電子回路

【ADコンバータの基礎知識

記事内に商品プロモーションを含む場合があります。

この記事では、電子回路初心者の方向けにADコンバータを使用する上で知っておくべき基礎知識を解説しています。

動画はこちら↓

 

ADコンバータとは

ADコンバータのADは、A(アナログ)とD(デジタル)を意味しており、アナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換する働きを持ちます。

アナログとデジタルの違いは、アナログの電気信号が時間に対して連続的に電圧が変化するのに対して、デジタルの電気信号は時間に対して離散的に値が変化します。

ADコンバータでは、アナログからデジタルに変換するにあたって「標本化」と「量子化」の2つのプロセスが実行されます。

標本化(サンプリング)

連続的に変化しているアナログ信号をある一定時間ごとに区切ることを標本化、あるいはサンプリングと言います。

このサンプリングは、アナログからデジタルへの変換を1秒間に何回実行するかを表しており、SPS(Sample Per Seconds)という単位で表されます。

電子回路では、ADコンバータのサンプリングがクロックに同期して行われるため、クロックの周波数が高いほどアナログ信号をより忠実にデジタル信号で再現することができます。

量子化

量子化は、アナログからデジタルに変換する際の分解能に相当するものです。

量子化の範囲は、基準となる電位(GND)から電源電圧(Vcc)までとなっており、それ以下の小さな信号、あるいはそれ以上の大きな信号については下限値と上限値に丸め込まれます。

またADコンバータではデジタル化する、つまり2進数化する関係上 2のべき乗ごとに分解能が規定されており、分解能が低いものであれば 8bit、分解能が高いものであれば 24bit以上の精度を持つものが存在します。

 

 

エイリアシングとは

ADコンバータでサンプリングする場合には「エイリアンシグ」と呼ばれる周波数の折り返し効果について理解しておく必要があります。

あるアナログ信号をデジタル信号に正確に変換するには、アナログ信号の中の最大周波数に対して2倍の周波数でサンプリングを行う必要があり、これを標本化定理と言います。

そして標本化定理を逆の視点から捉えると、サンプリング周波数の半分の周波数までしか信号を正確に変換できないと捉えることができ、サンプリング周波数の半分の周波数のことを「ナイキスト周波数」と呼びます。

ADコンバータに対してナイキスト周波数よりも高い周波数の信号を入力すると、ナイキスト周波数を境にしてその差分だけ低い周波数へと変換されてしまいます。

なぜこのような現象が発生するかというと、時間軸の波形として捉えたときに高速な信号があたかも低速な信号に見えてしまうためです。

そしてこの別の周波数へと変換されてしまった信号は、データとして間違えているだけでなく、ノイズとしてデータそのものの精度を低下させてしまいます。

そのためADコンバータを使用する場合には、エイリアシングを発生させないためにADコンバータの前段に「アンチエイリアシングフィルタ」と呼ばれるローパスフィルタを実装します。

このアンチエイリアシングフィルタはADコンバータの分解能、つまりダイナミックレンジよりも減衰量が大きいことが好ましいですが、用途に応じて適宜調整する必要があります。

 

ADコンバータの方式

ADコンバータの方式は、サンプリング周波数と分解能によって分類することができます。

代表的な方式としては「SAR(逐次比較)型」「⊿Σ(デルタシグマ)型」「パイプライン型」があります。

逐次比較型

逐次比較型は最も汎用的な方式で、サンプリング周波数がおおよそ1MHz以下、分解能が8~18ビット程度となっています。

サンプリング周波数が1MHzまで対応しているため、電子工作で使用するおおよそのセンサーに対応できます。

また分解能についても最大で18bit程度までカバーされているので、微小なレベル差であっても検出することができます。

デルタシグマ型

デルタシグマ型は、いわゆる高精度なADコンバータとして分類されているもので、サンプリング周波数が低い代わりに 24bit や 32bitなど高い分解能を持ちます。

このデルタシグマ型は、オーディオ機器や計測器など高い分解能が必要とされる用途で使用されます。

パイプライン型

パイプライン型はサンプリング周波数が高いことが特徴で、高速ADコンバータとして分類されています。

サンプリング周波数については 1GSPSを超えるものもあります。

一方で分解能については、他の方式に比べると低いものが多く 8bit ~ 14bit程度のものが主流となっています。

なおこのパイプライン型は、名前にある通りパイプラインに順々にデータが処理されていくため、データの遅延が他の方式よりも大きくなります。

ちなみに用途としては、画像処理やSDRなど高速な演算処理が要求されるアプリケーションに使用されています。

 

 

おわりに

今回はADコンバータの基礎知識とも言える「量子化」「標本化」「エイリアシング」「方式の違い」について解説しました。

ここでお伝えした内容は、ADコンバータを使用する上で必ず知っておくべき知識です。

最近ではADコンバータがマイコンの中に内蔵されていて、部品単体を目にする機会は少ないかもしれませんが、そこでも活用できるので参考にしてみてください。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

にほんブログ村 科学ブログへ

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください