オペアンプを使用したフィルタ回路は、一般的に「アクティブフィルタ」と呼ばれ、通過帯域によって4種類のフィルタを構成することができます。
- ローパスフィルタ
- ハイパスフィルタ
- バンドパスフィルタ
- ノッチフィルタ
今回はアクティブフィルタのうち、「ローパスフィルタ」の設計方法について紹介します。
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アクティブフィルタの特徴
アクティブフィルタの最大の特徴は「オペアンプ」を使用することで、フィルタの性能はオペアンプの性能によって決まります。
オペアンプの選定基準としては、実現したいフィルタ特性に対して十分なマージンを持ったGBW(ゲイン帯域幅積)の製品を選ぶことが重要です。
回路構成としては、GBWを緩和するためになるべくフィルタ段に利得を持たせないようにします。
アクティブフィルタの用途
一般的には高周波用途には不向きと言われており、EMC試験のノイズ対策として利用されることは少ないです。
アクティブフィルタの主な用途としては、アナログ信号用のフィルタです。
このときにノイズの減衰量の周波数特性だけでなく、波形が歪まないように位相の周波数特性にも注意する必要があります。
電源ライン用のフィルタでは、直流や50/60Hzが主たる信号であるため波形が歪むことはほとんどありません。
しかし信号ラインに挿入する場合には、信号には高調波成分が多く含まれているため、それらの位相が変化することによって、時間軸上で観測される波形がどんどん歪んでいきます。
ローパスフィルタの特徴
ローパスフィルタは高周波を除去するフィルタとして、様々な用途で使用されています。
フィルタの性能を表す指標として、「カットオフ周波数」「減衰量」「減衰傾度」「リップル」などがあります。
カットオフ周波数は減衰が始まる周波数(-3dBに至る周波数)を表し、ローパスフィルタにおいては「通過域」を表すパラメータになります。
減衰量は、減衰域における減衰量です。
減衰傾度は、通過域と減衰域を結ぶ直線の傾きで、この傾き具合から「○次」のフィルタ問ことがわかります。
フィルタ回路の次数(段数)は、1段増えるごとに減衰傾度が「6dB/octave」または「20dB/decade」ずつ大きくなっていきます。
つまり次数が大きいほど、急峻なフィルタになるということです。
設計方法
ここまで「アクティブフィルタ」と「ローパスフィルタ」について説明してきました。
ここからは具体的な設計方法を紹介します。
設計に使用するツールは、いつもながら「QucsStudio」です。
QucsStudioが何かという方は、下記のリンクからご確認ください。
本来はフィルタのトポロジーを決定したあとに、正規化表などを使って部品の定数を決定してきますが、ツールを使用すると非常に簡単に設計できます。
まずは「Tools」から「Filter synthesis」を選択します。
そして以下のように設定します。
- Realization(フィルタの実現方法) :「active」を選択
- Filter type(フィルタのタイプ) :リップルを加味して選択
- Filter Class(フィルタの種類) :「Low pass」を選択
- Order(次数) :減衰傾度に応じて指定
- Corner Frequency(カットオフ周波数):通過帯域に応じて指定
- Voltage Gain(回路全体のゲイン) :ゲインは「1」に指定
「Calculate and into Clipboard」を選択すると、回路がコピーされた状態になるので回路図上に貼り付けます。
すると回路が生成されるので、このままシミュレーションを実行します。
カットオフ周波数 100kHz、減衰傾度 100dB/decade のローパスフィルタが構成されていることがわかります。
あとは、抵抗とコンデンサを現実に即した定数に修正して設計は完了です。
おわりに
「フィルタの設計」と言われると身構えてしまいますが、ツールを使用することで誰でも簡単に設計できます。
アクティブフィルタは、EMC試験のノイズ対策として使用する機会は少ないですが、信号用のノイズフィルタとしてよく使用されているので知っておいて損はないと思います。
アクティブフィルタへの理解を深めたい方は「OPアンプ大全」や「計測のためのフィルタ回路設計」が参考になると思います。
「OPアンプ大全」は2003年に発行された全5冊を1冊にまとめた合本で、アナログ・デバイセズ社の日本人エンジニアたちが、内容を理解しつつ労苦のうえで完成させたものです。
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内容も当然のごとく充実しており、フィルタ回路についても、基礎的な「伝達関数」や「応答特性」はもちろん、フィルタの「特性の変換方法」や具体的な「設計例」も紹介されています。
ただ単に知識を得るだけでなく「設計リファレンス」としても使えるくらい価値の高いものなので、事務所の本棚にぜひ置いておきたい一冊です。
「計測のためのフィルタ回路設計」では、実例ベースで設計方法が解説されています。
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著者の「遠坂先生」は「トランジスタ技術」でも数々の記事を執筆しており、本書もその中から生まれた書籍です。
「実験データ」と「シミュレーションデータ」のどちらも活用して設計されており、どのようなステップでフィルタ設計を進めていくかのイメージが掴める内容となっています。
古い書籍ですが、今でも使える技術が満載のオススメ書籍です。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。