前回の記事で「半導体のエミッション規格(IEC61967シリーズ)」の概要について紹介しました。
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今回はその続きとして、半導体のイミュニティ規格の概要と試験方法について紹介します。
半導体のイミュニティ規格の種類
半導体のイミュニティ規格は、対象とするノイズが「連続波(Continues Wave)」か「過渡波(Impulse Wave)」によって2つの規格に分かれます。
連続波によるイミュニティ規格が「IEC62132シリーズ」。
過渡波によるイミュニティ規格が「IEC62215シリーズ」です。
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「IEC62132-1」は「IEC61967-1」と同じく、規格の目的や範囲、評価基板の仕様などが規定されているだけなので割愛します。
同様に、「IEC62132-8(ICストリップライン法)」「IEC62132-9(表面走査法)」「IEC62215-2(同期トランジェント注入法)」についても、試験頻度が低く、情報も少ないため割愛します。
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IEC62132-2(TEMセル法)
小型のTEMセル側面に評価基板を実装し、ICへ連続的な妨害波を印加した時の誤動作の有無を評価する試験方法です。
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小型のTEMセルの側面に評価基板を搭載できるようにし、デバイスのみがセルの内側になるように配置します。
50Ωで終端した状態で妨害信号を入力し、その信号に対する耐性を評価します。
IEC62132-3(BCI法)
車載のイミュニティ規格「ISO11452-4(BCI法)」を半導体のイミュニティ試験に拡張した試験方法です。
ちなみにBCIは「Bulk Current Injection」の略で、Bulk Current (ハーネス上のコモン・モード電流)を Injection(注入)することから名付けられた試験です。
インジェクションプローブから妨害信号を印加し、注入電流をモニタしながらICの誤動作の有無を確認します。
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車載のBCI試験と同様に、周波数が高くなる(波長が短くなる)につれてワイヤーハーネスの長さや束ね方、プローブの位置が試験結果に影響を与えます。
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IEC62132-4(DPI法)
DPIは(Direct RF Power Injection)の略で、容量性結合でRF妨害波を印加してデバイスのノイズ耐性を評価する試験方法です。
DPI法はエミッション規格の中で紹介した欧州車載向けのEMC共通仕様書「BISS」の中でも規定されています。
この試験は、周波数毎に試験レベル(電力)を段階的に上げていき、その度にデバイスの性能を確認するため非常に手間がかかります。
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そのため、テスト工数を削減するためのソフトウェアも販売されています。
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「デンソーテクニカルビュー」では、DPI法で印加したノイズを基板上で可視化し、デカップリング・コンデンサのノイズ対策効果を検証する研究も発表されています。
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半導体のイミュニティ試験で最も頻度の高い試験と言えます。
電磁波ノイズの可視化について興味があれば、以下の記事を参考にしてください。
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IEC62132-5(WBFC法)
エミッション規格(IEC61967-5)とノイズの向きが反対になった試験方法です。
コモンモードノイズを印加し、評価基板のグランド電位を変動させてデバイスのの誤動作の有無を評価する試験方法です。
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IEC62215-3(非同期トランジェント注入法)
半導体のイミュニティ試験で唯一の「過渡波(Impulse Wave)」による試験方法です。
試験のセットアップは IEC62132-4(DPI法)と同じです。
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おわりに
半導体のイミュニティ規格の概要と試験方法について紹介しました。
まだまだ認知度が低く、実施される機会が少ない試験ですが、車載分野やセキュリティ分野を中心に今後重要性が高くなってくる試験です。
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規格関連の情報収集は基本的には規格書です。
「CISPR」や「IEC」関連の規格書は「IECウェブストア」から購入可能です。
半導体のEMC試験の情報は日本語では「JEITA」が中心です。
海外ではいくつか書籍も販売されています。
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EMC全体がテーマの書籍ですが、その中で半導体のEMCについても記述されています。
興味があればチェックしてみてください。
またEMC関連の情報収集テクニックを以下の記事で紹介しています。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。