フィルタ回路にはいくつかの種類があります。
フィルタの種類にとしては「バタワース」が最もメジャーですが、その他のフィルタもあります。
そこで今回の記事では、3つのフィルタ「ベッセル」「バタワース」「チェビシェフ」の特徴について紹介したいと思います。
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フィルタの特性
それぞれの説明に入る前に、フィルタの特性の表し方を確認しましょう。
フィルタは不要な周波数成分の信号をカットするものですが、同時に時間領域においては波形に歪みを与えることは避けなければいけません。
つまり、周波数軸上でカットオフ周波数や減衰傾度、減衰量を確認し、時間軸上で波形の再現度を確認します。
波形の再現度に関しては、周波数軸上の位相の変化量を見ることである程度確認できますが、波形をイメージすることが難しいので、時間波形で見るほうが好まれます。
ベッセル特性
ベッセルは他のフィルタと比較し、減衰特性が最も劣ると言われています。
一方で応答性を重視しているため、リンギングやオーバシュートが最小で、かつ立ち上がり時間が最も短くなっています。
立上り時間が短いということは、つまり高周波成分の減衰量が少ないということと同義です。
そのために減衰量は他のフィルタに劣ることになります。
ノイズの影響を積極的に取り除くためのフィルタというよりは、歪みなく信号を伝送するためのフィルタと考えることができます。
バタワース特性
バタワースはフィルタとしての性能が最も素直で、かつ設計が容易なために利用頻度が最も高いフィルタになります。
周波数特性においては通過帯域のリップルがほとんどなく、またカットオフ周波数以上の減衰傾度が次数あたり -20dB/decade となるため、減衰量をコントロールしやすいです。
一方で時間領域で見た場合、オーバーシュートやリンギングが発生します。
特にフィルタの次数を大きくするに従い、オーバーシュートやリンギングの影響が大きくなるので、アナログ信号などのフィルタにリングにおいては注意が必要です。
チェビシェフ特性
通過帯域にリップルを許容できる場合に利用するフィルタです。
リップルが発生するので、必然的に波形の歪みが大きくなります。
波形歪みのトレードオフとして、減衰傾度が非常に大きく取ることができます。
通過帯域のリップルはある程度コントロールできるので、波形が歪みすぎない程度に減衰量を抑える必要があります。
バタワースと同様に減衰量を大きく取りたい場合に使用されるフィルタです。
特性の比較
それぞれの特性を見てみましょう。
【周波数特性】
【過渡応答】
周波数特性は2次のフィルタなので差がわかりにくいですが、1つずつ特徴を挙げると以下のようになります。
- ベッセルは減衰傾度が最も緩やか
- バタワースはリップルもなく、減衰傾度は-40dB/decade (2次)
- チェビシェフが最も減衰傾度が大きいかわりに、リップルが発生
過渡応答は
- ベッセルは立ち上がりが早く、かつ歪みはほとんどない
- バタワースは少しオーバーシュートやアンダーシュートが発生
- チェビシェフはオーバーシュートだけでなく、リンギングも発生
こうして比較してみると、それぞれのフィルタの個性が見えてきますね。
おわりに
今回の記事では、フィルタの種類として「ベッセル」「バタワース」「チェビシェフ」の特徴を紹介しました。
普段フィルタを設計するは、特性が素直な「バタワース」で検討します。
そこから、歪みが少ないほうが良い場合は「ベッセル」、減衰量を増やしたいときは「チェビシェフ」と使い分けていくイメージです。
フィルタの設計方法は「QucsStudio」を使用することで、簡単にできるので興味があれば下記の記事を参考にしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。