EMCエンジニアが活躍する場所(業種)の紹介です。
「EMCエンジニアの分類」という記事の中で、EMCに関わる仕事をする技術者全般をEMCエンジニアと定義し、そのなかでEMCエンジニアが活躍する業種を3つタイプに分類しました。
・EMC試験所
・メーカー
・コンサルタント
今回の記事では、この3つのタイプのうち「メーカー」で活躍するEMCエンジニアの仕事内容を紹介します。
メーカーの分類
EMCエンジニアが活躍するメーカーにはタイプがあります。
・セットメーカー
・計測器メーカー
・部品メーカー
EMC試験所と違い、それぞれのメーカーで求められる専門知識は大きく異なります。
セットメーカーでは、電子機器を製造・販売することが主たる事業となるため、各種EMC規格を満足する商品を設計・開発するスキルが求められます。
具体的には「EMC性能」を考慮した「回路設計」「アートワーク設計」「システム設計」のスキルが重要視されます。
つまり「EMC設計」を実現する能力です。
計測器メーカーでは、セットメーカーと同様に「EMC設計」のスキルを求められる設計エンジニアの他に、「FAE(Field Application Engineer)」と呼ばれる技術営業(セールスエンジニア)のポジションでもEMCエンジニアが活躍しています。
EMC用の計測器は、基本的には限られた用途で使用される機器であるため、ユーザーであるセットメーカーのエンジニアに対して「計測器の取り扱い」「測定原理」「導入のメリット」などをわかりやすく説明するスキルが求められます。
もちろんEMC試験で使用するための計測器であるため、「EMC規格」についても精通している必要があります。
部品メーカーにも、最適なノイズ対策方法を提案するために「FAE」として活躍するEMCエンジニアがいます。
部品メーカーのFAEには、ノイズ対策の知識はもちろん、「対策のメカニズム」や「部品の選定方法」などをセットメーカーのエンジニアにわかりやすく伝える能力が求められます。
部品メーカーでは、その他にも「ノイズ対策部品」を開発するEMCエンジニアもいます。
このタイプのエンジニアには、EMCに関する知識よりも「材料」「構造」「製造方法」などの知識が重要視されます。
電気系のエンジニアよりも、機械系のエンジニア、あるいは化学系のエンジニアがこの役割を担うことが多いです。
電気が専門ではないとは言え、もちろんEMCに関する最低限の知識は求められます。
セットメーカー
セットメーカーと一口に言っても、企業の規模によってEMCエンジニアの働き方は大きく異なります。
「中小企業」「ベンチャー企業」、あるいは上場企業のうち「小~中規模」の企業では、一人の担当者が商品の全工程の設計を担うことが多いです。
こうした企業では、EMCの専任エンジニアはいないため、設計者がEMCエンジニアも兼任している形となります。
【先輩インタビュー】
EMCの専門的な能力よりは、電子機器の製造におけるスキル全般の中でEMCに関する知識が求められます。
「大企業」になると、ひとつの商品開発の中でも工程ごとに仕事が分業されているため、より専門的な能力が求められるようになります。
EMC設計においても、部門をまたがって設計内容をレビューできる専任のEMCエンジニアがいる企業もあります。
とくに最近は設計段階でのEMC対策が重要視されており、EMC的な観点(エミッション、イミュニティ、シグナル・インテグリティ、パワー・インテグリティなど)から設計内容をレビューできるエンジニアは重宝される傾向にあります。
また、EMC試験を専門としている部署もあり、そこではEMC試験所のエンジニアと同様のスキルが必要となります。
EMCエンジニアとしての専門性の高さに加えて、多くの部署を巻き込みながら業務を進めるためのコミュニケーション能力も求められます。
その他にも、大企業には設計を専門とする派遣企業のエンジニアが多数働いており、そのエンジニアの中にはEMC設計を専門とするエンジニアもいます。
【先輩インタビュー】
計測器メーカー
計測器メーカーのFAEは、「製品のサポート」「製品の提案」「技術セミナーの開催」など多岐にわたる業務を柔軟に対応できる能力が必要です。
【先輩インタビュー】
半分営業の仕事も兼ねているため、コミュニケーション能力も重視されます。
また、計測器の設計エンジニアには、通常の設計スキルに加えて「高周波」に関連する設計するキルが求められれます。
高周波特有の影響を加味して設計するために、設計ツールの操作スキルも重要となります。
部品メーカー
部品メーカーのEMCエンジニアは顧客との共同作業がほとんどです。
そのため、「提案力」を中心としたコミュニケーション能力が何よりも大切になります。
ノイズ対策部品を開発するエンジニアには、製造場所によっては海外とのコミュニケーションも必要となるため、語学力が求められることもあります。
他のエンジニアよりも「材料」や「構造」など、電気以外の分野の専門知識が必要となります。
おわりに
「メーカー」で活躍するEMCエンジニアの仕事内容を紹介しました。
セットメーカーのEMCエンジニアは「iNarte EMC エンジニア」よりも「EMC設計技術者」や「陸上無線技術士」の資格のほうが優遇されることもあります。
いずれも、EMCエンジニアとしての設計スキルを評価することができる資格です。
スキルアップを図りたい方は、是非チャレンジしてみてください。
その他の業種の「EMCエンジニアの仕事内容」についても紹介しています。
合わせてチェックしてみてください。
今回は以上です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。