コンデンサの中でも少し変わった特徴を持つ「3端子コンデンサ」。
この3端子コンデンサは、特に高周波においてインピーダンス特性が優れているということで、小型化が求められるアプリケーションにおいてよく使用されています。
そこで今回は、3端子コンデンサの「構造」や「使用方法」さらには「使用上の注意事項」について解説します。
動画はコチラ↓
3端子コンデンサとは
3端子コンデンサはデカップリング用として使用することを限定しており、直列に2つの端子を接続し、残りの端子を回路に対して並列に接続します。
直列に接続された端子は、電源電流や信号を流すために太い配線パターンで接続されており、一方で3つ目の端子は、寄生インダクタンス ESL が小さくなるよう両側から端子を取り出す構造となっています。
そしてチップ部品のMLCCにおいては、この2枚のシートを次々と積層することで高い静電容量を持ちつつ、低ESL のインピーダンス特性を持ったコンデンサを実現しています。
用途
3端子コンデンサは用途は限られているものの、1つの部品で高周波まで低いインピーダンス特性が得られます。
そのため、2端子のコンデンサよりも少ない部品点数で同等の性能を得ることができ、それが機器の小型化へとつながります。
インピーダンス特性の比較
ここでは「同サイズ」「同容量」のコンデンサでインピーダンス特性を比較してみます。
比較にあたっては、部品メーカーから配布されている「Touchstoneファイル」を使って回路シミュレーションします。
Touchstoneファイルのシミュレーション方法はコチラ↓
今回比較対象とした部品は TDK製のMLCCで、部品サイズは「1608」、定格電圧が「6.3V 」、静電容量は「1uF」としました。
2端子コンデンサ
1MHz 以下の低い周波数においては、全て同じ静電容量ということで、概ね同じようなインピーダンスとなっています。
そこから徐々に周波数が高くなると、赤色の線で表された通常の2端子コンデンサは 6MHz くらいで自己共振によってインピーダンスのピークを迎え、それ以上の周波数においては右肩上がりにインピーダンスが高くなっていきます。
このことから、通常の2端子コンデンサが最もESLが高いということがわかります。
2端子コンデンサ(LW逆)
黄色い線の電極の長手と短手(LW)が逆になった2端子のコンデンサも、12MHzあたりでESLによって自己共振し、そこからインピーダンスが上昇に転じます。
自己共振周波数を求める式は
Fc = 1/2π√LC で表されます。
通常の2端子のコンデンサと比較すると、自己共振周波数が概ね2倍となっているので、このLW(長手と短手)が逆になった2端子コンデンサは、ESL が 1/4 になっているということがわかります。
3端子コンデンサ
黄緑と青の3端子コンデンサのインピーダンス特性を見ると、自己共振周波数が 20MHz以上と更に高い周波数となっています。
これはつまり ESL が小さいということですが、通常の3端子コンデンサとLW(長手と短手)が逆の3端子コンデンサを比較すると、自己共振周波数が若干異なっています。
例えば100MHzにおいては、通常の3端子コンデンサが 20mΩであるのに対して、LWが逆の3端子コンデンサは 10mΩ となっており、このことからLW逆のタイプの ESL が 1/2 程度であることがわかります。
このようにそれぞれの寄生インダクタンス ESL の差は、特に周波数が高くなるほど顕著になっていきます。
そのため高い周波数に対してデカップリングが必要な場合には、それぞれの部品の ESL がどの程度なのかをきちんと把握した上で部品を選定することが重要です。
使用上の注意事項
3端子コンデンサの最大の長所は、寄生インダクタンス ESL が小さいということですが、この 低ESL の特長を活かすために重要となるのが「部品の配置」です。
いくら3端子コンデンサのインダクタンスが小さいと言っても、ICから見たときにインダクタンスが高ければそれによって電源電圧が変動し、十分なデカップリング性能が得られません。
そのためインダクタンスが小さくなるように配線のレイアウトには十分注意する必要があります。
実際どのようなことに気をつければよいかを3つ紹介します。
実装位置
まず何よりも重要なこととして、ICから最短距離に配置するということです。
この中で特に気をつけるべきは、多層基板においてはビアの長さまで考慮する必要がある
ということです。
これは一見するとICの隣に配置されているように見えるコンデンサでも、実は電流の経路として見ると意外と遠いことがあります。
そのためICまでの直線距離ではなく、ビアまで考慮した電流経路の距離として配置する場所を選ぶことが大切です。
ビアの本数
注意事項の2つ目は、GNDに接続する際のビアの本数です。
これは多くのノイズ対策と同様に、多数のビアを使って低いインピーダンスでGND同士を接続する必要があります。
そのため3端子コンデンサの直下には必ず複数のビアを配置して、低いインピーダンスでGND層へ接続するようにしてください。
GND層の配置
注意事項の3つ目は、多層基板において内層のGNDパターンをできるだけ近い位置に配置するということです。
層間の距離が近いほど、互いの磁束が打ち消し合うため配線のインピーダンスが低くなり、3端子コンデンサのデカップリングの効果が高まります。
このデータは、ビアの本数とGND層の距離がそれぞれ異なる条件でのデカップリング効果を比較したもので、ビアの本数が多く、またGND層が近いほどより高い周波数まで高い減衰効果を維持していることがわかります。
このように注意事項のそれぞれ1つずつは、ノイズ対策における基本を踏襲したなのでそこまで難しくはありませんが、実際の設計においてはそれを3次元的に捉えて考える必要があるということで、このあたりが少し難しいポイントになるかと思います。
おわりに
今回は3端子コンデンサの「特長」「インピーダンス特性」「使用上の注意事項」について解説しました。
3端子コンデンサは回路設計していても誰しもが使うという部品ではありませんが、特に高周波においては、用途によっては非常に大きなメリットが得られます。
一方で、正しい配置ができていなければ思ったような効果が得られないため、使用する際には特に電流がどのように流れているかを意識しながら配置を検討するようにしてください。
パスコンの用途はコチラ↓
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。