ネットワークアナライザで高周波特性を測定するときに必ず必要なもの。
それが校正(キャリブレーション)です。
校正とは
ここでの校正とは、評価対象に対して基準を決めるものです。
例えば、電子デバイスの特性を評価する場合を考えてみましょう。
校正をせずに測定した場合、測定に使用した同軸ケーブルの特性も測定結果に含まれてしまいます。
そうすると評価対象以外の特性が、測定結果に現れることになります。
そうした影響を取り除くために行うのが校正です。
校正を行うと、測定に不要な影響を排除することができます。
今回のケースでは、同軸端で校正を行うことで同軸ケーブルの影響を取り除き、評価対象の特性を正しく測定できます。
校正の種類
校正方法には、「SOLT校正」「TRL校正」などがあります。
今回は、校正の中で最も基本となる「SOLT校正」について紹介します。
SOLT校正とは
SOLTとは、Short(短絡)、Open(開放)、Load(整合)、Thru(伝送)の頭文字をとった略語です。
その略語の通り、同軸端で短絡、開放、整合の特性を測定し、多ポートの場合はポート間の伝送特性も測定することで、基準となるデータを取得します。
実際の校正作業は、同軸ケーブルに校正素子を接続して、順番に測定を行います。
1ポートの校正であれば数分で行うことができますが、4ポート分の構成を行う場合などは20分くらいかかることもあるので割と大変な作業です。
フル2ポート校正
2ポート校正の場合を考えてみます。
反射特性
まずポート1とポート2でそれぞれのポートの反射特性を測定します。
反射特性は、Short(短絡)、Open(開放)、Load(整合)を測定することで求まります。
校正素子は、それぞれ短絡(0Ω)、開放(∞Ω)、整合(50Ω)となっていることが理想です。
しかし、広帯域に渡ってずっと同じ特性を維持することは現実的にはありえません。
そこでネットワークアナライザ付属の校正素子では、特性があらかじめ機器内部に登録されており、そのデータを使用することで理想素子として扱えるようになっています。
フル2ポート校正では、それぞれのポートで校正素子を同軸端に接続→測定→取り外しの作業を行います。
校正素子の接続順序に特に指定はありません。
接続した素子の特性に応じて、ネットワークアナライザの項目を選択すれば大丈夫です。
伝送特性
次に伝送特性の校正です。
これはポート1とポート2の同軸端を、専用のアダプタを使用して接続します。
ここでも同じように専用のアダプタを使用することで、校正素子が理想的な伝送特性を持った素子として扱われます。
アイソレーション特性
最後にアイソレーション特性の校正です。
アイソレーションとはポート間の分離度を表すもので、ダイナミックレンジの大きいデバイスを評価するときに必要となります。
通常のデバイスの評価においては必要ないので、省略することも可能です。
評価対象に応じて実施しましょう。
以上がフル2ポート校正を行うときの一連の流れです。
繰り返しになりますが、けっこう大変です(笑)。
校正時の注意点
以前の記事でも紹介しましたが、コネクタの種類には注意しましょう。
特に PC-3.5 とSMAコネクタは、接続の互換性があるので注意が必要です。
多くのネットワークアナライザ専用の校正素子は PC-3.5 です。
変換アダプタを使用せずに不用意に接続すると、校正素子にダメージを与えてしまいます。
必ずコネクタの形状を確認し、変換アダプタを使用しましょう。
おわりに
今回の記事では、具体的な作業ベースにネットワークアナライザのSOLT校正について紹介しました。
校正そのものの意味を知りたい方はメーカーのアプリケーションノートや論文などで詳細に解説されているので、そちらを参考にしてください。
例えば https://apmc-mwe.org/mwe2018/pdf/tut17/TH5A-2.pdf
はじめは難しいかもしれませんが、繰り返し読むことで理解できていくと思います。
書籍であれば「電磁波計測 ネットワークアナライザとアンテナ」がオススメです。
(2024/12/21 03:57:47時点 Amazon調べ-詳細)
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。