コンデンサ

XコンデンサとYコンデンサ

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Xコンデンサ と Yコンデンサは、電源ライン用のノイズ対策部品として使用されるものですが、商用電源には漏電や感電のリスクが有るため、他のコンデンサとは違った安全基準が設けられています。

そこで今回は、Xコンデンサ と Yコンデンサのそれぞれの特徴や使用上の注意点について
解説します。

動画はコチラ↓

 

ノイズの伝搬モード

XコンデンサとYコンデンサを効果的に使用するためには、ノイズの伝導モード「ノーマルモード」と「コモンモード」に関する理解が必須です。

ノーマルモードは、L(ライブ)と N(ニュートラル)をそれぞれ行って帰ってくるようにして逆向きに流れるノイズの伝導モードで、ディファレンシャルモードと呼ばれることもあります。

一方コモンモードは、L と N を同じ向きに流れていき、E(アース)を介して戻ってくるノイズの伝導モードになります。

 

 

XコンデンサとYコンデンサとは

Xコンデンサ

このうちノーマルモードは、商用電源の電流と同じ流れ方なのでイメージやすいです。

ノイズと商用電源では「周波数」が異なるため、Xコンデンサを使用するときには「L – N 間」にコンデンサを並列に接続して、周波数の高いノイズ成分だけをXコンデンサでバイパスします。

コモンモード

コモンモードは、L と N に共通の電圧が掛かるため、同じ向きにノイズ電流が流れていきます。そしてYコンデンサを使用するにあたっては、「L – E 間」さらに「N – E 間」にそれぞれコンデンサを接続します。

Yコンデンサも、高周波に対して低いインピーダンスとなるため、ノイズ成分のみをバイパスすることができます。

 

Xコンデンサの選び方

伝導エミッション規格では「150kHz ~ 30MHz」の周波数範囲で限度値が規定されており、このうち「150kHz ~ 1MHz」あたりがXコンデンサによってノイズ対策の効果求められる周波数帯になります。

種類

一般的には耐圧性能に優れるフィルムコンデンサが使用されます。

静電容量

部品サイズが許す範囲で静電容量が大きめのコンデンサが使用されます。実際に使用される静電容量の範囲としては「0.1uF ~ 10uF」あたりです。

これはノイズ対策が必要な周波数において、静電容量が大きいものほどインピーダンスが低いためで、0.1uFのコンデンサ と 10uFのコンデンサ では、150kHz において100倍 のインピーダンスの差があります。

ただし、静電容量が大きいほど価格が高く、またサイズも大きくなるため、このあたりは全体のバランスを見て選ぶこととなります。

サブクラス

安全面に関することとしては、商用の電源ラインで使用するため雷サージがコンデンサに直接印加されるというリスクがあります。そのため、Xコンデンサの場合には、雷サージに対する耐性が「X1」と「X2」という2種類のサブクラスによって分類されています。

X1

X1 は 高パルス用で、4kV の雷サージ電圧に耐えうる仕様となっています。「L – N 間」に 4kV が掛かるというのは、IEC61000-4-5 においては「レベルX 」、つまりはサージ電圧が非常に高い特別な場合に適用されるレベルなので、かなり高い雷サージ耐性を持っていると言えます。

X2

一方で X2 の方は、こちらは 一般用 と言われており、2kV のサージ電圧に耐えうるものとなります。この X2 でも、IEC61000-4-5 においては「レベル4」に相当するものなので、一般用とは言え十分高いサージ耐性を持っていることがわかります。

そのためほとんどの場合には、X2 にカテゴライズされたXコンデンサが使用されます。

注意事項

Xコンデンサは「L – N 間」に接続されますが、両端には常に商用電圧が掛かっているため、電源のコンセントを抜いたときに感電する可能性があります。

そのため、感電を防止するための「ブリーダ抵抗」と呼ばれる抵抗がXコンデンサと並列に接続されます。ブリーダ抵抗を接続することで、コンデンサの電圧が速やかに低下するため感電を防止することができます。

 

 

Yコンデンサの選び方

Yコンデンサは、コモンモードのノイズに対してバイパスする経路を与える部品で、L と N それぞれのラインごとに接続されます。

種類

コンデンサの種類としては「フィルムコンデンサ」と「セラミックコンデンサ」が主に使用されます。コンデンサの違いの詳細についてはこちらで解説しています。

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静電容量

Yコンデンサは、静電容量を大きくしすぎると「漏れ電流」が大きくなってしまうため、あまり大きな静電容量のものは使用できません。そのため静電容量としては「1000pF ~ 4700pF」あたりがよく使用される容量となります。

Xコンデンサと比較すると静電容量が小さいため、ノイズ対策としては主に1MHz以上の周波数のコモンモードノイズに対して効果的と言われています。1MHz以下のコモンモードノイズに対しては、コモンモードチョークコイルと組み合わせてLCフィルタを構成することで対策します。

サブクラス

Yコンデンサにおいては、仮に絶縁破壊を起こした場合には GND と接続されているため地絡電流による機器の故障や火災の危険性があります。そのため雷サージに対する耐圧は、Xコンデンサよりも更に高い基準が設けられています。

耐圧の基準は、Yコンデンサの場合は「Y1」「Y2」「Y4」と 3つのサブクラスに分類されます。このうち Y4 は用途がかなり限定されてしまうことから、使用される機会は少なく、Y1 または Y2 から選択することが一般的となります。

Y1

Y1 のサブクラスは、ピークパルス電圧が 8kV まで耐えうる仕様となっており、IEC61000-4-5 においては、最大試験レベルとなる「レベル4」の試験電圧 4kV に対して
2倍のサージ耐性を持っていることになります。

これだけ余裕を持った要求なのは、もちろん万が一絶縁破壊を起こした時の影響が甚大であるためですが、実際にはこれだけでは雷サージ対策として不十分となることもあり、バリスタなどの雷サージ対策部品と組み合わせることで対処することもあります。

雷サージ対策部品の詳細はコチラ↓

雷サージ対策部品の分類 イミュニティ試験の中でも、高いエネルギーを加える試験が「雷サージ試験」です。 多くの場合は IEC61000-...

Y2

Y2 の方は、ピークパルス電圧が 5kV となっており、IEC61000-4-5 において「レベル4 」をクリアできるの雷サージ耐性を持っています。

そのため、一般的な場合には Y2 のサブクラスの Yコンデンサが使用されます。

 

おわりに

今回は「Xコンデンサ」と「Yコンデンサ」の概要と選び方について解説しました。

ノーマルモード と コモンモード に関しては、コンデンサに限らずノイズ対策においては基本中の基本となる考え方なので、きちんと理解しておくことをおすすめします。

電源のノイズ対策については、以下の記事で解説しています。

スイッチング電源のノイズ対策を考えるスイッチング電源のノイズ対策の考え方について紹介しています。...

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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