コイル

コイルの用途【シミュレーション】

この記事では3つの回路を例にして、回路中でコイルがどのように機能しているかを解説します。

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チョッパ回路

チョッパ回路は、直流電圧を昇圧したり降圧したりするときに使用される回路です。

降圧チョッパ回路においては、コイルは直流電流を流しつつ、スイッチの状態が変化するごとにその変化を妨げる方向へ電流を流し続けるため、直流電流がバイアスされた三角波に近い交流電流が流れることになります。

シミュレーション条件

今回シミュレーションでは、コイルの定数を3パターン変えたときに、各箇所の電圧とコイルに流れる電流がどのように変化するかを見ていきます。

  1. 100nH
  2. 1mH
  3. 10mH

電圧波形

グラフを見てみると、入力電圧よりも低い電圧が出力されており、出力電圧も安定していることから回路としては正しく動作していることがわかります。

これは出力電圧がスイッチのデューティ比によって決まるためで、このことから一定上のインダクタンスを持つ場合には、コイルのインダクタンスは出力電圧に大きな影響を与えていないと言えます。

電流波形

電流のグラフは、黒色が 100nH、茶色が 1mH、赤色が 10mHのシミュレーション結果になります。

それぞれの波形を比較すると、一定の直流電流がバイアスされた上でインダクタンスの高いコイルほど電流の変動が小さくなっていることがわかります。

この理由は、コイルに発生する逆起電力V = -L * di/dt から導くことが可能で、この式を変形して di/dt = – V / L とすると、電流の単位時間あたりの変化はインダクタンスLに反比例することがわかります。

つまりインダクタンスが高いほど、電流の変動が小さくなるということです。

交流電流の弊害

この電流の変動は、コイルに交流電流が流れているということを意味します。

そしてこの交流電流は、コイル内部にヒステリシス損失や渦電流損失を発生させて、コイルが発熱する原因となってしまうため、実際に使用する上では一定以下に抑えておく必要があります。

電流の変動の一般的な指標としては、定格電流に対して30~40%以内と言われているため、この例においては100nH ~ 1mHの間くらいが適正なインダクタンスになります。

ただしインダクタンスを高くしすぎると今度は部品サイズが大きくなってしまうため、このあたりのトレードオフに関してはバランスを見てコイルを選定することになります。

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フィルタ回路

フィルタ回路に関しては、「ローパス」「ハイパス」「バンドバス」「ノッチ」といろいろな種類があります。

このフィルタ回路において、コイルは周波数が高くなるほどインピーダンスが高くなるという性質が重要となります。

シミュレーション条件

シミュレーション回路は、50Ωの入出力に対して10uHのコイルが直列に、1000pFのコンデンサが並列に接続された2次のローパス型のLCフィルタです。

フィルタ特性

このグラフは、ローパスフィルタの減衰特性とインピーダンス特性を表したものです。

ローパスフィルタであるため、減衰量はカットオフ周波数を境に右肩下がりとなっており、反対にインピーダンスは周波数が高くなるほどインピーダンスが高くなる右肩上がりのグラフになっています。

このフィルタに対して、コイルのインダクタンスを変化させます。

インダクタンスを低くすると、インピーダンスが81Ω から 22Ω へと低下します。

今回のような50Ω系の回路においては、50Ωよりも大きいかどうかで減衰するかどうかが決まってくるため、インピーダンスの低下によって減衰量もほぼ0となります。

一方でインダクタンスを高くするとインピーダンスが徐々に高くなっていき、それに応じて減衰量も大きくなっていくことがわかります。

これをカットオフ周波数という視点で見ると、-3dBになる周波数がインダクタンスの上昇によって徐々に低い周波数へと移っていくことがわかります。

カットオフ周波数は fc = 1/2π√LC で表され、インダクタンスLが逆数となっているため、式の通りの動作と言えます。

つまり低い周波数までをカットしたい場合には、インダクタンスの高いコイルが必要になります。

とはいえ、インダクタンスの高いコイルはサイズが大きくなってしまうため、ここでもサイズと性能はトレード・オフの関係になります。

そのため、フィルタを最大限効かせる場合には、サイズの許す範囲で最もインダクタンスの高いコイルを使うか、あるいはフィルタの次数を増やしてより急峻な減衰軽度を得ることで減衰量を稼ぐといった手法が取られます。

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マッチング回路

マッチング回路は、高周波の回路において入出力のインピーダンスを整合するために用いられる回路で、整合具合を評価するためにスミスチャートが使用されます。

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シミュレーション条件

今回のシミュレーション回路は、50Ωの信号源に対して10Ωの負荷が接続されている回路です。

まずマッチング回路がない場合には、左側のチャートで中央から左側の位置にプロットされ、回路の入力インピーダンスは抵抗値そのまま 10Ω となっています。

ここからインピーダンス整合していきますが、ここでもコイルとコンデンサを組み合わせた回路を使用します。コイルが直列か並列かはどちらでも良いのですが、ここではコイルを並列に接続した例で考えてみます。

コンデンサ追加

まずコンデンサを直列に接続した状態で、G = 0 の当コンダクタンス円に交わるよう静電容量を調整します。

コイル追加

つづいてコイルを並列に接続して、チャートの中央へ移動するようにインダクタンスを調整します。

定数調整

チャートの中央に移動したら、コイルとコンデンサの定数を切のいい値に直します。この場合には、コンデンサの静電容量が 81pF、コイルのインダクタンスが 40nHくらいです。

これでインピーダンスマッチングが完了ですが、回路の入力インピーダンスを見ると概ね50Ωになっています。

このようにマッチング回路においては、単純にインピーダンスを高くすれば良い訳ではなく、回路の入力インピーダンスが50Ωになるように定数を選定することが重要となります。

 

おわりに

今回は「降圧チョッパ回路」「ローパスフィルタ」「マッチング回路」におけるコイルの働きと、それぞれの回路でコイルを使用する際に注意すべき点について解説しました。

コイルの働きについては理論的に理解しておくことが望ましいですが、波形を見ながら直感的に学んでいくほうが理解が早くなります。

そのためまずは回路シミュレータを使って、様々な条件でシミュレーションしてみるのが良いかと思います。

今回使用した回路シミュレータ「QucsStudio」に関しては、初心者の方向けに使用方法を解説した書籍をAmazonで販売しています。

100枚以上の図を使って、一つ一つの操作を丁寧に解説しているので、これから回路シミュレータを使ってみたいと考えている方にとっては非常に良い書籍かと思います。

QucsStudioの入門書QucsStudioの入門書を出版したので、内容について簡単に紹介します。 動画はコチラ↓ https://youtu.be...

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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