ネットアナ

ネットアナ入門

ネットワークアナライザは、高周波の分野では欠かすことのできない計測器です。

そこで今回は、ネットワークアナライザの入門編として「用途」や「測定原理」について解説します。Sパラメータってなんだっけという方は、事前にコチラの記事をどうぞ。

Sパラメータ入門Sパラメータの入門編として概要について紹介しています。...

動画はコチラ↓

 

 

用途

ネットワークアナライザは、名前の通り回路網を解析するための装置で、とりわけ高周波の分野でよく使用されています。

このネットワークアナライザは、基本的には高周波の振幅と位相をSパラメータとして表すことで回路やデバイスの特性を評価します。

代表的な特性としては以下のものがあります。

  • VSWR
  • 伝送特性
  • 位相特性
  • スミスチャート

VSWR

VSWRは、評価対象(DUT)の反射特性がどの程度なのかを評価するためのもので、ネットワークアナライザにおいては「S11」や「S22」の振幅データをもとに算出されます。

よくアンテナのインピーダンス整合がうまく行っているか見るときに測定するものですね。

伝送特性

伝送特性は、DUTの減衰あるいは増幅の度合いを評価するためのもので「S21」や「S12」の振幅データをもとに算出されます。

こちらは高周波アンプやフィルタの評価によく使用されています。

位相特性

位相特性は、DUTの位相の遅れや進み具合を評価するもので「S21」や「S12」の位相データをもとに算出されます。

位相特性そのものは周波数軸のデータとして表されますが、位相の遅れは時間軸に変換すると信号の遅延に相当するため、伝送線路やアナログ回路の評価によく使用されます。

スミスチャート

スミスチャートは、DUTのインピーダンス整合具合を評価するためのもので「S11」や「S22」の振幅データと位相データをもとに複素平面上に特性が算出されます。

スミスチャートそのものについてはここでは割愛しますが、このチャートをもとにしてインピーダンス整合回路の定数をチューニングしていきます。

その他

ここではネットワークアナライザの代表的な特性をもとに用途を説明しましたが、この他にも差動伝送線路解析やTDR、材料定数測定など様々な評価で使用されています。

ネットアナの用途 出典:ローデ・シュワルツ

そのため高周波の分野で最も幅広い用途で使用される計測器と言われています。

 

 

測定原理

ネットワークアナライザの測定に使用する代表的な部品は「信号源」「パワースプリッタ」「方向性結合器」「受信機」です。

ここではネットワークアナライザの測定原理を「S11」と「S21」を測定する場合で考えてみます。

S11の測定

S11を測定する場合は、信号源からRF信号が出力され、その信号をパワースプリッタによって分離して進行波 a1 を受信します。

そして分離された他方の信号は、ポート1の端子からDUTに入力され、そこからの反射波 b1 をポート1の方向性結合器を介して受信します。

S11はポート1の反射の程度を表すパラメータであるため、反射 b1 / 進行波 a1 がS11の大きさとなります。

S21の測定

S21を測定する場合は、進行波 a1 を受信するまではS11の測定と同じです。

そこからDUTに入力された信号がポート2の方へ抜けていき、透過波 b2 をポート2の方向性結合器を介して受信します。

そして S21 = 透過波 b2 / 進行波 a1 として表されます。

 

大まかな信号の流れとしてはこんな感じです。

Sパラメータは、進行波に対して反射波や透過波の比率を表すパラメータなので、信号の出力ポート側で進行波が必ず測定され、そこから反射波や透過波が測定されるというように理解していればよいかと思います。

パワースプリッタや方向性結合器は、それぞれ信号を分離すためのものです。

パワースプリッタは抵抗を使って1つの信号を2つに分けるもので、方向性結合器は伝送線路の結合、いわゆるクロストークを利用して伝送線路上の進行波あるいは反射波を別々に取り出すことができる高周波用のデバイスになります。

今回はパワースプリッタと方向性結合器がそれぞれ搭載されている図で解説しましたが、ネットワークアナライザのタイプによってはパワースプリッタが搭載されていない方向性結合器だけのネットワークアナライザも存在します。

 

 

キャリブレーション

ネットワークアナライザの測定においてはキャリブレーションは欠かせません。

キャリブレーションは、日本語では校正と呼ばれるもので、ネットワークアナライザでの測定においては測定前に必ずこのキャリブレーションを実施する必要があります。

というのも、ネットワークアナライザは先程の測定原理で見たように、進行波と反射波、あるいは透過波の比率を測定結果として表示しますが、この比率というのはあくまでも相対値(dB)です。

一方で測定担当者は DUTの特性を知りたいわけで、このDUTの特性というのはいわゆる絶対値(dBm)として表されたものです。

そのためネットワークアナライザを使って測定する場合には、測定結果を絶対値として扱えるよう事前に基準となる値を取得する必要があり、その基準値を取得する作業のことを「キャリブレーション」と呼びます。

このキャリブレーションには、基準値の誤差の大きさや誤差を補正する位置、さらには伝送線路の形状によっていくつかの種類に分けられます。

代表的なキャリブレーションの手法

  • SOLT校正
  • TRL校正
  • TRM校正

これらのキャリブレーションを実施することで絶対値での評価が可能になるということを理解していおてください。

SOLT校正の解説はコチラ

ネットワークアナライザでのSOLT校正ネットワークアナライザのSOLT校正について、具体的な作業ベースに紹介しています。...

 

おわりに

ネットワークアナライザは、できることが多い反面、中身についてきちんとした理解がないと正しい測定ができないという、少し敷居の高い計測器でもあります。

実際日頃からネットワークアナライザを使って評価を行っていても、実は測定原理やキャリブレーションの重要性をあまり理解できていないという方は多いと思います。

そのためまずは、評価の基本となる知識への理解を深めることが重要です。

 

一昔前までは、ネットワークアナライザといえば超高級な計測器といったイメージでしたが、最近ではポータブルタイプで、非常に安価な商品も色々と販売されています。

最近では「NanoVNA」が人気です。

機能にもよりますが 5,000円を切るものもあり、非常に安価で驚きですよね。

 

実はこの NanoVNA は、日本の 高橋 知宏 氏 がWEBに公開した回路図が開発のベースとなっており、RFワールド No.52 でも特集が組まれています。

こうした安価なものでも触ってみることでネットワークアナライザに関する理解が深まることは間違いないと思います。

興味のある方は一度チェックしてみてください。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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