ノイズ対策部品

フェライトコアの基礎

記事内に商品プロモーションを含む場合があります。

フェライトコアの使い方は以前の記事で解説しましたが、そのときには特性面のことについてはあまり触れていませんでした。

フェライトコアを効果的に使用するためのノウハウノイズ対策において、フェライトコアを効果的に使用するための考え方を紹介しています。...

そこで今回はフェライトコアの材料特性、形状特性、電気特性について解説します。

動画はコチラ↓

 

材料特性

フェライトコアは酸化鉄を主成分としたセラミックスの一種で、鉄の他にいくつかの材料を混ぜることで磁気的な性質をコントロールしています。

このフェライトは大きく「ハードフェライト」と「ソフトフェライト」に分類されます。

ハードフェライトは磁石のように定常的に磁化している性質を持ち、反対にソフトフェライトはコイルのコア材のように磁場が掛かったときにだけ磁化する性質を持ちます。

このうちノイズ対策用のフェライトコアは、ソフトフェライトに該当します。

 

そしてこの磁化する性質は透磁率を持つということを意味しますが、フェライトコアは透磁率を持つことによってノイズのような高周波に対して高いインピーダンスを持ちます。

フェライトのインピーダンスは、フェライトコアの材料によって得意な周波数帯が異なり、kHzで表される比較的低い周波数のノイズに対しては「マンガン系のフェライトコア」、一方で MHzで表される高い周波数のノイズに対しては「ニッケル系のフェライトコア」が有効とされています。

このマンガン系とニッケル系は、それぞれ材料の持つ透磁率が異なります。

マンガン系は高い透磁率を持つため低い周波数でも高いインピーダンスを持ちますが、高周波においては自己共振の影響でインピーダンスが低下するため、低周波のノイズ対策部品として使用されます。

一方のニッケル系は、透磁率そのものはあまり高くありませんが、高い絶縁抵抗を持つがゆえに高い周波数まで透磁率を維持でき、そのため高周波のノイズ対策部品として使用することができます。

各フェライトコアメーカーとも様々なフェライトコアがありますが、多くの場合、カッコ書きや但し書きが無いタイプは「ニッケル系のフェライトコア」、低周波向けと書いているタイプが「マンガン系のフェライトコア」になります。

 

ちなみにインピーダンスは「抵抗」と「リアクタンス」による複素数で表されますが、こレに対応してフェライトコアの透磁率も複素数として表されることがあります。

この複素数で表された透磁率のことを「複素透磁率」と呼び、実数部μ’ と虚数部 μ” は次に説明する形状特性をもとにして計算することが可能です。

 

 

形状特性

形状特性は、フェライトコアの持つ透磁率とインピーダンスの関係を記述するときに使用するもので、「コア定数」という係数を用いて計算されます。

ここではフェライトコアの中で最もベーシックな形状であるトロイダルコアをもとにコア定数を見ていきます。

コア定数には C1 と C2 という2つの係数があり、それぞれの係数はここで示された式で計算することができます。

難しそうな式に見えますが、エクセルシートを使って計算すれば簡単に計算できます。

そしてこの C1 と C2 という 2つのコア定数をもとに、フェライトコアの「断面積」と「磁路長」を計算することができ、フェライトコアのインピーダンスが求まります。


この式をもとにフェライトコアのインピーダンスを見ると、以下の特徴を持つフェライトコアほど高いインピーダンスを持つことになります。

  • 断面積が大きい
  • 磁路長が短い
  • 透磁率が高い

ちなみに複素透磁率との関係については

フェライトコアの抵抗とインダクタンスとして表すと、複素透磁率の μ’ と μ” は
μ’ がインダクタンス成分、μ” が抵抗成分に相当します。

 

電気特性

フェライトコアの電気特性は先程のインピーダンスので示されている通りで、ここで注目すべきはインピーダンスがコイルのターン数の2乗に比例するということです。

この2乗に比例するということは、2ターンするとインピーダンスが4倍、3ターンするとインピーダンスが9倍になるということです。

そのためノイズ対策という観点で見ると、インピーダンスが高いほど大きなノイズ抑制効果が期待できるため、フェライトコアは数珠つなぎに何個も取り付けのではなく、1つのフェライトコアでターン数を増やす方が効率的なノイズ対策につながります。

ただしこのターン数に関しては注意すべきことがあります。

メーカーのデータシートには、ターン数ごとにインピーダンス特性が公開されています。

このデータを見ると低い周波数ではターン数が増えるごとにインピーダンスが上昇していますが、インピーダンスが最大を示す自己共振周波数以上の周波数では、ターン数が増えるほどインピーダンスが低下する傾向にあります。

そのためこの例においては、ノイズの周波数が100MHzを超える場合には、ターンしない方がノイズがよく落ちるということになります。

このターン数の調整に関しては、分割タイプのクランプコアを使えばどれくらいターンすれば良いかを簡単に試すことができるので、まずはそれで当たりをつけてから本格的に対策に望むと良いかと思います。

 

 

おわりに

今回はフェライトコアの基礎ということで、フェライトコアに関する材料特性、形状特性、電気特性について解説しました。

フェライトコアは、パッと見はどれも同じように見えてしまうため、性能の違いをあまり意識せずに使用されることもありますが、適切な材料、形状のものを選ぶだけでもノイズ対策の効果には雲泥の差が生じます。

そのためノイズ対策を行うときには、どのような特性を持ったフェライトコアなのかをきちんと確認してから使用してくださいね。

 

今回はフェライトコアそのものにフォーカスして解説しましたが、実際にノイズ対策するときにはノイズの伝搬モードも考慮してフェライトコアを取る付ける必要があります。

フェライトコアの使い方に関してはコチラを参照ください。

フェライトコアを効果的に使用するためのノウハウノイズ対策において、フェライトコアを効果的に使用するための考え方を紹介しています。...

 

またフェライトコアそのものに関してより深く学びたいという方には「トロイダルコア活用百科」がおすすめです。

内容としてはフェライトコアに特化しているものではありませんが、フェライトコアを含めたコア材の基礎知識が体系立てて学べる内容となっています。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

にほんブログ村 科学ブログへ

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください