この記事では、オペアンプの種類を「用途」「電源」「半導体」の観点から解説しています。
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用途による分類
メーカーの Webサイトでは、オペアンプは用途によって分類されています。
ローム製のオペアンプを例に用途別で性能を比較すると、それぞれに違った長所(赤字)を持つことがわかります。
汎用タイプ
汎用タイプのオペアンプは、基本的にコストを抑えた仕様のものです。
- 低コスト
- 入手性が高い
- 入力電圧範囲が狭い
- ゲイン帯域幅が狭い
オーディオ帯域など、比較的周波数が低い用途において使用されています。
この汎用タイプの性能を基準に各タイプの特徴を捉えるとわかりやすいです。
高速タイプ
高速タイプは、高スルーレート(目安:10V/us以上)の性能を持つオペアンプです。
高い周波数成分を増幅する場合で、かつ大きな振幅が必要な増幅回路において、スルーレートが低いオペアンプを使用すると出力信号が歪みます。
この出力信号の歪みは、信号のタイミングのズレやマージンの低下につながってしまうため、高速信号に対しては高速タイプのオペアンプを使用する必要があります。
低オフセット(高精度)タイプ
低オフセットタイプは、オペアンプの入力オフセット電圧が小さく抑えられたものです。
入力オフセット電圧は、2つの入力端子間に生じるわずかな電圧のことで、増幅回路においては入力オフセット電圧が大きいほど、出力電圧の規定の増幅率に対してズレが生じます。
そのため、アナログ信号のような高い精度が要求される場合においては、可能な限り入力オフセット電圧を小さくする必要があります。
ローノイズタイプ
ローノイズタイプは、入力換算雑音電圧が低く(目安:数10 nV/√Hz以下)抑えられたオペアンプです。
入力雑音電圧とは、オペアンプのゲインを加味した入力側に発生するノイズのことで、入力雑音電圧が低いほど低レベルの信号を検出できます。
入力雑音電圧は周波数特性を持ち、低い周波数ほどノイズが大きくなる傾向にあります。
低消費電力タイプ
低消費電力タイプは、回路電流が小さく(1mA以下)抑えられたオペアンプです。
回路電流は、静止(スタンバイ)状態のときにオペアンプが使用する電流量のことで、回路電流が小さいほど消費電力を小さくすることができます。
この低消費電力タイプは、特にバッテリー駆動が要求されるモバイルアプリケーション用途で使用されます。
電源による分類
オペアンプには2つの電源端子があり、基本的にはプラスの「+Vcc」とマイナスの「-Vee」が必要となります。
この2つの電源端子に対して、入出力の電圧範囲の違いによって「両電源」「単電源」「レール・ツー・レール」に分類されます。
両電源オペアンプ
両電源オペアンプは、プラスとマイナスの電源電圧を必要とするタイプのオペアンプで、Vccにプラス電源、Veeにマイナス電源を接続します。
両電源オペアンプから出力される波形は、GNDを基準にして正負の電圧が出力されます。
単電源オペアンプ
単電源オペアンプは、片方の電源端子にのみ電源を供給するタイプのオペアンプで、一般的にVccにプラス電源、VeeにはGNDを接続します。
マイナスの電源端子にGNDを接続しているため、出力波形はVccより少し低いレベルととGND間で電圧が出力されます。
ちなみに、単電源オペアンプと表記されているものであっても、両電源オペアンプとして使用できます。
レール・ツー・レール(Rail-to-Rail)オペアンプ
レール・ツー・レール(Rail-to-Rail)オペアンプは、電源電圧範囲(Vcc~Vee)の全ての領域を出力として利用できるタイプのオペアンプです。
レールは電源電圧を意味しており、レールからレールまで、すなわち電源電圧の全てで動作するということになります。
このレール・ツー・レールに対応する端子が、入力のみ、出力のみ、入出力両方のいずれかによって名称が分かれています。
またレール・ツー・レールのことを「フルスイング」と呼ぶこともあります。
半導体による分類
オペアンプは、入力段に用いられる半導体の違いによって「バイポーラ」「JFET」「CMOS」に分類されます。
バイポーラタイプ
バイポーラタイプは、入力段がバイポーラトランジスタで構成されたオペアンプです。
電流駆動のバイポーラトランジスタを使用しているため、入力バイアス電流や消費電力が大きくなりがちですが、低ノイズ、低オフセット、高耐圧というメリットを持ちます。
JFETタイプ
JFETタイプは、入力段にJFET(接合型電界効果トランジスタ)を使用したオペアンプです。
電圧駆動のFETを使用しているため、基本的に入力インピーダンスが高く、消費電力を小さく抑えることができます。またスルーレートもそこそこ高いです。
一方で、入力オフセット電圧はバイポーラタイプと比較して大きいです。
CMOSタイプ
CMOSタイプは、入力段にCMOS(P型とN型のMOSFET)を使用したオペアンプです。
入力インピーダンスが非常に高く、入力バイアス電流がほとんど流れないことが特徴として挙げられます。
一方で、入力オフセット電圧はJFETよりも大きく、ノイズも大きいです。
おわりに
今回は、オペアンプの種類を解説しました。
オペアンプには様々な種類が存在し、適切な部品を選ぶのも一苦労しますが、さしあたりどのような種類が存在するのかを知っておくことが大切です。
ここで紹介した分類が全てではありませんが、部品選定の際の参考としてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。