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EMC規格

半導体のエミッション規格(IEC61967シリーズ)の概要紹介

 

EMC試験に携わっている方の多くは、完成品(装置)またはモジュール(電子基板)として「CISPR規格」や「IEC規格」に則って試験されている方がほとんどかと思います。

しかし近年、これらの試験だけでEMC性能を達成するのは不十分で、デバイス(半導体)についてもEMC試験を要求される機会が増えてきています。

その動向に合わせて「IEC規格」においても半導体のEMC規格が策定され、特に欧州のメーカーを中心に半導体のEMC試験が実施されつつあります。

 

そこで今回の記事では、半導体のエミッション規格(IEC61967シリーズ)の概要と試験方法について紹介します。

 

半導体のEMC規格の成り立ち

電子機器のEMC対策は、半導体の高速化・高集積化・高機能化等により年々難しくなってきています。

ノイズ対策部品を追加したり基板の再設計したりするなど、試行錯誤によってノイズ対策を行いますが、それに伴って機器開発コストや製造コストが上昇します。

 

そうした背景のもと、これらの試行錯誤を減らすための施策として「半導体のEMC試験」の必要性が語られるようになりました。

特にEMC性能の要求レベルが高い車載電子機器に関しては、半導体部品の選定における評価項目として「機能」「コスト」「サイズ」の他に「EMCレベル」も挙げられるようになってきています。

 

半導体のEMCレベルはデバイスによって様々ありますが、従来は半導体デバイス共通の試験方法がなかったため、ユーザーはどのデバイスのEMC性能が良いのかを見極めることは非常に困難でした。

そこでIECが国際規格として「半導体のEMCレベルの試験方法」を規定し、デバイスのEMC性能が比較できるようになりました。

 

半導体のEMC試験のエミッション規格は「IEC61967シリーズ」として、複数の試験方法が規定されています。

それぞれの試験方法は、ノイズの種類によって「放射」と「伝導」に分類されます。

以下で、それぞれの規格について解説します。

 

IEC61967-1(一般条件と定義)

シリーズ共通規格として「規格の目的および範囲」「基本となる規格と用語定義」「試験条件」「試験装置」「試験準備」「試験手順」「試験報告書」「標準試験基板の仕様」「各測定法の比較表」などから構成されています。

標準試験基板は、異なるデバイス間の比較を可能とし、再現性のあるデータを確保するため、また共通の基板を用いて複数の試験によって評価できるようになっています。

ただし、各測定法はそれぞれ測定の目的や測定対象が異なるため、必ずしも1枚の試験基板ですべての測定を行えるわけではありません。

 

IEC61967-2(TEMセル法)

小型のTEMセル外壁の角穴にセル外部から試験基板の表層グラウンド面(DUT側の面)を密着させて、デバイスのみがTEMセル内に露出するようにしてデバイス自体からの直接放射を測定します。

近接した回路などへの直接結合、つまり近傍界の評価となります。

電子機器の高速高周波化に対応して、GTEMセルを利用してGHz帯への対応も可能となっています。

IEC61967-2 評価事例 出典:パナソニック

 

IEC61967-3(表面走査法)

デバイスの近傍界を磁界プローブおよび電界プローブで表面走査する試験方法です。

ただし、技術的記述が不十分であるため形骸化している印象です。

ほどんど使用されることはありません。

 

IEC61967-4(1Ω/150Ω法)

1Ω法は、デバイスのグラウンドのリターン配線に1Ω抵抗を直列に挿入し、電圧降下から電流値を測定する方法です。

IOポートにおいては、線路のインピーダンスを150Ωに設定してグランドとの電位差を測定する150Ω方が適用されます。

IEC61967-4 出典:JEITA

この試験方法は、Bosch社、Infineon社、Siemens社(現 Continental社)が策定した半導体EMC試験に関する共通仕様書「BISS」にも採用されており、特に欧州車載分野ではいわゆるデファクトとして広く実施されています。

BISSの内容は、ZVEIの「Generic IC EMC Test Specification」で公開されています。

ただし試験方法に関して、消費電流が大きいデバイスにとって1Ωの抵抗が通常動作に対して影響があると考えられ、またプローブ自体のインピーダンスが高周波になるほど1Ωからずれるなど、いくつかの課題があると言われています。

JEITAのワーキング活動で、課題の検証が行われているの興味のある方はチェックしてみてください。

http://semiconjeitassc.jeita-sdtc.com/spt/sc_pg/emc/iec61967-4.php

 

IEC61967-5(WBFC法)

フィルター機能を持つ入出力のケーブル備えた金属製のボックス(ファラデーケージ)中に試験基板を配置し、その基板のグランドの電圧変動、つまりコモンモードノイズ電圧を評価する試験方法です。

IEC61967-5 出典:JEITA

使用される機会は少ない試験方法ですが、東陽テクニカからこの試験方法を応用したファラデーケージが販売されています。

https://www.toyo.co.jp/emc/products/detail/id=1158

 

IEC61967-6(MP法)

デバイスの電源系ラインや信号ラインの高周波電流を磁界プローブにより非接触で測定する試験方法です。

プローブ出力電圧とプローブ固有の校正係数から鎖交する磁界強度を求め、基板厚さを含む配線構造で決まる変換係数により磁界から電流値に変換します。

IEC61967-6 出典:JEITA

この試験方法もJEITAのワーキング活動で、検証が行われています。

http://semiconjeitassc.jeita-sdtc.com/spt/sc_pg/emc/iec61967-6.php

MP法は高周波電流を精度よく測定できるため応用範囲も広く、「電磁波ノイズを可視化する方法」の中で紹介した「スキャナー方式」もその中の1つです。

電磁波ノイズを可視化する方法 ノイズ対策では、発生源および伝播経路を特定することが大切です。 そして、そのためのツールとして「ノイズ可視化システム」があ...

 

IEC61967-8(ICストリップライン法)

デバイスからの直接的な放射エミッションをストリップラインとグランド間に発生する電圧で評価する試験方法です。

ストリップラインは基板(グランド面)に対して、特性インピーダンスが50Ωに整合されており、評価するデバイスの直上に配置します。

IEC61967-8 出典:JEITA

この試験方法も使用される機会は少ない印象です。

 

おわりに

半導体のエミッション規格(IEC61967)の概要と試験方法について紹介しました。

このうち、実際のEMC試験として使用されているのは「TEMセル法」「1Ω/150Ω法」「MP法」が多い印象です。

 

半導体のEMC性能は、自動運転やロボットの普及に伴いますます重要となります。

実務の中で関連する機会も増えてくると思いますので、まずは必要な試験方法から順次勉強してみてください。

 

他のEMC規格についても別の記事で紹介しています。

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今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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エンジャー
EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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