ノイズ対策

スイッチング電源のノイズ対策を考える

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多くの電子機器で利用されるスイッチング電源。

最近はUSB充電の機器が増えたことで、ますます色々な場面で使用されています。

そんなスイッチング電源は、EMC的な観点で見るとノイズの塊で非常に厄介な存在です。

そこで今回の記事では、スイッチング電源内部のノイズ対策について考えてみます。

動画はコチラ↓

 

ノイズの伝搬モード

ノイズには「ノーマルモード」と「コモンモード」の2種類のノイズが存在します。

スイッチング電源においては、ノーマルモードノイズは電源線の「L-N間」、コモンモードノイズは「LとN-E間」に流れるノイズです。

言葉にすると分かりづらいので、図で見てみましょう。

ノイズ対策の部品は、それぞれのノイズの流れ方ごとに作用するので、まずノイズのモードを見極めなければ、ノイズ対策の効果が得られないということがわかります。

 

 

ノイズフィルタ設計の考え方

スイッチング電源のノイズ対策は、多くの場合「ノイズフィルタ」を使用します。

ノイズフィルタは外付けタイプもありますが、電源基板に組み込むことが一般的です。

ではフィルタ回路をどのように設計するか?

そこで先程のモードの考え方に立ち返ります。

スイッチング電源のノイズ対策では、周波数にだけ着目しても適切な効果が得られません。

ノイズの伝搬モードごとにフィルタ回路を設計する必要があります。

フィルタは「LCフィルタ」で構成することが一般的です。

フィルタの「カットオフ周波数」と「次数」をノイズの伝搬モードごとに決定します。

ノイズフィルタ構成ノイズフィルタの構成 出典:村田製作所

 

コンデンサの選び方

ノイズの伝搬モードごとに、対策に使用するコンデンサの呼び名が変わります。

  • ノーマルモード用のコンデンサ 「Xコンデンサ」
  • コモンモード用コンデンサ  「Yコンデンサ」

Xコンデンサは容量の大きいコンデンサが使用される傾向にあります。

おおよその目安としては ” 0.1uF ~ 10uF ”です。

容量が大きいので、ノーマルモードノイズのうち「1MHz以下」の低周波ノイズによく効きます。

Yコンデンサは漏れ電流を発生させるため、大きな容量のコンデンサを使用することはできません。

” 1000pF ~ 4700pF ”程度のものがよく使用されます。

容量が小さくなるので低周波にはあまり効果がなく、コモンモードノイズのうち「1MHz以上」の高周波ノイズによく効きます。

ただし高周波ノイズなので、接地のパターンが長いと効果が薄くなるのでアートワークには注意が必要です。

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コイルの選び方

スイッチング電源用のノイズフィルタでコイルは主に「コモンモードチョークコイル」として使用されます。

名の通り、「コモンモードノイズ」対策用です。

コイル自体は「インダクタンス」が高いものが好まれますが、容量が大きいスイッチング電源では巻線が太くなるので、そこまでインダクタンスを高くできないことがあります。

おおよその目安は” 0.1mH ~ 10mH ”です。

コモンモードノイズに対して、Yコンデンサは高周波(1MHz以上)に効果的な部品なので、コモンモードチョークコイルは低周波ノイズ(1MHz以下)用として期待されます。

このことからも「インダクタンス」は高いほうがいい、ということわかります。

 

おわりに

スイッチング電源のノイズ対策の考え方について紹介しました。

電源基板に組み込む「LCフィルタ」は、「ノーマルモードノイズ」と「コモンモードノイズ」それぞれに作用するような回路構成をとることが重要です。

また周波数帯を「低周波」と「高周波」に分けて、それぞれで最適な部品の定数を選定することも忘れないでください。

それぞれの部品が特性にどのような影響を与えているか理解できれば、ノイズ対策は非常に楽になります。

最初は試行錯誤でいいので、ノイズフィルタの作用を考えながら検討してみてください。

継続していけば、必ずノイズ対策のスキルが身につきますよ。

 

具体的な「フィルタ回路」の設計方法を知りたい方は、森田先生の「AC入力1次側の設計」が参考になると思います。

電源の1次側の設計に関わる一般的な「知識」はもちろん、規格適合に向けたノイズ対策の「ノウハウ」や「テクニック」が惜しみなく紹介されています。

また部品選定においても、例えばコイルの「巻き方」による寄生容量の低減方法や、「磁気飽和」「電磁結合」など電源固有の問題への対処方法など、実践で取り入れられる「ノウハウ」が満載です。

電源設計に関わる全ての方に、役立つ一冊と言えるでしょう。

 

今回は以上です

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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