抵抗

抵抗の適切な選定方法

回路設計の初心者の方にとって、抵抗1つ選ぶのも実は難しかったりします。

そこで今回の記事では、設計初心者の方や趣味で電子工作に取り組んでいる方向けに、安全に抵抗を使用するための選び方について解説します。

以下の順に抵抗を選択することで、回路中で安全に使用することができます。

  1. 定格電力
  2. 定格電圧
  3. 過負荷電圧
  4. 抵抗値
  5. 形状とサイズ
  6. 種類
  7. 温度特性
  8. その他

それぞれの項目について、順を追って説明します。

 

定格電力

定格電力は、抵抗が消費することが可能な最大電力を表しています。

抵抗Rに電圧Vを印加した場合、その抵抗で消費される電力Pは P=V^2/Rで表されますが、この式における最大値が定格電力で規定される値です。

定格電力のラインナップとしては、小信号用であれば「1/8W」「1/4W」「1/2W」あたりが一般的ですが、大電流用途もなると「数W」を超えるものもあります。ただし、定格電力はあくまでも最大値として規定されたものであるため、実際の設計においては、回路の消費電力に対して2倍以上の定格電力値の抵抗が使用されます。

詳細に設計する場合には、周囲温度や抵抗自体の発熱などのディレーティングを加味して選定する必要がありますが、はじめのうちは回路の消費電力に対して「2倍以上」の定格電力を持つ抵抗を選べば良いです。

 

定格電圧

定格電力と並んで、抵抗を安全に使用するために重要なのが定格電圧で、抵抗に連続して印加可能な最大電圧を示したものになります。

定格電圧を規定するパラメータは2つあります。

定格電力

定格電圧は ①定格電力と密接に関係しており、P=V^2/R の式を変形すると V=√(P✕R)となります。

つまり定格電圧Vは、定格電力Pと抵抗Rの積によって決まるため、定格電力が同一のシリーズの抵抗器であっても、抵抗値によって定格電圧が異なります。

最高使用電圧

最高使用電圧は、特に高い抵抗値の抵抗において重要なパラメータになります。

定格電力をもとに定格電圧を規定すると、抵抗値の高いものほど高い電圧を掛けることができることになります。しかし実際には、高い抵抗値の抵抗であっても、ある一定以上の電圧を印加すると過電圧によって部品が破損します。

そのため過電圧によって部品が破損しないように最大電圧が定められており、それが「最高使用電圧」になります。

定格電圧は、抵抗値が低い間は定格電力をもとに規定されており、一定以上の抵抗値になると最高使用電圧をもとに規定されます。

設計する場合には、必ず定格電圧を下回る電圧で使用するようにしてください。ちなみにこの定格電圧の規定が切り替わる抵抗値のことを「臨界抵抗値」と呼びます。

 

過負荷電圧

過負荷電圧は、短時間過負荷試験において5秒間印加可能な最大の電圧を表しており、瞬時的に高い電圧が加わる回路において重要な特性となります。

抵抗値が低い領域において、この過負荷電圧は定格電圧の2.5倍程度となりますが、抵抗値が高い領域になると、素子ごとに規定された「最高過負荷電圧」によって規定された値となります。

この過負荷電圧も定格電圧と同じく、規定以上の電圧が印加されると部品が破損に至るため、定格範囲内で使用することが大切です。

 

抵抗値

抵抗値は、抵抗器のメインのパラメータです。

抵抗値そのものの意味は、電流の流れにくさを表したものです。設計する場合には「E系列」と「許容差」について理解しておく必要があります。

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E系列を簡単に説明すると、部品の定数を等比級数的に分割したもので、分割する程度によって「E6系列」「E24系列」「E96系列」などと分類されています。数字が大きいほど部品の種類が多くなり、かつ抵抗値の許容差(誤差)も小さくなりますが、部品コストは高くなる傾向にあります。

回路の仕様をもとにして、どの程度まで誤差が許容できるかを判断して抵抗値を決定してください。

 

形状とサイズ

形状

形状は「リード付き」か「表面実装」かのいずれかから選択する必要があります。

ただしこの形状に関しては、抵抗単体ではなく、回路基板としてあらかじめ決まっていることが多いかもしれません。そのため基板の仕様に適した形状のものを選択すれば問題ありません。

サイズ

サイズに関しては、特に表面実装タイプにおいては重要なパラメータとなります。

その理由としては、部品サイズが小さいほど「定格電力」が制限されるためです。

つまり、いくら小型化したいと考えていたとしても、小さい部品ほど許容電力が小さいため、部品サイズとトレード・オフの関係になります。

ただし今回の選定手順においては、定格電力を最優先のパラメータとして事前に決定しているため、この時点では制限された中から選択することとなるため問題ないかと思います。

 

種類

抵抗にも実は様々な種類が存在し、それぞれ違った特徴を持っています。以下の記事では、各形状ごとにそれぞれの抵抗を紹介しているので参考にしてください。

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もし各抵抗の特徴からどの種類が良いかを判断することができなければ、リード付きにおいては「カーボン皮膜抵抗」、表面実装においては「厚膜チップ抵抗」が定番となっているため、いずれかを選択しておくのが無難です。

 

温度特性

温度特性は、2つの側面からの検討が必要です。

使用温度範囲

他の電子部品と同じく、使用温度範囲が規定されています。

このとき注意すべきこととして、単に周囲温度をもとに仕様を決めれば良い訳ではなく、抵抗自身の自己発熱も含めて最高温度を検討する必要があります。この自己発熱が厄介な点は、同じ回路であったとしても部品の実装密度によってその上昇具合が異なる点にあります。

つまり使用温度範囲が一律に同じになるとは限らず、同じ機器内でも回路によって抵抗の使用温度範囲が異なるといったことも起こりえます。

そのため特に実装密度の高い基板や、消費電力が高い回路においては十分余裕を持ったスペックのものを選定する必要があります。(一般的な用途であれば +85℃のスペックで問題ありません)

温度係数

温度係数は、温度によって抵抗値がどの程度変化するかを表すパラメータで、単位は「ppm/℃」で表されます。

センサー回路など、抵抗値の変化がアプリケーションの制御に与える影響が大きい場合に重要なパラメータとなります。

温度係数そのものは、抵抗の種類によって概ね決まっていますが、その中でも温度によって温度係数が大きく変化するものや、負の温度係数を持つものがあったりするため、適切なタイプを選定するようにしてください。

 

その他

ここまでのフローに則っていれば、概ね選択する抵抗は限定されているはずですが、その他に検討することもあるパラメータを3つ紹介します。

周波数特性

特に高周波回路を設計する場合に、周波数特性は重要なパラメータとなります。

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抵抗値が低い抵抗の場合は、寄生インダクタンスの影響で高周波のインピーダンスが上昇する傾向にあります。一方で抵抗値が高い抵抗は、寄生キャパシタンスの影響で高周波のインピーダンスが低下する傾向にあります。

そのため、高周波においては抵抗は単なる純抵抗として機能しないということを頭の片隅に置いておくと良いかと思います。

電流雑音

電流雑音は、抵抗に電流を流したときに発生する雑音の大きさを表したもので「1/f雑音」と呼ばれることもあります。

抵抗の雑音の大きさは、熱雑音+電流雑音によって決まります。

このうち熱雑音は温度や抵抗値によって決まりますが、電流雑音は材質によってその大きさが違っており、特に表面実装型のチップ抵抗においては、厚膜チップ抵抗と薄膜チップ抵抗で電流雑音の大きさが異なります。

多くの回路では厚膜チップ抵抗が使用されますが、ノイズの影響を小さくしたい場合には、薄膜チップ抵抗を選択すると良いかと思います。

電圧係数

電圧係数は、印加電圧に対して抵抗値がどの程度変化するかを表すパラメータで、単位は「ppm/V」で表されます。

一般的な用途においてはあまり気にする必要がないため、データシートには記載されていないことが多いですが、高い電圧を印加する回路においては、抵抗値の変化が思わぬ不具合を招くこともあるため注意しておくと良いかと思います。

 

おわりに

回路設計の初心者の方向けに抵抗の選び方を紹介しました。

抵抗は単純なようで実は奥が深い部品なので、まじめに部品選定すると結構難しいです。

ある程度回路の設計に慣れてくると、どの抵抗を使用したらいいかおおよその感覚が掴めてきますが、それまでは今回紹介した手順をもとに選ぶと、少なくとも安全に抵抗を使用できるはずです。

抵抗の用途については、こちらの記事で解説しているので参考にしてみてください。

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抵抗の使いこなしについては「抵抗&コンデンサの適材適所」や「基本電子部品大事典」が参考になります。

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今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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