電気回路

代表的な電流の測定方法【3選】

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この記事では、代表的な電流測定方法のメリットとデメリットを紹介します。

動画はこちら↓

 

シャント抵抗方式

シャント抵抗方式は、比較的抵抗値が低い抵抗素子を測定対象となる回路に対して直列に接続して電流を測定する方式です。

シャント抵抗方式では、抵抗の抵抗値が既知のものであれば抵抗の電圧降下をもとに簡単に電流値を計算することができます。

メリット

シャント抵抗方式の最も大きなメリットは、検出原理が簡単なことです。

本質的にはオームの法則させ知っていれば電流値を求めることができるので、簡単な電気回路の実験においても利用しやすい方式と言えます。

デメリット

ただし原理が簡単だからといって、測定自体が簡単なわけではありません。

なぜなら回路に抵抗を直列に接続するということは、電流が流れることによって抵抗が発熱し、その熱によって回路に支障を来す可能性があるためです。

最もわかりやすいのが、抵抗そのものの熱容量の問題です。

抵抗は部品ごとに電力容量が規定されていますが、それ以下の電力を消費した場合にも相応の熱が発生し、それによって抵抗そのものの寿命を低下させることはもちろん、周辺の部品に対しても熱による負荷を与え続けることになります。

特に電解コンデンサのような熱によって寿命が低下しやすい部品があると、回路自体の寿命が低下する原因になるため実装には細心の注意を払う必要があります。

また抵抗値が既知であるという前提で電流値を計算するため、部品や配線パターンの寄生成分の影響が出る高周波においては測定誤差が大きくなり、シャント抵抗方式は使うことができません。

ちなみにシャント抵抗として使用される抵抗の種類は、電流値が小さい回路であれば一般的な固定抵抗器であるカーボン皮膜抵抗でも使用できます。

リード付き抵抗の種類と特徴抵抗には様々な種類が存在し、実際に使用する上ではどの種類がいいのか判断するのはそれほど簡単ではありません。 そこで今回の記事では、...

大電流を流すような回路の場合は、酸化金属皮膜抵抗や金属板チップ抵抗のような抵抗値が非常に低くて、熱容量の大きいものを使用する必要があります。

 

 

ホール素子方式

ホール素子というのは、特定の方向に磁界が生じた際にそれと直交する方向に電圧を発生させる素子のことです。

この電圧を発生させる効果はホール効果と呼ばれます。

ホール素子方式では、電流によって発生する磁界からホール素子によって電圧を発生させて電流値を測定します。

メリット

ホール素子方式では、回路に直接部品を挿入せずとも電流を測定できるというメリットがあります。

具体的にはケーブルに流れる電流を測定する場合にホール素子方式のクランプメータを使用すれば、ケーブルを切断することなく非接触で電流を測定することができます。

ホール素子方式のクランプメータでは、透磁率の高い磁性体コアで多くの磁界を取り込めるようになっていて、磁路の間にホール素子を挟むことで効率よく磁界から電圧に変換できます。

そしてホール素子方式の1番のメリットは、測定が簡単であることです。

測定原理自体は難しいところもありますが、実際に測定するときにはケーブルをクランプするだけで良いので、初心者の方でも迷うことなく電流値を測定することができます。

デメリット

デメリットとしてはホール素子の直線性が良くないことや、磁性体コアのヒステリシス特性により精度があまり高くないということが挙げられます。

そのため、精密な電流値が必要とされる場合にはあまり適していない方式と言えます。

また直流と交流のどちらも測定できますが、交流においてはあまり高い周波数まで使用することはできません。

ただし、実務においては測定が簡単で、かつ有用性も非常に高いため電流測定で最もよく使用される方式の一つとなっています。

 

CT方式

CTというのは「Current Transfomer」の頭文字を取ったもので、日本語では変流器と呼ばれます。

CT方式では測定対象となる導体を1次巻線、磁性体コアに巻き付けたコイルを2次巻線とし、電磁誘導の作用を利用して電流値を測定します。

測定原理としてはトランスと似ており、1次巻線で発生した磁界を磁性体コアが取り込むことで2次巻線側のコイルに逆起電力が発生し、その電圧が負荷抵抗に掛かることで2次電流が流れるようになっています。

2次電流の大きさは2次巻線の巻数に反比例し、1次巻線の電流を別の電流に変換しているように捉えられるため変流器と呼ばれています。

メリット

CT方式のメリットも非接触で簡単に測定できることです。

また電磁誘導の作用を利用しているだけなので、ホール素子方式のように電流を測定するための電源回路を準備する必要もありません。

周波数範囲についても、比較的高い周波数の電流まで測定することができます。

デメリット

デメリットとしては、直流電流が測定できないことが挙げられます。

電磁誘導では交流磁界によって起電力が発生するため、磁界が時間的に変化しない直流電流では電流を測定することができません。

また磁性体コアを使用しているため、1次側に大電流が流れると磁気飽和を起こして電流を測定できないこともあります。

この問題は、ロゴスキーコイルを使用することで解決することができます。

ロゴスキーコイル方式も基本的な原理はCT方式と同じで、電磁誘導を利用して電流値を測定します。

ただし、磁性体コアを使用しないため磁気飽和の影響を無視して測定できます。

 

 

おわりに

今回は3つの電流測定方法のメリットとデメリットを解説しました。

電流測定は電圧測定と比較して前提知識が必要となりますが、それぞれの測定方法の原理と特徴をつかんでおけば様々な場面で応用できるはずです。

前提知識については、別の記事でも解説しているので参考にしてみてください。

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今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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