コイルのコア材には用途によって向き・不向きがあるため様々な種類がありますが、それらを比較するにあたって重要となる特性がいくつか存在します。
そこで今回は、コイルのコア材の特性のうち最も重要度の高い特性項目を5つ紹介します。
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飽和磁束密度
飽和磁束密度は、磁性体がどれほど多くの磁束を取り込むことができるかを表すもので、単位は テスラ [T] やミリテスラ [mT]で表されます。
この飽和磁束密度は各元素ごとに決まっており、代表的なものとしては以下のとおりです。
- 鉄 2.1 T
- コバルト 1.8T
- ニッケル 0.6T
一般的にコイルのコア材として使用される磁性体は、合金であるためこれらの元素が組み合わされています。
例えば
- 鉄とケイ素の合金の電磁鋼板 2.0T
- 鉄とニッケルの合金のパーマロイ 1.5T または 0.8T
コイルの設計においては、飽和磁束密度が高いほど大きな電流が流れても磁気的な性質を維持することができます。
透磁率
透磁率は多くの場合、真空の透磁率と比較した「比透磁率」として表され、比透磁率は空気と比較してどの程度磁束を取り込みやすいかを表す係数となります。
単位はあまり目にする機会はありませんが [H/m] です。
透磁率は、コイルのインダクタンスに直結する特性で、透磁率が高いほどインダクタンスが高くなります。
一方で透磁率が高いほどその分多くの磁束を取り込むということで、小さな電流でもコア材内部の磁束密度が高くなり、ある一定以上の電流がかかると飽和磁束密度に達して比透磁率が 1 、つまり空気と同じ性質になってしまいます。
そのためコイルの設計においては、動作電流をもとに飽和磁束密度と透磁率それぞれのバランスを取る必要があります。
鉄損
鉄損は名前の通り、磁気的な性質による損失を表すもので、単位は [W]] で表されます。
鉄損の詳細は、コチラの記事からご確認ください。
この鉄損は、その損失の要因となるものが3つあり、それぞれ「ヒステリシス損失」「渦電流損失」「残留損失」と呼ばれています。
このうちヒステリシス損失と渦電流損失がコイルの発熱の主たる要因となるもので、ヒステリシス損失はヒステリシス曲線の面積に応じて損失が大きくなり、渦電流損失はコア材の導電率に応じて損失が大きくなります。
コア材によってこれらの損失の大きさは異なりますが、いずれにしても損失の総量がコア材の鉄損ということになります。
キュリー温度
キュリー温度は、コア材が磁性体としての性質を何℃まで維持することができるかを表すもので、コア材がキュリー温度に達すると飽和磁束密度に達したときと同じように、磁性体としての性質を失ってしまいます。
このキュリー温度は、データシート上で Tc = ○○℃ として規定されていますが、それ以前に多くのコア材は飽和磁束密度や透磁率に温度依存性があり、キュリー温度以下の状態であってもそれぞれの特性が低下しはじめます。
そのため実際に使用するときには、その低下度合いが許容範囲内に収まる温度で使用する必要があります。
ちなみにコイルの動作時には、周囲温度に加えて、コイルの電線の発熱やコア材の鉄損による発熱が加わるため、コイル設計においてはキュリー温度に対してある程度マージンを見て材料が選定する必要があります。
磁歪
磁歪は、コイルに電流が流れたときにコア材が物理的に変形する性質を表したもので、いわゆる「コイル鳴き」と呼ばれる現象はこの磁歪による振動が原因となっています。
コア材内部の磁性体粒子は、電流が流れていない状態では様々な方向を向いていますが、コイルに電流が流れて磁化していく過程の中で、粒子の形が変形します。
そして交流の電流が加えられた場合には、その変形が繰り返されることで空気が振動され、音として人間の耳に届きます。
磁歪は磁性体の持つ性質であるため 0 にすることはできませんが、コイルとしての対策方法はいくつか存在します。
おわりに
今回はコア材の基本特性を5つ紹介しました。
- 飽和磁束密度
- 透磁率
- 鉄損
- キュリー温度
- 磁歪
これの特性に対して、それぞれのコア材ごとに得手・不得手があり、用途に合わせて
適切なコア材を選定することがコイル設計においては重要となります。
また既製品のコイルを選ぶ場合にも、コア材ごとの特徴がある程度頭に入っていれば、用途ごとに適切なコイルを選びやすくなるので、まずはこれらの基本特性がどのようなものかをきちんと理解しておくと良いかと思います。
ちなみにコイルの設計方法に関してはこちら。
またコア材に関しては「トロイダルコア活用百科」や「スイッチング電源のコイル/トランス設計」がおすすめです。
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どちらの書籍とも、コイルを使用する上で重要な知識を体系立てて学ぶことができます。
今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。