ノイズ対策

効率的なノイズ対策の進め方

この記事では、日頃ノイズ対策に苦慮している方やこれからノイズ対策を行う方向けに、ノイズ対策の進め方について解説しています。

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PDCAサイクル

ノイズ対策するということは、その時点でエミッション試験の限度値をオーバーしていたり、イミュニティ試験で誤動作が発生していたりするわけですが、この状態からいきなり対策を施しても、多くの場合は大した成果が得られず、時間だけが経過することになります。

そのため日頃の業務と同じように、ノイズ対策においてもPDCAサイクルをもとにして進めていくことをオススメします。

  • P:原因調査
  • D:対策実施
  • C:効果検証
  • A:再対策

ノイズ対策をPDCAサイクルに当てはめると、Pではノイズ対策を行うためにノイズの発生原因の仮説を立てます。一般的にPDCAサイクルにおけるPは「計画」とされていますが、ノイズ対策においては対象がコントロールできるものではないため、ここで原因調査を行って方向性を定めます。

次にDでは、Pの原因調査の結果に基づいて対策方法を試してみます。

そしてCでは、Dで行った対策がどれほどの効果があったのかを数値データとして記録して、効果の有無を確認します。

最後のAでは、対策効果の有無や大小をもとにして、Pで立てた原因に対する仮説検証を行い、必要に応じて再対策や次の仮説検証へと移っていきます。

このようにノイズ対策のことを難しく考えすぎずに、その他の実験と同じような心持ちで、1つずつ仮説検証を行っていくことが大切になります。

では、ここからは各工程におけるポイントを解説します。

 

P:原因調査

Pでは、ノイズ対策を行うための原因調査を行いますが、このときに「周波数」「偏波」「ノイズの種類」に着目します。

エミッション試験では、横軸が周波数、縦軸が電界強度で偏波別にグラフが表示されますが、このグラフからノイズの発生源を推測することができます。

周波数

ノイズ発生源は半導体ICであることが一般的ですが、このICからは「動作周波数」+「高調波」がノイズとして放射されます。

つまりICの動作周波数が分かれば、周波数帯ごとにノイズ発生源が推測できるということです。

この例においては、電源基板は数100kHz ~ 数MHz でスイッチング動作するものが多いため 30MHz ~ 100MHzでノイズレベルが高いことが多く、一方で制御基板は 数10MHz ~ 数100MHzで動作しているものが多いため、100MHz以上でノイズレベルが高いことが多いです。

偏波

偏波からノイズを放射している導体を推測することができます。

ここで言う導体はいわゆるアンテナのことで、プリント基板の配線パターンやケーブルなどがアンテナとして作用します。

つまり、垂直偏波のレベルが高い場合は縦向きのケーブルや配線パターンが、水平偏波のレベルが高い場合は横向きのケーブルや配線パターンがアンテナとして作用しているということです。

ノイズの種類

ノイズの種類は「狭帯域ノイズ」と「広帯域ノイズ」に分かれます。

狭帯域ノイズは、特定の周波数でのみ放射されているノイズで、主にICのスイッチング動作によるクロックノイズがその原因となります。

反対に広帯域ノイズは、広い周波数にわたって放射されるノイズで、ICが発生源ではありますが、PWM変調をかけている場合やデータ転送をしている場合に、動作周波数やデューティー比が変動するために発生するノイズになります。

このように各ICのスイッチング周波数と挙動が把握できていれば、おおよそノイズ発生源の目安をつけることができます。

ちなみにプリント基板上の各ICの素性がわからない場合には、スペアナと磁界プローブを使って周波数とノイズの種類を調査することができます。

磁界プローブに関しては、ノイズ対策用の製品が販売されていますが、精度を問わないのであれば自作することも可能です。いずれにしても、ノイズ対策の原因調査には非常に役立つものなので、1本は持っておいても損はないと思います。

 

D:対策実施

Dでは、ノイズ対策を実施します。ノイズ対策の詳細は、以下の記事を参考にしてください。

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Pの段階で、ノイズの発生源とアンテナの仮説を立てているので、そこからノイズ対策部品の周波数特性と設置箇所を検討します。

例①

  • 周波数:100MHz以下
  • 偏波:垂直偏波
  • ノイズ種類:広帯域ノイズ
  • アンテナ:電源ケーブル

電源ケーブルにフェライトコアを付けたり、シールドチューブを付けるといった対策手段が考えられます。

例②

  • 周波数:500MHz
  • 偏波:水平偏波
  • ノイズ種類:狭帯域ノイズ
  • アンテナ:プリント基板の配線パターン

シールドケースで基板を覆ったり、電波吸収シートを貼ってみたり、あるいはダンピング抵抗を追加するといった対策手段が考えられます。

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それぞれの例において、ノイズ対策の効果はケースバイケースで違ってきますが、このように発生源をもとにして対策を実施していくことが重要です。

注意点

ノイズ対策をするときには、色々な対策を一緒に実施しない方が良いです。

複数のノイズ源に対して一気に対策を実施すると、どの対策が、どれくらいの効果があったのかを定量的に把握することが難しくなります。そのため、基本的には1つのノイズ源に対して1つの対策を実施して、1つずつノイズ対策の効果を確認していことが好ましいです。

そして最終的には、1つずつノイズ対策を実施する方がノイズ対策に掛かる工数を削減できることが多いです。

 

C:効果検証

一通りノイズ対策を行ったら、対策の効果を検証するためにノイズレベルを測定します。

このときにノイズレベルがどのように変化したのかを把握することが重要で、そのために原因調査でピックアップしたノイズの周波数と偏波別に、対策前後で数値を記録します。

記録の方法は、エクセルなどのスプレッドシートを使って1行ごとに対策内容と数値データを記録していことが一般的です。

このように記録することで、どのノイズ対策によってどの程度ノイズレベルが下がったかが客観的に把握することでき、上司や先輩に相談したときにもアドバイスが貰いやすくなります。

また対策方法の記録に関しては、同じノイズ源に対する対策を隣り合う列にまとめておくことで、ノイズとの関係性がわかりやすくなります。

 

A:再対策

Aでは、対策が完了なのか、あるいは続行なのかを判断します。とはいえ、多くの場合は引き続き対策を行うことになるはずです。

そして対策を続行する場合には、対策方法を変更するよりも、別の対策を追加していく方が好ましいです。

これは考えてみれば当たり前ですが、最大限ノイズ対策した状態でもノイズレベルが下がり切らないことは十分有り得ます。このような場合、いくら試行錯誤したとしてもノイズレベルは下がり切らないため、より多くの時間を浪費し、更には対策も完了しないという結果につながります。

そのためノイズ対策を行うときには、考えうる対策方法を順々に追加していき、ノイズレベルを下げ切ることができるかを確認していくことが最も重要になります。

この過程でノイズレベルが下がったときには、そこから不要と思われるノイズ対策を順に取り除いていき、対策の組み合わせを最適化していきます。

反対に、どれだけノイズ対策を追加してもノイズレベルが下がりきらない場合には、設計変更しか対策手段は残されていません。設計変更となると心苦しい気持ちになりますが、やるだけやっての結果なら仕方ないと割り切ることもできるはずです。

いずれにしろ、このような判断をできるだけ早くするためにも、ノイズ対策するにあたっては最大限のノイズ対策を行った上で、そこから不要なものを削っていくという考え方が非常に重要になります。

急がば回れではありませんが、一足飛びにノイズ対策しようとすると、それがノイズ対策をより難しくする原因となるため、1つずつデータを積み上げることを大切にしてノイズ対策に望むようにしてください。

 

まとめ

今回はノイズ対策の進め方をPDCAサイクルに例えて解説してみました。

  • P:原因調査
  • D:対策実施
  • C:効果検証
  • A:再対策

実際のPDCAサイクルとはやや異なりますが、ノイズ対策においてはこのサイクルを適切に回していくことが対策の最適化、並びに対策工数の最小化につなることが多いです。

もちろん簡単なノイズ対策の場合には、ここまで厳密に行わなくても良いですが、いつもノイズ対策で苦労しているという方は参考にしてみてください。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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エンジャー
EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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