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