ノイズ対策を考える上で大切なのが「グランド」、いわゆる「接地」です。
接地という言葉は業種によって意味が異なっており、回路設計者は基準電位となるグランドをイメージしますが、設備の設計者はアースへの接続として解釈します。
そして、これらの意味を混同させることがノイズ対策を難しくする一つの要因です。
そこで今回の記事では、この「グランド」「接地」の役割について紹介します。
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ノイズ対策の迷信
接地という言葉そのものには、前述の通り様々な解釈が存在します。

そしてノイズ対策の迷信もここから生まれてきます。
- アース線は太く、短くしなければならない
- 1点接地しなければならない
- 多点接地のほうがいい
- アナロググランドとデジタルグランドは分けたほうがいい などなど
これら迷信は、ある条件においては正しい場合もあります。
しかし、なぜこの方法が良いのか?
これがわからなければ、あるタイミングでノイズ対策の効果が得られなくなります。
よく聞く「前はこの対策で大丈夫だった」からという言葉です。
そういった状況を回避するには、まずノイズ対策における「接地」とは何かをキチンと定義しておく必要があります。
グランドとは
グランドにまつわる用語はたくさんあります。
「アース」「シグナルグランド」「アナロググランド」「デジタルグランド」「パワーグランド」「フレームグランド」・・・

アース
このなかで「アース」いわゆる大地への接地に関しては、主に感電を防止するためのグランドになります。

そのためアース線をいくら太く、短くしてもノイズ対策にはあまり影響がありません。
シグナルグランド
一方でノイズ対策において大切となるのは、回路の基準電位を示すグランドです。
一般的には「シグナルグランド」と呼ばれるものです。

「シグナルグランド」の中に「アナロググランド」「デジタルグランド」「パワーグランド」など、回路ごとに呼び方が分類されていたりします。
金属筐体の場合は「フレームグランド」も「シグナルグランド」と同様に基準電位を与える役割を持ちます。

グランドの役割
グランドの役割としては回路が動作するための基準電位を与えることです。
回路はこのグランドの電圧が基準となって動作します。
グランドの電位が変動すると回路が誤動作を起こしたり、あるいはノイズとなってエミッション試験で対策が必要になったりします。
グランドの設計
では、グランドの電位を変動させないためにはどうすればよいか?
それは、信号のリターン電流の経路のインダクタンスを最小化することです。

ここでの信号という言葉にはデジタルやアナログの「信号電流」はもちろん、「電源電流」「負荷への駆動電流」などすべての回路に流れる電流が含まれます。
基本的なことですが、電流は配線を1本接続するだけでは流れません。
行き道と帰り道が存在して、はじめて流れます。
「オームの法則」や「キルヒホッフの法則」につながる考え方ですね。

リターン経路
そしてノイズ対策に関わる高周波領域では、単に帰り道が在ればいいというわけではなく、その経路をできる限り短くする必要があります。
経路が短いということは、インダクタンスが小さいということと同じです。
インダクタンスが存在すると
V = L * di/dt
の関係によって、基準電位であるはずのグランドに電圧が発生します。
この電圧がいわゆる「コモンモードノイズ」と呼ばれるものです。
そのため、ノイズ対策においてはグランドのリターン電流の経路を短くしてインダクタンスを最小化することが重要となります。
おわりに
「グランド」「接地」の役割について紹介しました。
具体的な事例ではないので中々理解しづらい点もあると思いますが、まずはそれぞれの用語をきちんと使い分けられるようになることが大切です。
人によって用語の解釈が違うこともあるので、他の人の用語で気になったときには言葉の意味を確認してみてください。
ノイズ対策におけるグランドの考え方は、シグナルインテグリティやパワーインテグリティにも通ずるところがあります。
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興味のある方はチェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。