高周波回路

波長短縮とは

波長短縮は、高周波回路の伝送線路の設計やアンテナとのインピーダンスマッチングにおいて重要となるものです。

そこで今回は、波長短縮の意味を改めて考えてみた後に、代表的な伝送線路である同軸ケーブルやマイクロストリップラインにおける波長短縮の影響を検証します。

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電磁波の速度

波長短縮は、電磁波がある媒質中を伝搬するときに、媒質が誘電率を持つことによって
電磁波の波長が短くなる、あるいは伝搬速度が遅くなる現象のことです。

空間を伝搬する電磁波はもちろん、伝送線路を伝搬する電気信号や電磁波の一部である光も
同様にこの波長短縮の影響を受けます。

ではなぜこのように電磁波の波長が短くなったり、速度が低下したりするのでしょうか?

電磁波の伝搬速度は、おおよそ 30万km/s として知られています。

この伝搬速度は、真空状態において c = 1/√(ε0*μ0) として規定されたもので、真空の誘電率 ε0 = 8.85×10^(-12)、真空の透磁率 μ0 = 4π×10^-7 となることから

電磁波の伝搬速度 c = 2.99792458×10^8 [m/s] となります。

これが一般的に電磁波の速度や光の速さとして知られているもので、つまり電磁波の伝搬速度は、もともと誘電率と透磁率によって決まっているということです。

 

波長短縮とは

媒質中の電磁波の伝搬速度は、比誘電率と比透磁率が掛かって

c = 1/√(ε0*εr*μ0*μr) となります。

すなわち、媒質の比誘電率や比透磁率が 1 より大きい場合、電磁波の速度が低下します。

そしてこの伝搬速度の低下は、波長という観点で考えると波長が短くなることに相当し、これが媒質中で波長短縮が発生する理由となります。

そして真空における波長を λ0 とすると

波長短縮後の波長は λ = λ0 * 1/ √εr として表され

この λ0 に掛かっている係数「1/√εr」のことを「波長短縮率」と呼びます。(多くの媒質は比透磁率が 1 であるため省略しています)

 

同軸ケーブルの波長短縮

同軸ケーブルで波長短縮の影響を考えるのは、非常に簡単です。

同軸ケーブルは、信号を伝送するため中心導体とGNDとなる外導体があり、中心導体と外導体を絶縁するために間には誘電率を持った絶縁体が挟まれます。

一般的な同軸ケーブルの場合、この絶縁体にはポリエチレンが使われます。

ポリエチレンの比誘電率は εr ≒ 2.3 です。

そのため、このときの波長短縮率は 0.66 、つまり真空の時の波長に対して 66% 程度の長さになります。

 

マイクロストリップラインの波長短縮

マイクロストリップラインは、信号を伝送するパターンとGNDのベタパターンが上下に並んだ構造となっており、その間を挟むようにして絶縁体が配置されています。

このとき信号の伝送線路から見ると、下側にはある比誘電率を持つ絶縁体があり、反対に上側は比誘電率が 1 の空気となっています。

このような場合、伝送線路全体としてみると上側の空気によって絶縁体の比誘電率が低下する傾向にあり、マイクロストリップラインにおいては、比誘電率がおおよそ 70~80% に低下します。

このときの誘電率のことを「実効誘電率」と呼びます。

この実効誘電率は、同じマイクロストリップラインでも「線幅」や「絶縁体の厚み」によって変わってくるため、ツールを使って計算してみます。

今回は QucsStudio の「Transmission Line Culculator」 というツールを使用します。

マイクロストリップラインの設計条件は以下の通りです。

  • 絶縁体材質 : FR-4
  • 誘電正接 tanδ : FR-4
  • 銅箔の厚み T : 35um
  • 絶縁体の厚み H : 1.6mm
  • 特性インピーダンス Z0 : 50Ω
  • 周波数 Frequency : 300MHz
  • 位相 Angle : 360 degree

すると「Dimensions」の線長を表すL が「545mm」となっています。

FR-4の比誘電率 4.5 を波長短縮の式に代入した場合、波長短縮率は 47%、つまり波長は 470mm となりますが、545mm との間に 75mm ほど差が生じています。

これが実効誘電率の影響で、今回の場合では実効誘電率は εr eff = 3.37 となります。

このようにマイクロストリップラインにおいては、絶縁体の誘電率によって波長短縮率が一様に決まるわけではなく、線幅や絶縁体の厚みによって波長短縮率が変わります。

 

おわりに

今回は波長短縮をテーマとして、波長短縮が発生する理由と、同軸ケーブルとマイクロストリップラインにおける波長短縮の影響について解説しました。

今回検証に使用した QucsStudio の「Transmission Line Culculator」は、パラメータを入力するだけで伝送線路の設計ができたり、実効誘電率を計算できたりと非常に便利なツールです。

無料で誰でも使えるので、興味のある方はぜひ一度使ってみてください。

QucsStudioのダウンロードはコチラ↓

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今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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