この記事ではアナログ・デバイセズ製の ADALM2000と ADALP2000を使った、反転増幅回路の基本動作について解説しています。
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オペアンプとは
オペアンプは2つの入力端子と1つの出力端子を持っており、入力端子間の電位差を増幅する働きを持つ半導体部品です。
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この2つの入力端子は、プラス端子とマイナス端子に分かれており、プラス端子を非反転入力端子、マイナス端子を反転入力端子と呼びます。また電源端子についてもプラスとマイナスの端子があり、プラスとマイナスの電圧の両電源で動作します。
オペアンプの特徴
オペアンプはアナログ回路において「入力インピーダンスが高い(Zin=∞)」「出力インピーダンスが低い(Zout=0)」「増幅度(ゲイン)が高い(A=∞)」という3つの特徴を持ちます。
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この3つの特徴は入力された信号を正確に増幅するために非常に重要なことで、この特徴を持つがゆえにオペアンプは様々な電子回路で使用されています。
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詳細はトランジスタ技術2022年12月号でも解説しているので、参考にしてみてください。
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反転増幅回路の基本
反転増幅回路は、アナログ回路の中で最もよく使用される回路の一つで、名前の通り入力信号の極性を反転して増幅する働きを持ちます。
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回路構成としては、抵抗 R1を介して反転入力端子に信号源が接続され、非反転端子端子にGNDが接続された構成です。
また出力端子については、帰還抵抗 R2を介して反転入力端子に接続されます。この反転増幅回路では、抵抗 R1とR2の比によってゲインGが決まります。
動作原理については、以下の記事で解説しています。
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実験機材
反転増幅回路の実験に使用する計測器と部品について紹介します。
USB計測器 ADALM2000
今回は様々なアナログ回路の実験に活用できる Analog Devices製の ADALM2000を使用ます。
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ADALM2000はオシロスコープ、信号発生器、マルチメータ、ネットワークアナライザ、スペクトラムアナライザなど、これ1台で様々な測定を機能を実現できる非常にコストパフォーマンスに優れた計測器です。
今回はこのADALM2000の測定機能のうち、オシロスコープと信号発生器の機能を使ってオペアンプの反転増幅回路の動作について実験します。
パーツキット ADALP2000
回路の製作にあっては Analog Devices製の ADALP2000というアナログ電子部品のパーツキットを使用します。
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このパーツキットの中にはブレッドボードや抵抗・コイル・コンデンサはもちろん、Analog Devices製の各種デバイスも同梱されており、これ1つあれば様々な電子回路を実験できるようになっています。
オペアンプ ADTL082
オペアンプはパーツキットの中のADTL082を使用して反転増幅回路を作ります。
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このADTL082は2回路入りの JFET入力のオペアンプでオーディオ用途などで使用されるオペアンプです。
両電源で動作する汎用的なオペアンプではありますが、ゲイン帯域幅が5MHz、スルーレートが20V/usとそこそこ高い性能を持っているため、今回の実験には十二分な性能のオペアンプと言えます。
ソフトウェア
ADALM2000はPCを接続して動作することが前提となっており、Scopyというソフトウェアを使って各種の制御を行います。
![](https://engineer-climb.com/wp-content/uploads/2023/01/scopy.png)
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反転増幅回路の製作と実験
反転増幅回路の製作にあっては、ブレッドボードに部品を実装します。
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上図の赤丸の部分が入力抵抗と帰還抵抗で、ここでは入力抵抗を1kΩ、帰還抵抗を10kΩとしているためゲインは10倍になります。
またオペアンプにプラスとマイナスの電源を供給するために両電源モジュールを使用しています。両電源モジュールの詳細は以下の記事で解説しています。
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動作検証
回路が完成したら、信号発生器とオシロスコープを使って回路の動作を確認してみます。
まずは信号発生器の機能を使って反転増幅回路への入力信号を設定します。ここでは振幅を1V、周波数を100Hz に設定しています。
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次にオシロスコープの波形を調整します。ここではCH1が反転増幅回路への入力信号、CH2が反転増幅回路からの出力信号を表しています。
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実際に波形を確認してみると、入力信号に対して出力信号の振幅がおおよそ10倍となっていることが確認できます。
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入力抵抗を1kΩ、帰還抵抗10kΩとしているので、反転増幅回路の理論通りと言えます。
このようにオペアンプを使った反転増幅回路をサクッと作って、すぐに特性評価できるというのがADALM2000とパーツキットと利用するメリットです。
周波数特性
ちなみにをネットワークアナライザの機能を使えば、反転増幅回路の周波数特性を測定することもできます。
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実際に測定してみると、ADTL082の特性通りおおよそ5MHzくらいまでゲインが維持されていることが確認できます。
まとめ
今回は ADALM2000とADALP2000を使ってオペアンプによる反転増幅回路の基礎を解説しました。
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電子回路の理論を学ぶことは大事ですが、実際に回路を製作して実験することもとても大切です。
今回実験に使用した計測器ADALM2000とパーツキットのADALP2000は、いずれも基礎的な実験を行う上では最適な構成となっており、これから電子回路を学びたい方には最適のセットと言えます。
![](https://engineer-climb.com/wp-content/uploads/2023/01/ADALM%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88-800x329.jpg)
手元に計測器がない方はチェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。