EMC村の民
~iNarte EMCエンジニアへの道~
キャリア

EMCエンジニアの「これまで」と「これから」

 

EMCエンジニアの未来。

少し壮大なテーマですが「人生100年時代」と言われる現代で、EMCエンジニアとしてどのように生きていくべきなのか?

答えがあるテーマではありませんが、先人たちのキャリアの過去(これまで)を知り、そこから未来(これから)について考えてみましょう。

少し長い記事ですが、お付き合いください。

 

EMCエンジニアのはじまり

EMCエンジニアの歴史。

それは、デジタル機器が普及し始めた1980年代まで遡ります。

当時は「CISPR」による国際規格や、「FCC」による規制は存在したものの、大手企業以外ではEMC試験はほとんど実施されていませんでした。

一方で、エレクトロニクス技術の発展により「家庭」「工場」「事務所」など身の周りにあらゆる場所に電子機器が普及していきます。

その結果、それぞれの機器がノイズを出し放題の状態で、互いに影響を受けて、誤動作が頻発するような状況が生まれました。

実際にノイズによって、鉄道無線の受信トラブルが起きたり、工場の装置が人を巻き込んで事故を起こしたりしていました。

 

そうした状況を一変する規制が発令されます。

それが「EMC指令」です。

EMC指令によって、EMC業界を取り巻く状況が一変します。

EMC指令によって、機器を欧州へ輸出する全ての製造業者にEMC規格の適合が求められるようになりました。

また同時に、機器がEMC性能を満足しているかどうかを正しく評価するための試験サイトの需要も大きく増加しました。

 

ここが「EMCエンジニアのはじまり」です。

 

EMC指令の導入によって、EMC試験所が増加するとともにEMCエンジニアの数も増加していきました。

また製造業者(セットメーカー)は、規格適合に向けてEMC設計やノイズ対策技術に優れたEMCエンジニアを輩出するようになります。

同時に、ノイズ対策という市場(マーケット)が新たに生まれたことで、部品メーカーの中からノイズ対策部品を開発する新たなEMCエンジニアが誕生しました。

さらにその後、EMC設計やノイズ対策技術のノウハウが整備され、それらの知識をもとに規格適合へのコンサルティングを行うEMCコンサルタントも登場します。

こうして、以前紹介した「EMCエンジニア」の全てのタイプが出揃うこととなりました。

EMCエンジニアとは「EMCエンジニア」の分類と業種について紹介しています。...

 

EMCエンジニアの「これまで」

1990年代~2000年代

1990年代、2000年代と時代が進むにつれて、EMCエンジニアの活躍場所は拡大していきます。

大手電機メーカーではEMCに対する研究開発が盛んに行われ、EMC設計のスペシャリストと呼ばれるようなEMCエンジニアも誕生します。

この当時のEMCに対する研究開発の熱量は、ノイズ研究所が発行している「EMCとともに40年」の桜井氏の記事の「EMC概論」の編集経緯からも伺いしれます。

ただし、このようなスペシャリスト型のEMCエンジニアは稀です。

ほとんどのエンジニアは担当製品を持ちながらEMC設計のスペシャリストやEMCコンサルタントが主催するセミナーでEMCの知識を学び、日々実践してことでスキルを磨いていきました。

 

EMC試験所では、エミッション試験をはじめとして自動測定ソフトウェアの導入によって、試験の効率化が進んでいきます。

またEMC試験の対象となるアプリケーションが年々増加することで、試験需要も伸びていき、それに伴ってEMCエンジニアが増加し、レベルアップが図られていきました。

 

この時代において、EMCエンジニアのキャリアは「開発する製品」や「担当する試験」は少しずつ変化するものの、一つの企業の中でスキルを磨いていき、その中で「エンジニア」から「マネージャー」へと「出世」する道を目指すことが一般的でした。

 

2010年代前半

EMCを取り巻く状況は、2008年の「リーマンショック」によって一変します。

2008年度は大手電機メーカー8社のうち7社が赤字決算に陥り、当時は「100年に一度の大不況」などと言われました。

さらに、2011年に入り地デジ特需と言われた「家電エコポイント制度」の終了、「東日本大震災」を経て、日本企業は「6重苦」と呼ばれる状況に陥り、製造業を中心に日本の経済環境が著しく悪化しました。

6重苦 出典:みずほ総合研究所

 

そして、EMC業界にとっても厳しい時代が到来します。

メーカーにおいては、経験豊富な40代・50代のエンジニアを中心にリストラや配置転換が行われ、さらには団塊世代の引退が同時期に重なったことで、EMCに関する「技術伝承」が不十分なまま、現場のエンジニアリングのアウトソース化が進んでいきました。

同時に試験所においても、メーカーの開発案件が次々にストップしたことで稼働率が低下し、厳しい経済環境に晒されることになりました。

さらには各企業の社員への投資(教育機会)も減少していき、エンジニアとしてスキルアップを図るには個々人の努力に委ねられるようになっていきます。

 

そうした環境の変化によって、EMCエンジニアも他の分野のエンジニアと同様に、ひとつの企業でキャリアを終えることが少なくなり、転職も含めたキャリアプランが求められるようになっていきました。

もちろん、従来と同じように「エンジニア」から「マネージャー」へ出世を目指すEMCエンジニアも存在します。

しかし、そういったエンジニアは、その職場の中ではひとつ頭の抜き出た存在であることがほとんどです。

それ以外のEMCエンジニアは、例えば「メーカー」から「EMC試験所」に転職したり、あるいは反対に「EMC試験所」から「メーカー」の「品質管理部門」や「開発部門」に転職するなど、転職も含めてキャリアアップを図る道が生まれました。

 

EMCエンジニアの「現在」

いわゆる「アベノミクス」による景気回復に加えて、自動車業界が「100年に一度の転換期」と呼ばれる状況を迎えて、メーカー、EMC試験所ともに以前の勢いを取り戻していきます。

一方で、2010年代前半に多くのベテランエンジニアが現場を離れてしまっていることから、現場で即戦力として活躍できるEMCエンジニアはかなり少なく、EMCエンジニアの需要はかなり高まっています。

その結果、EMCエンジニアにも従来のように一つの企業に所属して働くのではなく、プロフェッショナルなエンジニアとして派遣で活躍する道も出てきました。

「派遣」という言葉から悪いイメージを持たれることもありますが、このタイプには「iNarte EMCエンジニア」の資格を持つ優秀なEMCエンジニアも多く存在します。

これまでのように「エンジニア」から「マネージャー」へと出世するという道もありますが、他分野のエンジニアと同様にプロジェクトベースで働きながら「EMCエンジニア」としてキャリアアップを目指す道ができつつあるように感じます。

 

EMCエンジニアの「これから」

これまでのEMCエンジニアの動向から、今後のキャリアについて考えてみます。

EMCエンジニアは、められるスキルに特殊な面はありますが、これまでの変遷を見る限り、エンジニアとしてのキャリアプランは、他の分野のエンジニアと大きな違わないことがわかります。

つまり、EMCエンジニアのこれからの働き方は、世の中のエンジニアと呼ばれる職種の働き方に追従していくものと考えられます。

 

今後の日本社会において、少子高齢化による人材不足はどの分野でも共通の課題です。

EMC業界においてもエンジニアの母数が減少することで、EMC試験やノイズ対策に精通したスペシャリストタイプのEMCエンジニアの価値はますます高まっていくことでしょう。

IT業界のエンジニアと同じように、スペシャリストとして活躍し続けることでキャリアアップする道も多くなると予想します。

一方で、組織における「マネージャー」の役割もなくなりません。

ただし、単純な労務管理やプロジェクト管理だけでは「AI技術」の発展によって代替される可能性があるため、EMCエンジニアとしてのキャリアを生かしたマネジメントスキルが求められるようになるでしょう。

 

この「スペシャリストタイプ」と「マネージャータイプ」。

それぞれに求められる「スキル」は大きく異なります。

そのため個人のキャリアプランにおいては、早い段階でどちらに適正があるのか、あるいは、どちらに進みたいのかを決めて、スキルを磨いていく必要があります。

 

「スペシャリストタイプ」に進む場合は、当サイトで紹介している「iNarte EMC エンジニア」「EMC Design エンジニア」「第1級陸上無線技術士」などの資格が、エンジニアのスキルを証明するための『はじめの一歩』となるでしょう。

もちろん資格だけでなく、実績も重要です。

実績を積んでいくにあたって、過去のエンジニアから「仕事観」や「勉強法」を学ぶことは欠かせません。

過去のエンジニアたちが、自分自身と同じように悩み、解決するまでの過程をなぞることで、進むべき道の方向性が見えてくることもあるでしょう。

「エンジニアとしての生き方」について、参考になりそうな書籍をいくつか挙げておくので、気になるものはチェックしてみてください。

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「マネージャータイプ」に進む場合は、EMCの基本知識はもちろんですが、AI技術の及ばない領域(戦略策定、人心掌握など)への投資が重要となります。

こちらもキャリアを考える上で参考となりそうな書籍を挙げておきます。

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組織やチームの成果が自分自身の評価になるという面では、これまでと同じです。

しかし、今後はこれまで以上に「人間力」と言われるような、人としての「魅力」をもって組織をまとめていくチカラが重要となってくるでしょう。

 

おわりに

長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

EMCエンジニアとして、どのように生きていくべきなのか?

EMCエンジニアの「はじまり」から「現在」までのキャリアの変遷を見てきたうえで、「これから」のEMCエンジニアのキャリアプランについて考えてみました。

冒頭にも述べたように、答えのある内容ではありませんが、みなさまの今後のキャリアプランの考えるきっかけになれば幸いです。

 

【続きの記事はコチラ】

EMCエンジニアのキャリア戦略 EMCエンジニアとして、活躍していくために今後どのようなスキルが必要となるのか? 自分の興味があることだけを勉強しても、実...

 

今回は以上です。

改めて、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

ABOUT ME
エンジャー
EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

POSTED COMMENT

  1. 小島亘 より:

    私は2000年の後半からEMCに携わってきましたが、それ以前の動きを知ることができて勉強になりました!
    また、EMC業界に転職者が多い事情もわかり、大変興味深い記事で、感動しました。

  2. エンジャー より:

    コメントありがとうございます。
    私なりの解釈も多分に入っていますが、ご参考になったようで嬉しいです。
    これからもキャリアに関するテーマは取り扱っていくので、ぜひまた読んでください。

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