この記事ではインピーダンス測定の必要性と3つの測定手法について解説しています。
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インピーダンス測定の必要性
電子部品のインピーダンス特性は、高周波や高速信号を扱う回路において非常に重要です。
インピーダンスとは
そもそもインピーダンスというのは交流における電流の流れにくさを表したものです。インピーダンスの詳細は以下の記事で解説しています。
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電子部品のインピーダンス特性は縦軸にインピーダンス、横軸に周波数をとったグラフで表され、各電子部品とも異なるインピーダンス特性を持ちます。
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しかしながら周波数が高くなると、上に示したような単純なインピーダンス特性を示さなくなってしまいます。
寄生成分による影響
その原因は、各電子部品に寄生成分が存在するためです。
例えばコンデンサにおいては、リード線や端子部に存在する寄生インダクタンス、更にはコンデンサ内部で生じる損失に起因した寄生抵抗などの影響があります。
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周波数が高くなると寄生成分の影響がさらに顕著となり、電子部品に規定されている定数とは全く異なるインピーダンス特性を示します。
そのため電子部品の正しいインピーダンス特性を知るためには、実際にインピーダンスを測定する必要があります。
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自動平衡ブリッジ法
100MHz以下の周波数帯のインピーダンス測定には「自動平衡ブリッジ」という手法が用いられます。自動平衡ブリッジ法は周波数帯域が広いことに加えて、インピーダンスレンジが広いという特徴を持ちます。
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インピーダンスレンジというのは10%の確度で測定可能なインピーダンスの範囲を表したもので、自動平衡ブリッジでは 1mΩ ~ 100MΩの範囲を高い精度で測定できます。
一方で短所としては高い周波数が測定できないことが挙げられます。
測定原理
この原因は自動平衡ブリッジ法の測定原理に起因しています。自動平衡ブリッジ法は、基本的にオペアンプを用いた反転増幅回路を応用したものです。
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自動平衡ブリッジ法では、オペアンプの反転入力端子と信号源の間に測定対象物(DUT:Device Under Test)を接続します。
この自動平衡ブリッジの回路で周波数帯域を制限するものはオペアンプの周波数特性です。オペアンプは周波数が高くなるほどゲインが低下する性質を持っており、自動平衡ブリッジにおいては測定可能な周波数帯域の制限につながっています。
一方で、帰還抵抗の値を調整することによってオペアンプに様々なゲインを持たせることが可能で、それによってインピーダンスレンジを広く取れるという特徴があります。
オペアンプの特徴や反転増幅回路の原理については、以下の記事で解説しています。
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RF-IV法
RF-IV法は 1MHz~ 数GHzの周波数帯に適したインピーダンス測定手法です。
周波数帯域とインピーダンスレンジのどちらもどちらもそこまで広くないですが、GHz帯を含む高い周波数まで測定できることが特徴です。
測定原理
RF-IV法では、広帯域トランスの2次電圧をもとにDUTに流れる電流を求めます。
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具体的にはトランスの2次側には1次巻線の電流に応じた2次電圧が発生し、この2次電圧と負荷抵抗Rとの比からDUTに流れる電流を求めます。
このRF-IV法において重要な点は、1次側の信号源から見たときの2次側の負荷がインピーダンス整合していることです。インピーダンス整合することで反射の影響を小さくすることができ、それが測定帯域とインピーダンスレンジの向上に繋がります。
インピーダンス整合の詳細は、以下の記事で解説しています。
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Sパラメータ法
Sパラメータ法は名前からもわかる通り、ネットワークアナライザを用いたインピーダンス測定の手法です。
このSパラメータ法にはDUTの設置方法と測定パラメータによって反射法、シリーズスルー法シャントスルー法の3つの手法に分類されます。
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反射法
反射法はネットワークアナライザのS11のパラメータをもとにして、インピーダンスを求める手法です。
S11自体が反射係数、つまりインピーダンスの整合度合いを表すもので、基準インピーダンス(50Ω)との比に応じて値が変化する性質があります。そのためこの反射係数から逆算してDUTのインピーダンスを求めることができます。
反射法は基準インピーダンスとの比からインピーダンスを求めるという性質上、50Ω付近(1Ω ~ 数kΩ)では高い精度で測定できますが、インピーダンスが高すぎたり、低すぎたりすると測定精度が低下します。
シリーズスルー法
シリーズスルー法はネットワークアナライザのS21をもとに、インピーダンスを求める手法です。S21の減衰量が大きいほどインピーダンスが高くなります。
このシリーズスルー法は比較的インピーダンスが高いDUTに適した測定手法で、コイルのインピーダンス測定によく用いられます。
測定確度の高いインピーダンスレンジは5 Ω ~ 数10 kΩとなっており、ちょうどフェライトコアやCMCのインピーダンスレンジとも一致します。
シャントスルー法
シャントスルー法もネットワークアナライザのS21をもとに、インピーダンスを求める手法です。ただし、DUTの接続方法がシリーズスルー法とは異なり、伝送線路とGND間にDUTを配置します。
このシャントスルー法は主にコンデンサに適用される測定手法で、インピーダンスの低いDUTに適した測定手法です。
インピーダンスレンジとしては 1mΩ以下の領域にも対応しており、コンデンサの共振周波数における抵抗値(ESR)を測定するのにも最適と言えます。
インピーンダンスレンジの違い
このSパラメータの3つの測定手法「反射法」「シリーズスルー法」「シャントスルー法」はそれぞれで得意な測定範囲が異なります。
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低インピーダンスはシャントスルー法、50Ω近辺は反射法、高インピーダンスはシリーズスルー法というように分類できます。
おわりに
インピーダンス測定の必要性と各測定方法の特徴について解説しました。
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この記事で、インピーダンス測定の重要性や測定方法の使い分けについて理解できたかと思います。
ただし、実際にインピーダンス測定してみるとキャリブレーションの正確さや周辺物との不要な結合など、高周波特有の難しさがあります。このあたりの難しい点については、実際に測定しながら徐々に勘所が掴めてくるので、まずは色々な周波数帯でインピーダンス測定を試し見ることが大切です。
なお測定に使用する機器については「NanoVNA」 や 「Analog Discovery2」 などの安価なもので問題ないので、ぜひインピーダンス測定にチャレンジしてみてください。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。