前回の記事で、入出力のインピーダンスによってノイズフィルタの挿入損失特性が変化する原因の理論の部分を紹介しました。
今回の記事では、いよいよ入出力のインピーダンスを変化させて、挿入損失に与える影響を見ていきたいと思います。
入出力のインピーダンスの組み合わせ
実際の機器で、入出力のインピーダンスを明確に規定することはできません。
そのためノイズ対策用の受動部品の評価方法の規格「CISPR17」では、「 Worst Case Method」として「0.1Ω」と「100Ω」の組み合わせが提唱されています。
今回の検証もこの規格に則って、「0.1Ω」と「100Ω」の組み合わせで行います。
入出力のインピーダンスによる影響
検証回路は、前回と同様に6種類の回路です。
それぞれ入出力のインピーダンスごとに分類がなされていますが、これが本当なのか確かめたいと思います。
コンデンサとコイルの定数はそれぞれ「1uH」と「1uF」です。
それでは順番に見ていきましょう。
入力インピーダンス 100Ω 出力インピーダンス 100Ω
入出力ともにインピーダンスが高いパターンです。
これは前回検証した50Ω系と同じ傾向ですね。
π型フィルタの挿入損失が最も大きくなります。
それぞれの作用については前回の記事を参考にしてください。
入力インピーダンス 0.1Ω 出力インピーダンス 100Ω
次は、信号源のインピーダンスが低く、負荷のインピーダンスが高いパターンです。
この組み合わせにおいては、π型、T型、LC型フィルタがほぼ同等の性能を示します。
また同じ2次のフィルタであるにも関わらず、CL型フィルタはLC型フィルタよりも挿入損失が小さくなっています。
入力インピーダンス 100Ω 出力インピーダンス 0.1Ω
先ほどと逆の組み合わせで、信号源のインピーダンスが高く、負荷のインピーダンスが低いパターンです。
一見同じような結果に見えますが、LC型フィルタとLCフィルタの結果が逆転しています。
入力インピーダンス 0.1Ω 出力インピーダンス 0.1Ω
最後は入出力ともにインピーダンスが低いパターンです。
これまではπ型フィルタの挿入損失が最も大きかったですが、この組み合わせではT型フィルタの挿入損失が最も大きくなります。
その他にも1次のフィルタで比較したときに、その他の組み合わせではコンデンサ単体(黄色)のほうが挿入損失が大きかったですが、この組み合わせではコイル単体(ピンク)のほうが挿入損失が大きくなっています。
組み合わせのまとめ
入出力のインピーダンスの組み合わせごとに、挿入損失の違いを検証しました。
この検証結果から、入力インピーダンス、出力インピーダンス、ぞれぞれについて以下のことが言えます。
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・入力インピーダンスが低い場合は、入力段にコイルを接続する
・入力インピーダンスが高い場合は、入力段にコンデンサを接続する
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・出力インピーダンスが低い場合は、出力段にコイルを接続する
・出力インピーダンスが高い場合は、出力段にコンデンサを接続する
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というわけで、冒頭に紹介した組み合わせの分類のとおりでしたね。
おわりに
「ノイズフィルタが効かない理由」を「入出力のインピーダンス」の観点から説明しました。
反対に「ノイズフィルタの効果的な使い方」については、下記の記事で紹介しています。
ノイズフィルタの設計方法については、「アクティブフィルタ」と「LCフィルタ」それぞれの事例を紹介しています。
興味のある方はチェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。