電気回路において、直流と交流の違いを理解しておくことは非常に大切です。
そこで今回の記事では、直流と交流のそれぞれの違いと変換方法について解説します。
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直流とは
直流は向きが一定で、かつ時間経過によって大きさが変化しない電気(電圧や電流)を指します。
英語で「Direct Current」と表されることから、「DC」と呼ばれることもあります。
具体例
直流の最もイメージしやすいものに「バッテリー」があります。
最近はモバイルバッテリーが普及したことで、生活の中でもより身近な存在となっていますね。もちろんモバイルバッテリーに限らず、乾電池や自動車用の鉛蓄電池なども直流です。
用途
直流の用途は、具体例がバッテリーであることからも想像できる通り、電子機器の電源として利用されています。
これは多くの電子機器の内部の回路が、直流の電圧をもとに動作するためです。
代表的な電圧としては「12V」「5V」「3.3V」などあり、これらの電圧をもとにして電子機器は動作しています。
交流
交流では、時間の経過とともに大きさが変化するとともに、電気(電圧や電流)の極性(正と負)が反転します。
英語で「Alternating Current」と表されることから、「AC」とも呼ばれます。
具体例
交流の最もわかりやすいものは「商用電源」です。
発電所から家庭のコンセントまで届けられている電気のことですね。
この商用電源は、発電所では数万V以上の高い電圧ですが、徐々に電圧を低下させながら送電しており、このように電圧の変換が容易なことが交流の特徴の一つです。
ちなみにこの変圧にあたっては、トランスが使用されています。
用途
交流は商用電源の他にも、パワー系の分野では「モーター」、通信の分野では「電波」や「電磁波」として利用されています。
モーターの場合にはいくつか種類がありますが、誘導モーターは交流の電流を流すことで、モーターを回転させることができます。
また電波の場合は、交流の中でも周波数の高い「高周波」の電気信号をアンテナに印加することで、空間を介して電気通信できるようになっています。
直流と交流の変換
直流と交流は相互に変換することが可能です。
直流→直流
ある直流電圧から別の直流電圧を作り出す回路のことを「DC/DCコンバータ」と呼びます。「デコデコ」と呼ばれることもあります。
電圧の変換方法としては2通りあります。
リニア方式
リニアレギュレータと呼ばれる半導体素子を使って、電圧を変換します。英語で「Low Dropout」と表されることから「LDO」と呼ばれることもあります。
この方法は電圧を下げる場合(降圧)にしか使用することができませんが、単一の素子で簡単に電圧が変換できます。
ただし電圧変換にあたっては、不要な電圧のエネルギーを熱に変換するため、電力の小さい回路にのみ使用されます。
スイッチング方式
スイッチング方式は、半導体をスイッチングすることで電圧を変換し、電圧の形態としては「直流」→「交流」→「直流」となります。
なおここでは、途中の電圧が時間的に変化しているため「交流」としています。
このスイッチング方式においては、電圧を上げる(昇圧)ことも下げる(降圧)ことも可能で、回路構成によっては昇降圧の両方に対応させることも可能です。
直流→交流
直流から交流に変換する回路のことを「インバータ」と呼びます。
多くの場合、半導体のスイッチ(FETなど)を使用して直流の電圧を細切れにし、それをローパスフィルタを使って平滑化することで交流を作り出します。
ちなみに直流を細切れにする際に、出力電圧に応じてパルス幅を調整する制御方法を「PWM制御」と呼びます。
生活に身近なアプリケーションとしては、パワーコンディショナーがあります。
交流→直流
交流から直流に変換する回路のことを「コンバータ」と呼びます。
多くの場合、ダイオードブリッジに交流の電圧を通して極性を一方向に戻した後に、コンデンサを介して平滑化することで直流を作り出します。
最も身近な用途としては「ACアダプタ」がこの交流を直流に変換するものになります。
交流→交流
交流から別の交流に変換する回路も「インバータ」と呼びます。
別の交流に変換する方法は2通りあります。
間接変換方式
間接変換方式では、交流を平滑化して直流にした後に、インバータを使って交流を出力します。
実用的な用途としては、商用電源で動作する汎用インバータを使ってモーターを駆動する場合がこの方式に当たります。
直接変換方式
交流を直接別の交流に変換する回路は「マトリクスコンバータ」と呼ばれます。
こちらは技術的な難易度が高いためか、実用的にはそれほど利用されていません。
おわりに
今回は「直流」と「交流」のそれぞれの違いと変換方法について解説しました。
直流と交流の変換は、すべての電子機器と言っても過言ではないくらい、様々なシーンで使用されています。
回路シミュレータを使えるようになると、各素子がどのような役割を果たしているのかを確認してやすくなります。
回路シミュレータは、汎用的に使用するのであれば「LTSpice」、高周波まで含めて学ぶのならば「QucsStudio」がおすすめです。
QucsStudioに関しては、インストール方法も解説しているので、興味のある方はチェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
PWN制御って途中書いてあります….;;
ご指摘ありがとうございます。
文言修正しておきました。