高誘電率系のセラミックコンデンサは、電圧を掛けると静電容量が変化するいわゆる「DCバイアス特性」と持ち、定格よりも静電容量が小さくなってしまうため、想定した性能が得られないことがあります。
そこでこの記事では、回路シミュレータの「LTSpice」を使ったDCバイアス特性のシミュレーション方法を紹介します。
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DCバイアス特性とは
DCバイアス特性は、コンデンサの両端に直流電圧を印加した時の静電容量の変化率を表したものです。
そしてこのDCバイアス特性は、セラミックコンデンサの中でもClass2に分類される高誘電率系において非常に大きくなります。
高誘電率系のセラミックコンデンサは、小型でかつ静電容量が大きいため様々なアプリケーションで使用されています。
そのため回路設計にあたっては、DCバイアス特性を加味して回路の動作状態をシミュレーションする必要があります。
動的モデルの適用
DCバイアス特性を加味した回路シミュレーションを行うには「動的モデル」と呼ばれるシミュレーション素子を使用する必要があります。
動的モデルは、各電子部品メーカーのWEBサイトからダウンロードすることができますが、今回はTDKのモデルを例にしてシミュレーション方法を紹介します。
ダウンロード
TDKの動的モデルは、以下のURLのページからダウンロードすることができます。
https://product.tdk.com/ja/technicalsupport/tvcl/general/mlcc.html
様々な型式のモデルが公開されていますが、今回は「一般グレード」の「C1608サイズ」のLTSpice用のモデルをダウンロードします。
ダウンロードしたZipファイルを解凍すると、各コンポーネントごとに「.asy」と「.mod」の2種類の拡張子のデータが格納されています。
この2種類のデータはシミュレーションを実行するにあたってどちらも必要になります。
データの保存場所
動的モデルの保存場所は、モデルの適用範囲によって異なります。
①特定のシミュレーション回路にのみ適用
シミュレーション回路と同じフォルダに「.asy」と「.mod」のファイルを保存します。
②全てのシミュレーション回路に適用
「.asy」と「.mod」のファイルをそれぞれ以下のフォルダに保存します。
【asyファイル】C:\Program Files\LTC\LTspiceIV\lib\sym
【modファイル】C:\Program Files\LTC\LTspiceIV\lib\sub
なおファイルを保存するときに、管理者の権限が必要と表示されたなら「続行」をクリックしてください。
シミュレーション回路の作成
検証用に適当なシミュレーションファイルを作成し、動的モデルを読み込みます。
動的モデルの読み込みは、メニューバーの「Edit」から「Component」とクリックします。
つづいて「asyファイル」を保存したディレクトリを選択すると、先ほど保存した動的モデルが表示されます。
後は電源と抵抗を接続すれば、シミュレーション回路は完成です。
シミュレーション結果の妥当性
上記の回路でシミュレーションを実行し、静電容量を計算した結果が下図です。(単位のΩをFに読み替えてください)
横軸の電圧が高くなるにつれて静電容量が低下しており、3.3Vのときに4uF、5Vのときには2.5uFまで低下していることが確認できます。
このシミュレーション結果をデータシートの特性と比較して、妥当性を確認してみます。
すると5Vのときに2.39uFとなっており、非常に高い精度でセラミックコンデンサのDCバイアス特性がモデル化できていることがわかります。
おわりに
今回はLTSpiceを使って、セラミックコンデンサのDCバイアス特性をシミュレーションする方法について解説しました。
セラミックコンデンサのDCバイアス特性は、電源ノイズの対策においてもフィルタの周波数特性に影響を与えるため非常に重要となります。
動的モデルは導入に若干の手間がかかりますが、現物に近い特性で回路シミュレーションできるので、ぜひ一度使ってみてください。
セラミックコンデンサも含めて、電子部品の基礎知識については「電子部品 超入門」で解説しています。
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初心者の方でも理解できるよう基礎的な内容も丁寧に解説しており、電気回路に苦手意識を持っている方には最適です。ぜひ一度読んでみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。