電源ラインに対するイミュニティ試験にはいくつかの種類がありますが、定格電圧に対するイミュニティ耐性を評価する試験が「電圧ディップ・瞬時停電試験」です。
電圧ディップ試験では、定格電圧に対して一定サイクル(時間)電圧が低下することによる影響を評価します。一方の瞬時停電試験では、言葉の通り瞬時的な停電を模擬した試験を行います。
それぞれの試験は「IEC61000-4-11」で扱われています。
そこで今回の記事では電圧ディップ・瞬時停電試験「IEC61000-4-11」の概要について紹介します。
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適用機器
この規格では、商用電源(50Hz/60Hz)に接続する電子機器を試験対象としています。
そのため例えば、以下の機器は規格の適用範囲外となります。
- DC駆動機器
- 400Hz駆動機器(航空機や船舶向け)
また商用電源機器においても、相電圧の上限が16Aと定められており、それ以上の電流が流れる機器についても適用対象外となります。
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試験波形
電圧ディップ、瞬時停電ともに規格によって試験サイクル(時間)が定められていますが、まずはそれぞれの用語のおさらいをしておきましょう。
電圧ディップ試験は、電力供給システムのある地点において短時間で復帰する電圧低下を模擬したものです。
試験波形としては、規定されたサイクルで電圧が低下したものとなります。
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瞬時停電試験は、 電力供給システムのある地点において短時間で復帰し、かつ規定の短時間すべての相電圧の消失を模擬した試験です。
試験波形は、規定されたサイクルで電圧が0になります。
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試験レベル
クラスの分類
他のイミュニティ試験と同様に、使用環境によってクラス分けされています。
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ざっくり分類すると、クラス1が商業環境、クラス2が一般的な工業環境、クラス3が厳し目の工業環境といった感じになります。
試験項目
それぞれのクラスごとに試験項目が定められています。
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ただし、これらの項目は製品規格によっても異なるため、該当する製品規格がある場合はそちらを優先します。
規格適用の考え方については、下記の記事を参考にしてください。
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3相電源における考え方
3相電源においては、「相間電圧」だけでなく「相-中性点間電圧」に関しても試験する必要があります。
相間電圧の電圧ティップの方法としては、ある相だけ電圧を低下させる方法と、2つの層の電圧を低下させる方法があります。
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中性点の電圧ディップの方法は、イメージ通りです。
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試験項目の漏れがないように注意しましょう。
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おわりに
電圧ディップ・瞬時停電試験「IEC61000-4-11」の概要について紹介しました。
低周波のイミュニティ耐性を評価する試験であるため、他のEMC試験と若干毛色が異なる気はしますが、過渡現象と捉えると高周波成分も含むためEMCの領域となるのでしょう。
低周波のEMC試験については、「菊水電子工業」や「NF回路ブロック」が冊子としてまとめて情報提供しています。
iNarte資格試験の対策として、資料を入手しておくのも良いかと思います。
他の「IEC61000-4シリーズ」の試験については、下記のリンクからチェックできます。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。