無線機の電波(妨害波)がケーブルを介して伝導してくる場合のノイズ耐性を評価する試験が「伝導イミュニティ試験」です。
この試験で想定する妨害源は、ラジオ、短波放送,アマチュア無線などです。
そのため「伝導イミュニティ試験」は、静電気放電、雷サージ、バーストなどの間欠的なノイズと異なり、連続的な妨害を与える試験となります。
試験電圧は他の試験よりも低いですが、連続的ということで他の試験では見られない不具合が発生することもあります。
今回の記事では、そんな「伝導イミュニティ試験」の概要について紹介します。
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試験レベル
試験周波数は「150kHz~80MHz」で、周波数を連続的に掃引させて試験します。
周波数の掃引ステップは「1%以下」となるように設定します。
1つの周波数あたりの滞留時間は供試品によって異なり、妨害波に対する応答に十分な時間を確保する必要があります。
先述したように、試験電圧は他のイミュニティ試験よりも低いです。
試験電圧はクラスによって分類されています。
一般的には試験電圧を「V:ボルト」で表しますが、RF信号であるためデシベルで表記することもあります。
1V = 120dBuV
3V ≒ 130dBuV
10V = 140dBuV
デシベルの考え方に関しては、以下の記事を参考にしてください。
このように考えると試験電圧はかなり高く感じますが、これは妨害源を放送用電波と想定しているためです。
試験波形
試験波形には、1kHzの正弦波で80%のAM変調(Amplitude Modulation:振幅変調)掛けものを使用します。
注意事項としては、試験ではAM変調波を使用しますが、試験電圧はCW(無変調の正弦波)の実効値です。
例えば、クラス1の 1Vの例で考えてみましょう。
正弦波
まず試験電圧は正弦波で考えます。
実効値が 1[V]なので、ピーク値は 1✕1.41 ≒ 1.41[V] となります。
この時の Peak to Peak 電圧 Vppは 1.41✕2 ≒ 2.82[V]です。
AM変調
一方、試験で実際に印加する妨害波は、AM変調波です。
80%のAM変調をかけることで、Vppが 1.8倍になります。
正弦波のVppを元に計算すると、 変調後の Vpp = 2.82✕1.8 ≒ 5.09[V] です。
正弦波の実効値ベースで見ると、5倍以上の電圧が掛かっていることになります。
このように考えると、意外と高い電圧が印加されていることがわかります。
変調に関しては、「iNarte資格試験」や「陸上無線技術士試験」でも頻繁に出題されるためきちんと理解しておいたほうが良いです。
変調の基礎を学ぶには「無線通信とディジタル変復調技術」が最適です。
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注入方法
伝導イミュニティ試験はケーブルに妨害波を印加しますが、印加方法は2通りのパターンがあります。
「CND」を使用する方法と「注入クランプ」を使用する方法です。
注入方法は選定フローに従って決定します。
補助機器のコモンモードインピーダンスが 150Ωにならない場合の処置については、「EMCお役立ち部屋」さんで詳しく解説されています。
試験配置
【CDN注入】
【クランプ注入】
とにかく伝導イミュニティ試験では、補助機器の影響を排除するためのCDNがたくさん必要です。
CDNそれぞれ、供試品や補助機器から 0.1~0.3 mの距離に取り付る必要があります。
試験時の注意点をT.satoさんが図説されているので、参考にしてみてください。
おわりに
伝導イミュニティ試験「IEC61000-4-6」の概要について紹介しました。
伝導イミュニティ試験に関しては、校正方法についても注意点が多くあるのですが、その解説はまた別の機会にしたいと思います。
他の「IEC61000-4シリーズ」の試験については、下記のリンクからチェックできます。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。