高周波の回路では、インピーダンスの整合具合を表す指標として「反射係数」「リターンロス」「VSWR」といった特性があります。
そこで今回はこれらの特性の意味や負荷のインピーダンスとの関係性について解説します。
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反射係数
反射係数は、入射波に対する反射波の比を表したもので、ネットワークアナライザを用いて「S11」として表されます。
S11は、入射波 a1 と 反射波 b1 の比を取ったものなので、まさにこれは反射係数そのものですね。
そしてこの反射係数を伝送線路の特性インピーダンス Z0 と負荷のインピーダンス ZL の関係性として表すと
反射係数 Γ = (ZL – Z0) / (ZL + Z0) となります。
例えば同軸ケーブルの先端に以下のの負荷を接続したとします。
- 0 Ω(ショート)
- 1 Ω
- 50 Ω
- 100 Ω
- 1 kΩ
- 1 MΩ(オープン)
するとそれぞれの反射係数は、図のようになります。
青色の線の 50Ω負荷の場合、特性インピーダンスと負荷のインピーダンスが等しいため反射係数が 0 となります。
次に黄色の 1Ωと 緑の 100Ωを比較します。
どちらのも特性インピーダンスとの差はだいたい50Ωですが、100Ωの方が Γ=0.333 と3割程度の反射であるのに対して、1Ωの方は Γ ≒ 1 とほぼすべての信号が反射しています。
これはつまり、反射係数を小さくするためには特性インピーダンス 50Ωとの差ではなく、50Ωとの比の方が重要ということを意味しています。
そして極端に高いインピーダンス1kΩ や 1MΩ になると、0Ω や 1Ωのときと同じように反射係数が概ね 1、つまり全ての信号が反射することとなります。
このように反射係数は、特性インピーダンスと負荷のインピーダンスの関係性を表すものとして、それぞれのインピーダンスの比に応じて大きくなったり小さくなったりします。
リターンロス
リターンロスは反射係数をデシベルで表したものになります。
反射係数の方はあくまでも係数ということで、反射の目安として使われるものですが、実際の設計においては信号がどの程度の強度になって戻ってくるかが重要で、そのときに使用するのが「リターンロス」です。
リターンロスは損失を表すため先頭にマイナスの符号が付いて
RL = -20 * Log10 |Γ| で表されます。
様々な負荷ごとにリターンロスの大きさを表すと
50Ωの場合、反射波がほとんど生じないためリターンロスは大きくなります。
このあたりは感覚的に違和感を覚えるかもしれませんが、リターンロスが大きいほど反射が小さいということを意味します。
100Ωの場合は、反射係数が 0.333、つまり3割程度反射するということなので、リターンロスはおおよそ 10 dBとなります。
そこから更に高いインピーダンス、あるいは極端に低いインピーダンスの場合は、信号がほとんど反射するためリターンロスはほぼ 0 となります。
このようにリターンロスは、反射係数をデシベルにしてさらに負の値を取ったものなので、負荷のインピーダンスとの関係としては反射係数と反対の性質を示します。
特性インピーダンスと負荷のインピーダンスが整合するほどリターンロスが大きくなり、反対に負荷のインピーダンスが特性インピーダンスから離れていくほどリターンロスが小さくなります。
VSWR
VSWRは「Voltage Standing Wave Ratio」の略で、日本語では「電圧定在波比」と訳されます。
定在波というのは入射波と反射波の合成によって生じる波で、入射波と反射波が足し合わされたり、あるいは打ち消し合ったりするためその大きさは常に変化します。
そしてVSWRは、この定在波の最小値と最大値の比を取ったもので、反射係数 Γ をもとにVSWR = (1+|Γ|) / (1-|Γ|) としてその大きさを計算することができます。
例えば負荷インピーダンスが 100Ωの場合、反射係数 Γ = 0.333 となっていましたが、このときのVSWRは VSWR ≒ 2 となります。
負荷のインピーダンスが 50Ωの場合は、反射係数が 0なので、VSWRは 1となり、これが完全にインピーダンスマッチングした状態を表しています。
VSWRから負荷のインピーダンス、あるいは反射係数が推測できると、性能の良し悪しをパッと判断できるようになるので、余裕のある方は覚えておくと良いかと思います。
例えばEMC試験では VSWR < 1.5 であることが要求されますが、VSWR < 1.5 となるのは、反射係数が 0.2以下で、負荷のインピーダンスは 33.4Ω ≦ ZL ≦ 75Ω となります。
おわりに
今回は高周波に関わる反射特性として「反射係数」「リターンロス」「VSWR」について解説しました。
この3つの特性は、それぞれ相互に変換することが可能で、場面場面で使い分けることになるので計算方法についても覚えておくと良いかと思います。
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それぞれの特性の意味はもとより、回路シミュレーションを使って、実際にどのような回路で動くのかも理解できるようになっています。
Sパラメータの基本はコチラです。
今回は以上です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。