ノイズ対策部品として様々な機器で使用されている「フェライトコア」。
今回は、そんなフェライトコアの効果的な使用方法を「ノイズの伝導モード」「周波数」「インピーダンス」という観点から解説します。
動画はコチラ↓
ノイズ対策効果の原理
対策方法の前に、フェライトコアがノイズ対策に有効な理由をおさらいしておきましょう。
フェライトコアは、空気と比較して多くの磁界を取り込むことができ、多くの場合ケーブルに取り付けて使用します。
フェライトコアをケーブルに取り付けると、ノイズ電流によって発生した磁界をフェライトコアが取り込みます。そして、この取り込んだ磁界を熱に変換することでノイズを抑制することができます。

これが、フェライトコアによるノイズ対策の原理です。
ノイズの伝導モード(取り付け方法)
フェライトコアを使って効率的にノイズ対策するためには、ノイズの伝導モードを知っておくことが何よりも重要となります。
ノイズの伝導モードには、「ノーマルモード」と「コモンモード」があります。

ノーマルモードノイズは線間に流れるノイズ成分で、コモンモードノイズは複数の線を同相流れるノイズ成分です。
そして、フェライトコアを使用するにあたっては、それぞれのモードごとに最適な取り付け方法が異なります。
ノーマルモードの場合は、ノイズ電流が流れる電線に対して1つずつフェライトコアを取り付けます。

一方でコモンモードの場合は、ノイズ電流が同じ向きに流れる電線を束ねてからフェライトコアを取り付けます。

またコモンモードノイズの場合には、ノイズの流れ方によって取り付け方法が異なります。

そのため、一概にコモンモードノイズ対策といっても、ノイズの流れ方によってフェライトコアの取り付け方法が違うので注意が必要です。
ノイズの伝導モードの検出
ノイズの伝導モードは、「電流プローブ」を使って伝導モードごとに電流を測定することで、支配的なノイズ成分を見極めることができます。

なお、電流プローブはフェライトコアを使用して自作することも可能です。
電流プローブに必要な要件は、CISPR16-1-2の付則Bに記載されているので、興味があれば自作してみてください。
周波数帯(磁性体の材料)
続いて重要となるのが、ノイズ対策を必要とする「周波数」です。
フェライトコアは磁性体の材料によって、ノイズ対策効果の高い周波数帯域が異なります。

一般的には、マンガン系のフェライトコアは透磁率が高いため低周波ノイズ(~1MHz)に、ニッケル系のフェライトコアは透磁率が低いため高周波ノイズ(1MHz~)に効果的と言われています。
磁性体の材料については「コイルのコア材の種類」という記事で紹介しているので、そちらも確認してみてください。

インピーダンス(ターン数とサイズ)
そして最後に重要となるのが、フェライトコアの「インピーダンス」です。
通常、ノイズ対策においては、インピーダンスが高いほどノイズ抑制効果が大きいため、インピーダンスの高いフェライトコアを選ぶことが大切です。
そして、フェライトコアのインピーダンスは「ターン数」と「サイズ」の2つの観点から考えることができます。
ターン数
まずターン数の方ですが、フェライトコアはコイルの一種です。
1ターンは特殊ですが、ターン数を増やすごとに見た目もコイルに近づいてきますよね。

ちなみにコイルのターン数は、コアの内側を通っているケーブルの本数をもとに規定するので間違えないように注意してください。
フェライトコアのインピーダンスは、自己共振周波数以下ではターン数の2乗に比例します。

サイズ
同じ材料のフェライトコアでも、サイズによってインピーダンス(インダクタンス)が異なります。

サイズに関わるパラメータとしては、s:断面積と l:磁路長です。
この式を見ると、断面積が大きく、磁路長が短いほど、インピーダンスが高くなります。
つまり、トロイダルコアにおいては内径が小さく、外形が大きく、長い形状が有利であると言えます。
コイルの設計方法はコチラ↓

おわりに
ノイズ対策においてフェライトコアを効果的に使用するノウハウを紹介しました。
基本的な考え方は、トロイダルコイルと同じであるため、まずはそこから理解を進めていくのが良いと思います。
トロイダルコイルの学習には「トロイダル・コア活用百科」がオススメです。
(2021/02/26 18:16:41時点 Amazon調べ-詳細)
百科というだけあって、コアやコイルに関して必要な情報はすべて網羅されています。
逆引き辞書としても活用できるので、手元に置いておきたい一冊です。
フェライトコアの基礎に関してはコチラの記事でも解説しています。

理論から理解したい方におすすめの記事です。
マニアックなところではTDKのサイトの「with ferrite」も面白いです。
https://www.jp.tdk.com/techmag/ferrite/
ミクロの世界を覗き込むような気持ちで読むと、色々と興味がそそられます。
化学的に磁性材料を理解したい方は、ぜひ読んでみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。