磁性体には「硬質磁性体」と「軟質磁性体」の2つの分類があります。
このうちコイルのコア材として使用されるのは「軟質磁性体」で、その軟質磁性体のなかにも、さまざまな材料があります。
そこで今回の記事では、コイルのコア材に使用される磁性体の種類と特徴について紹介します。
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代表的なコア材
コイルやトランスのコア材を大別すると、4つの材料に分類できます。
- 電磁鋼板
- ダスト材(鉄ダスト、センダスト、パーマロイ)
- フェライト材(ニッケル、マンガン)
- 箔材(アモルファス、ファインメット)
各材料の特徴をまとめると図のようになります。
それぞれの材料の用途などを見ていきましょう。
電磁鋼板
電磁鋼板は商用周波数(50/60Hz)のトランスによく利用されます。
EI形コアと呼ばれる、平板を打ち抜いたものを積層して自由に大きさを決めることができるのが特徴で、積みコアと呼ばれることもあります。
高周波の特性は悪いので、スイッチング電源用のトランスには不向きです。
またノイズ対策用のコイルとして使用されることもありません。
ダスト材
ダスト材にはいくつか種類があります。
総じての特徴としては、透磁率が非常に低いことが挙げられます。
それぞれの金属としては非常に透磁率が高いですが、渦電流損失を低減するために金属粒子を絶縁コーティングする必要があり、この絶縁層によって、コア材としてみたときの透磁率が低くなります。
コイルの損失については、下記の記事も参考にしてみてください。
ダスト材の中で、それぞれの材料ごとに特徴があります。
鉄ダスト
鉄ダストは、粒径が大きいため高周波特性は劣りますが、安価です。
主な用途は、電源ラインのノーマルモードノイズ対策用のチョークコイルです。
センダスト
センダストは、仙台で開発された材料で、仙台の「仙」をとって「センダスト」命名されました。
鉄ダストと比較し、高周波特性が優れるのが特徴です。また直流重畳特性も優れるため、スイッチング電源のチョークコイルとしてよく使用されます。
パーマロイ
パーマロイはMPP(モリブデン・パーマロイ・パウダー)材として使用されています。
MPPは高周波での損失が小さく、また透磁率もダスト材の中では高いのが特徴です。
一方で、レアメタルを含んでいるため非常に高価です。
高周波回路で小型化が必要な場合に使用される材料です。
フェライト材
フェライト材はコイルとして最も使用されている材料です。
酸化鉄の粒子を主原料にして成形するため、形状の自由度が高く、さまざまな形状のコアを作ることができます。
成形プロセスについては「電子部品としてのフェライト」が参考になります。
フェライト材の種類は、ニッケル材とマンガン材に大別されます。
この2種類の材料は、周波数によって使い分けることができます。
ニッケル材
ニッケル材は絶縁性が非常に高いため、100MHz以上の高周波で使用できます。
コイルをコア材に直接巻くこともでき、チョークコイルとしてはバーコアやドラムコアとして使用されることが多いいです。
また別の用途として、ノイズ対策用のフェライトコアとしても使用されます。
いわゆる「クランプコア」と呼ばれるものですね。
マンガン材
マンガン材は、1MHz以下の周波数で使用されます。
主な用途は、スイッチング電源用のトランスやチョークコイルなど多岐にわたります。
ニッケル材と比較して、飽和磁束密度と透磁率が高く、さらに安価であることが特徴です。
ノイズ対策用としては、電源ライン用のコモンモードチョークコイルに使用されています。
箔材
箔材は比較的新しい材料で、様々な用途への展開が図られています。
アモルファス
アモルファスは主に電磁鋼板の置き換えとして、商用トランスで利用されています。
電磁鋼板と同等の飽和磁束密度をもち、かつ損失が少ないことで注目が集まっています。
ファインメット
ファインメットは日立金属が開発した材料です。
アモルファスを改良したもので、透磁率が非常に高いことが特徴です。
用途は多岐にわたりますが、最近ではノイズ対策用のコモンモードチョークコイルとして使用される機会も増えてきています。
おわりに
コイルに使用される磁性材料(電磁鋼板、ダスト材、フェライト材、箔材)の種類と特徴について紹介しました。
材料の概要がつかめれば、どのコイルにどんな材料が適切かわかってくると思います。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。