この記事では、カレントミラー回路の基礎について解説しています。
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カレントミラーとは
カレントミラーは名前の通り、カレント(電流)をミラー(複製)する働きを持つ回路です。
1つの電流源を使って、それと同じ電流値の回路を複数作ることができます。
回路構成
カレントミラー回路は、基準となる定電流源に加えてバイポーラトランジスタを2つ使用します。
この2つのトランジスタはそれぞれのベース端子がショートしており、さらにこのうちT1はコレクタ端子ともショートしています。
この回路において、定電流源からT1のベース端子に電流が流れるとトランジスタが導通してコレクタ電流が流れます。
このときベース・エミッタ間電圧 Vbeは 0.6~0.7V程度で固定され、それと同じ電圧が T2のベース端子にも掛かります。するとトランジスタT2も導通し、定電流源の電流と同じ大きさの電流がコレクタ・エミッタ間に流れます。
つまり、定電流源の電流を複製しているということです。
これがカレントミラーと呼ばれる所以で、この性質を利用することで2つだけでなく3つ、4つと更に多くの定電流回路を複製することができます。
ただしトランジスタT1には定電流源からベース端子にも電流が流れているため、トランジスタの数が増えるほどT1と他のトランジスタとの間で電流値の差が大きくなります。
カレントミラーの前提条件
カレントミラーにおいて、電流を複製するためにはトランジスタ同士の I-V特性が一致している必要があります。
ここで言うI-V特性というのは、トランジスタのベース・エミッタ間電圧 Vbeとコレクタ電流 Icの関係を表したものです。
I-V特性
トランジスタは、一定以上のベース・エミッタ間電圧が掛かるとコレクタ電流が急激に流れ出します。
このコレクタ電流の大きさはトランジスタごとに異なるため、カレントミラーに使用するトランジスタは型式が同じであることはもちろん、ICチップとして集積化された(同一ウエハー上に製作された)トランジスタを使用する必要があります。
ディスクリート部品を使ってカレントミラーを作ったとしても、各トランジスタの特性が一致していないために思ったような性能は得られません。
応用回路
ベーシックなカレントミラーでは、トランジスタ T2に掛かる電圧を0V ~ 5Vまで連続的に変化させていくと、それぞれのトランジスタのコレクタ電流にわすかな差が生じます。
このわずかな電流値の差は、微小なバイアス電流でも影響を受けるオペアンプなどの素子において問題となってしまうことがあります。
ウィルソンカレントミラー
このような場合は、ウィルソンカレントミラーを使用します。
ウィルソンカレントミラーは4つのトランジスタで回路が構成されており、「T1とT2」「T3とT4」のそれぞれのベース端子がショートされています。
また上下のペアで別々の回路からベース端子にショートさせることで、全てのトランジスタに同じ大きさの電流が流れるようになっています。
実際に Vccが5Vのときの各ベース端子に掛かる電圧は「T1とT2」「T3とT4」で一致しており、I-V特性が等しいトランジスタであればコレクタ電流も等しくなります。
おわりに
カレントミラーの基本について解説しました。
カレントミラーは、オペアンプなどの集積化回路には必ずと行ってよいほど使用されており、電子回路を学んでいく上で避けては通れない回路です。
そのため、回路シミュレーションを使って自分なりの理解を深めておくことをおすすめします。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。