EMC村の民
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ノイズ対策

トロイダルコイルの設計方法

 

コイルの特性として最も重要なパラメータ「インダクタンス」。

インダクタンスはコイルの形状によって、計算方法が異なります。

以前記事で、空芯コイルのインダクタンスの設計方法を紹介しました。

空芯コイルの設計方法(QucsStudio ) 今回で「QucsStudio」の「Tools」を使った、iNarte 資格試験の回答法の紹介は3回目となりま...

 

今回の記事では、磁性体を使ったコイルとして最もベーシックな「トロイダルコイル」の設計方法について紹介します。

 

インダクタンスの計算方法

まずはじめに結論から。

トロイダルコイルのインダクタンストロイダルコイルのインダクタンス 出典:日経XTECH

 

コア材の透磁率 μ 、磁路長 l 、断面積 S 、コイルの巻数 N をもとにインダクタンスが求まります。

では、この式がどのように導出されるかを考えてみましょう。

 

トロイダルコイルとは

そもそもトロイダルコイルとは、リング状の磁性体にコイルを巻いたものです。

主に電源ライン用のコモンモードチョークコイルとして使用されています。

CMC_wurthコモンモードチョークコイル 出典:Wurth Electronics

トロイダルコイルは磁束がすべて磁性体中を通る「閉磁路」で、かつ磁界の発生方向(右ねじの法則)と同じ形状であるため、効率的に磁界を取り込むことができます。

そのため、コイルとして最も性能が良い形状と言えます。

 

磁気回路

コイルを設計する場合には、「磁気回路」で考えます。

磁気回路とは、電気回路の磁気バージョンです。

電気回路では「オームの法則」があります。

電圧E、電流I、抵抗Rとすると、以下の式になりますね。

 E = I * R

磁気回路にもオームの法則に相当する公式が存在します。

  • 「電圧 E」⇛「起磁力 Fm」
  • 「電流 I」⇛「磁束 Φ」
  • 「抵抗 R」⇛「磁気抵抗 Rm」

よって磁気回路におけるオームの法則は以下の式になります。

 Fm = Φ * Rm

起磁力Fmの単位は【AT(アンペアターン)】、コイルの巻数と電流の積です。

磁束Φの単位は【wb(ウェーバー)】です。

磁気抵抗Rmの単位は上式から【AT/wb】となります。

 

トロイダルコイルの磁気抵抗 Rm は、コア材の磁路長 l と断面積 S から求めます。

Rm = l / (μ * S)

磁気回路磁気回路 出典:ジャズとエンジニア

μはコア材固有の透磁率です。

トロイダルコイルは閉磁路なので、実効透磁率などは考える必要はありません。

さて、これでインダクタンスを計算する準備が整いました。

 

インダクタンスの求め方

トロイダルコイルは磁路中のどの位置にも均一な磁界がかかります。

そのため上記の磁気回路の計算ができていれば、インダクタンス L は容易に求まります。

まず磁束Φを以下のように変形します。

 Φ = Fm / Rm

      = (N * I) / Rm

インダクタンスの定義はWikipediaによると

回路に電流が流れると周囲に磁場が形成される。

巻線に電流 I が流れるときの巻線を貫く磁束 Φ であるときの比例係数 L がインダクタンスである。

ということで、電流に対して発生する磁束の比例係数がインダクタンスです。

 L = 鎖交磁束数 / 電流

  = ∮ / I

鎖交磁束数∮と磁束Φの関係は以下の式で表されます。

 ∮ = N * Φ

よって、インダクタンスは以下のように求まります。

 L = (N * Φ) / I

     = N^2 / Rm

     = (N^2 * μ * S) / l

これで冒頭の計算式に到達しましたね。

トロイダルコイルのインダクタンストロイダルコイルのインダクタンス 出典:日経XTECH

 

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。

磁気回路は毛嫌いしがちですが、そんなに難しい計算をしているわけではありません。

オームの法則が理解できていれば、誰でも計算可能です。

トロイダルコイルはその中でも最も計算が容易なので、例えばノイズフィルタ用のコモンモードチョークコイルを計算する場合などで使用してみてください。

 

コイルの設計方法については【トロイダル・コア活用百科】が非常に参考になります。

 

「コイルの損失の種類」や「フェライトコアの効果的な使用方法」についても紹介しているので、興味のある方はそちらも読んでみてください。

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今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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エンジャー
EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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