ノイズ対策部品

コモンモードチョークコイルの選び方

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コモンモードチョークコイルは、ノイズ対策用の部品として電源回路や通信回路に使用されています。

そこで今回は、コモンモードチョークコイルの「概要」「特徴」「注意事項」について
解説します。

動画はコチラ↓

 

コモンモードチョークコイルとは

コモンモードチョークコイルもコイルの1種であるため、周波数に比例してインピーダンスが高くなるという性質を持ちます。

ノイズの流れ方にはノーマルモードとコモンモードがありますが、コモンモードチョークコイルはその名からもわかる通り、コモンモードに対して高いインピーダンスを持つため、コモンモードノイズを効果的に抑制することができます。

ノーマルモード

ノーマルモードノイズに対しては、2本の電線に逆向きのノイズ電流が流れているため、コイルのコア内部には逆向きの磁束が発生します。

この逆向きの磁束はコア内部で互いに打ち消すように働くため、コア内部には磁束がほとんど発生せず、そのためにコイルのインダクタンスは非常に低くなります。

そしてインダクタンスが低いということは、インピーダンスが低いということなので、ノーマルモードノイズに対してコモンモードチョークコイルはほとんど何も作用しません。

コモンモード

一方でコモンモードノイズに対しては、2本の電線に同じ向きのノイズ電流が流れるため、コアの内部にはそれぞれの磁束が足し合わされて同じ向きの磁束が発生します。

そのためコモンモードに対しては、周波数に比例してインピーダンスが高くなる性質を持ちます。

つまりは、コモンモードノイズを抑制することができるということです。

このようにコモンモードチョークコイルは、ノイズの伝送モードごとに異なるインピーダンスを持つため、ノーマルモードの電流に対してはほとんど影響を与えることなく、コモンモードのノイズ成分だけを効果的に除去することができます。

コイルの巻き方

コイルの巻き方には「キャンセル巻き」と「バイファイラ巻き」の2つがあります。

回路の用途によってどちらの巻き方が主流かが違っており、電源回路は線間に絶縁性が必要となるためキャンセル巻きが一般的で、通信回路は高周波での漏れ磁束を小さくするためにバイファイラ巻きが主流です。

 

 

電源回路用コモンモードチョークコイル

電源回路用のコモンモードチョークコイルは、多くの場合リード付きの形状です。

とりわけ商用電源に接続するタイプでは、コモンモードチョークコイルに高い電圧が印加されるため、安全規格を満足したものを選定する必要があります。

安全規格には線間の耐圧性能も規定されていることから、それぞれの線はセパレータと呼ばれる絶縁物で分離された構造となっており、そのためにコイルの巻き方はキャンセル巻きです。

選定基準

コイルの選び方としては、定格電流値の合うものの中からインダクタンスの高いものを選択することが一般的です。

なぜインダクタンスの高いものを選ぶかというと、コモンモードチョークコイルには低い周波数帯(150kHz ~ 1MHz)でノイズを抑制することが求めれられるからです。

電源ラインのノイズレベルは「150kHz ~ 30MHz」の周波数範囲で限度値が規定されています。

このうちコモンモードノイズに対しては、「コモンモードチョークコイル」と「Yコンデンサ」を組み合わせた、ローパス型のLCフィルタによって対策が行われます。

このLCフィルタでは、Yコンデンサは漏れ電流の制限があるため大きな静電容量のものは使用できず、そのため低い周波数でフィルタを効かせるためには、コモンモードチョークコイルのインダクタンスを高くする必要があります。

具体的なインダクタンスとしては、1mH以上のものが使用されることが多いです。

ただし、インダクタンスが高くなるほどサイズも大きくなるため、サイズと性能のバランスを見て選択することが重要となります。

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コア材の種類

コモンモードチョークコイルのサイズを小さくするためには、透磁率の高いコア材を使うという方法もあります。

近年は小さいサイズで高いインダクタンスが得られるよう、透磁率が10,000以上のフェライト材や、さらに透磁率の高いファインメットコアといったコア材が使用されています。

これらのコア材は、透磁率が非常に高いため低周波数で高いインピーダンスが得られます。

ただし材質によって価格差はかなりあるようなので、ここでも「サイズ」と「コスト」が
トレードオフの関係となります。

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磁気飽和

電流容量の大きいパワーエレクトロニクス機器の場合には、コモンモード電流によってコモンモードチョークコイルが磁気飽和を起こすことがあります。

磁気飽和が発生すると、コイルのインピーダンスが急激に低下してノイズ抑制効果が無くなるため、あえてインダクタンスの低いものを使ったり、あるいはコア材の断面積を大きくしたりして、コア材内部の磁束密度を低下させるための対応が必要となります。

コモンモードの磁気飽和は、あまり頻繁に起こることではありませんが、コモンモードチョークコイルの効果が得られなかったときには疑ってみても良いかもしれません。

 

通信回路用のコモンモードチョークコイル

通信回路用のコモンモードチョークコイルは表面実装型がほとんどで、ドラムコアにバイファイラ巻きしたものや、コイルのパターンと磁性材料を積層したものがあります。

出典:TDK、パナソニック

いずれの構造とも、コイル間の距離を密着させることで漏れ磁束をできるだけ小さくして、高周波までノーマルモードのインピーダンスが小さくなるような工夫が施されています。

スキューとコモンモードノイズ

通信回路用のコモンモードチョークコイルは、USBやHDMI、LVDSなどの高速の差動通信回路で使用されることが多く、信号のジッタや伝送線路の非対称性によって生じる「スキュー」を小さくする働きを持ちます。

スキューとは、差動信号における2つのシングルエンド信号の時間差のことで、この時間差が生じることによってコモンモード電圧が発生します。

そのためノイズ対策においては、スキューを小さくすることが重要となりますが、スキューは通信速度が早くなるほど発生しやすいため、コモンモードチョークコイルには高い周波数(1GHz以上)まで高いコモンモードインピーダンスを維持することが求められます。

ディファレンシャルモードへの影響

一方でそれほど高い周波数になると、差動信号のロスも無視できなくなってきます。

そのためコモンモードチョークコイルは、ディファレンシャルモードに対して低いインピーダンスとなる必要があり、これをミックスドモードSパラメータで表現すると、ディファレンシャルモードの減衰量Sdd21が高い周波数まで小さい必要があります。

ミックスドモードSパラメータの詳細は別の記事で解説しています。

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選定基準

通信回路用のコモンモードチョークコイルを選定する上では、コモンモードのインピーダンスに加えて、「特性インピーダンス」「カットオフ周波数」「モード変換量」の3つの特性がが重要となります。

特性インピーダンス

高速通信回路では伝送線路の特性インピーダンスがコントロールされており、コモンモードチョークコイルにおいてもインピーダンスマッチングできるよう、特性インピーダンスに適合した製品を使用する必要があります。

各メーカーの製品リストには、通信規格とともに特性インピーダンスが記載されているため、選択を間違えることは少ないかと思います。

カットオフ周波数

カットオフ周波数は、特にSdd21において重要となるもので、通信規格の速度に合わせて選択する必要があります。

通信レートが規定されている場合には、基本周波数の3倍か5倍以上のカットオフ周波数のものを選択することが一般的です。

モード変換量

モード変換は、特にディファレンシャルモードの信号がコモンモードノイズに化けてしまうScd21の特性が重要です。

モード変換量が大きいと、コモンモードチョークコイルが実はノイズ発生源になっているといったことにもなりかねません。

このモード変換量は部品ごとに若干異なっていますが、実装時には周辺部品の配置や配線パターンによっても変化するためデータシートから全てを推測することは難しいです。

 

 

おわりに

今回はコモンモードチョークコイルの「概要」「特徴」「注意事項」について
解説しました。

それぞれのチョークコイルとも、コモンモードノイズだけを抑制するという原理は共通していますが、用途が異なるために求められる性能は全く違います。

 

それぞれの用途ごとに詳しく学びたい方には、電源回路用であれば「スイッチング電源のコイル/トランス設計」がおすすめです。

電源回路用のコイルの理論を学ぶとともに、実践できる内容となっているので、実際にコイルをカスタムする機会がある方には非常に役立つ1冊です。

 

通信回路用の方は、コモンモードチョークコイルに特化した内容ではありませんが「ノイズ解決の早道六法」がおすすめです。

フィルタを使用する上で重要となる伝送線路理論が、ノイズ対策という視点から記述されているので、ノイズ対策を体系的に学びたい方にとっては最適です。

 

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今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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