ノイズ対策

サージ対策の原理とノウハウ

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以前の記事で、雷サージ対策部品の分類についてお伝えしましたが、ここでは改めてサージ対策の考え方についてお伝えします。

動画はこちら↓

 

サージ対策とは

サージ対策とは、突発的に発生する高電圧ノイズに対して、バイパス経路を与えるノイズ対策手法です。

サージ対策回路は、通常動作時には回路に対して何も作用しませんが、過高電圧ノイズが印加された時にのみ、電子機器を保護するためにバイパス経路を提供します。

 

 

サージノイズの種類

外部から流入するノイズには、一定時間ノイズが印加され続ける「定常ノイズ」と突発的にノイズが印加される「過渡ノイズ」の2種類が存在し、IEC61000-4シリーズにおいては以下のように分類されます。

このうち定常ノイズに対しては、サージ対策回路が動作すると通常動作に悪影響を及ぼすため、サージ対策を適用することはできず、過渡ノイズに対してのみ適用できます。

 

サージ対策部品の特性

サージ対策部品は、高い電圧が印加されたときだけ通電する性質を持つため、電流-電圧特性(I-V特性)として表されます。

上図はダイオードのI-V特性で、このうちサージ対策ではツェナー電圧が重要になります。

ダイオードは、逆方向領域中は電圧が掛かってもほとんど電流が流れませんが、ツェナー電圧を超えた途端に急激に電流が流れ始めます。

これをサージ対策に当てはめると、ツェナー電圧を超えるサージノイズが印加されると急激にサージがバイパスされはじめ、後段の回路に対してノイズの影響を与えないようになります。

 

 

サージ対策部品の分類

サージ対策部品は、大きく3つの種類に分類されます。

ツェナーダイオード

ツェナーダイオードは、通常のダイオードと比較してツェナー電圧が低く設定されたダイオードです。

サージ対策におけるツェナーダイオードの長所としては、静電容量が小さいこととツェナー電圧が低いことが挙げられます。

静電容量は特に通信ラインにおいて重要で、静電容量が大きいと信号波形が鈍ってしまいますが、ツェナーダイオードの場合には問題になりません。

またツェナー電圧に関しては、サージノイズの種類に応じて様々なツェナー電圧の部品を選択することができます。

反対に短所としては、単方向のサージにしか作用しないことが挙げられます。

一般的にサージノイズは正負どちらの極性も取りうるため、両極性に対してサージ対策が必要となりますが、ツェナーダイオードで両極性に対応するためには最低2つの部品が必要になります。

バリスタ

バリスタの詳細は以下の記事で記載しています。

バリスタとアレスタの使い分け方 前回の記事では、雷サージ対策部品の種類、分類について紹介しました。 今回は雷サージ対策部品のうち、「バリスタ」...

バリスタの場合、ツェナー電圧に相当するバリスタ電圧が規定されています。

バリスタの長所は、両極性のサージ電圧に対応できることで、また様々なバリスタ電圧の部品を選ぶことができます。

反対に短所は、静電容量が大きいことです。

特にチップ部品のバリスタは、内部で電極を積層しているため、他のサージ対策部品と比較して静電容量が特に大きいです。

アレスタ(ESDサプレッサ)

アレスタは雷サージ用、ESDサプレッサは静電気ノイズ用のサージ対策部品です。

どちらの部品とも、サージ電圧が印加された時に電極間に放電が発生し、その放電によってバイパス経路が形成されます。

これらの部品は、いずれも静電容量が小さいという長所を持ちます。

一方で短所としては、放電現象を伴うため比較的高い電圧でしか動作しないことが挙げられ、そのため部品のラインナップの幅は狭いことが多いです。

またアレスタにおいては、電流が一度流れ始めると電流を流し続けようとする性質(続流)を持つため、サージ電圧が低下した後も電流が流れ続けて漏電となる可能性もあるため注意が必要です。

 

サージ対策時の注意事項

サージ対策を行うにあたっては、2つのことに注意する必要があります。

ノイズの伝搬モード

雷サージノイズには、ノーマルモードとコモンモードの2種類の伝搬モードが存在します。

この2種類のサージノイズは、それぞれ電源ライン中の伝搬経路が違っているため、伝搬経路ごとにバリスタを追加する必要があります。

ノーマルモードに対しては、電源ラインの線間にバリスタを接続し、コモンモードに対しては、電源ラインとアース間にバリスタを接続します。

波形のなまり

サージ対策部品の静電容量の影響は、信号ラインの通信速度によって変わります。

比較的低速な信号ラインにおいては、ほとんど気にする必要はありませんが、高速の通信ラインにおいては静電容量による波形のなまりが顕著に出ます。

静電容量の大きさは、バリスタが最も大きく、ツェナーダイオード、ESDサプレッサの順に小さくなります。

そのため、汎用の通信ラインにおいてはバリスタ、高速の通信ラインにはツェナーダイオード、アンテナなどの高周波回路にはESDサプレッサというようにおおよそ使い分けられています。

 

 

おわりに

今回はサージ対策の原理と考え方について解説しました。

サージ対策に関しては、理論立てて解説されている記事や書籍が少ないので、ぜひ実務において参考にしてみてください。

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今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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