EFT/B(Electrical Fast Transient / Burst :電気的ファストトランジェント/バースト)試験は、読みにくい名称ですあるため、一般的には「バースト試験」と呼ばれます。
IEC規格においては「IEC61000-4-4」にて規定されている試験です。
今回は、そんなバースト試験の概要について紹介します。
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バーストノイズとは?
IEC61000-4-4 のイミュニティ試験で印加されるバーストノイズは、誘導性負荷の接点の遮断に伴うギャップ放電を模擬したものです。
誘導性負荷の接点とは「モーター」や「リレースイッチ」などが代表的なものになります。
上のリレー回路の場合、右側の回路の誘導性負荷が「OFF」になったときに逆起電力によって高電圧が生じ、ギャップ間で放電が起こるイメージです。
このような物理的なスイッチは一度でスムーズに接点が切り替わるわけではなく、非常に速い機械的振動が加わることで「チャタリング」が起こります。
このように間欠的で複数回繰り返される放電現象を「シャワリングアーク」といい、バースト試験ではこのシャワリングアークを模擬したノイズの耐性を評価します。
試験波形
バースト試験は「間欠的」でかつ「繰り返し放電」を模擬した試験波形になります。
3つの波形が表示されていますが、それぞれ時間軸が異なります。
バースト波形
一番上の波形が最も時間が短く、インパルス状のノイズ波形のことを「バースト波形」と呼びます。
静電気試験ほどではありませんが、立上り時間が「nsオーダー」で構成されているため、比較的周波数の高いノイズ成分となります。
周波数帯域としては「1MHz~1GHz」程度です。
パルス周期
真ん中の図のように、バースト波形は「パルス周期」で規定される期間ごとに発生します。
パルス周期は「5kHz」または「100kHz」のいずれかで規定されているため、パルスの間隔は「200us」または「10us」となります。
また試験時には、パルス周期に関わらず 75回のインパルスノイズが印加されます。
このインパルスノイズが印加され続ける時間を「バースト期間」と呼びます。
パルス周期が5kHzの場合は「15ms」、100kHzの場合は「0.75ms」の間、インパルスノイズが印加され続けます。
バースト周期
下の図はインパルスノイズが印加される周期を表しており、「バースト周期」と呼びます。
バースト周期は「300ms」で規定されており、1秒間におよそ3回バーストノイズが印加されることになります。
バーストノイズ発生回路
バーストノイズ発生回路は、インパルス性のノイズを発生させる必要があります。
そのため短期間でコンデンサに高電圧をチャージし、スパークギャップを介して放電しています。
この放電されたノイズは、インピーダンスマッチング用の「抵抗」とDCブロック用の「コンデンサ」を介して、バーストノイズとして供試品へ印加されます。
試験機の内部には、電源供給側の回路へノイズが流れないようにデカップリング用のLCフィルタ(CDN)が挿入されています。
ノイズの結合方法
バースト試験では「CDN結合」と「クランプ結合」のうち、いずれかの方法で供試品にノイズを印加します。
CDN結合
CDN(Coupling Decoupling Network)はデカップリング回路を内蔵した結合器です。
クランプ結合
注入クランプは、バースト試験においては「容量性クランプ」が使用されます。
容量性クランプはノイズを印加するケーブルを上下から金属板で挟み、コンデンサ結合させることでノイズを印加します。
試験レベル
試験配置
卓上機器
バースト試験では、供試品、及びノイズを印加するケーブルをグランドプレーンから 10cm浮かせます。
そしてケーブルの長さは 50~60cmに加工する必要があります。
床置き機器
床置きの場合も同様に、供試品とケーブルはグランドプレーンから 10cm浮かせます。
補助器と接続するケーブル長は規定されていませんが、供試品とクランプとの距離は 1m±0.1mと規定されています。
試験中に補助器が誤動作する場合には、補助器側へフェライトコアなどの減結合回路を挿入することも可能です。
おわりに
EFT/B試験(バースト試験)「IEC61000-4-4」の概要について紹介しました。
規格の詳細について、図や表を除けば「kikakurui.com」から確認できます。
他の「IEC61000-4シリーズ」の試験については、下記のリンクからチェックできます。
また「IEC61000-4 シリーズ」は、JISハンドブックとして販売されています。
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規格書の原本を購入することを考えれば、かなりお手頃に規格の情報が得られます。
「iNarte資格試験」でも役立つ書籍であるため、手元に置いておきたい1冊と言えます。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。