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伝導イミュニティ試験における注意点【IEC61000-4-6】

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伝導イミュニティ試験(IEC61000-4-6)において、CDNの終端箇所を読み解くことが難しく、迷ったりすることが多いかと思います。

そこでこの記事では、伝導イミュニティ試験で 50Ω終端をどの CDNに入れるべきかについて解説します。

 

CDNとは

CDN(Coupling Decoupling Network)とは、意図的にノイズを結合させたり、外部からのノイズの侵入を低減させたりするものになります。

CDNは LISNのようにインピーダンスを一定にする働きも持ち、多くの場合はコモンモードインピーダンスが150Ωになるように設計されています。

伝導イミュニティ試験では、ノイズを注入するために CDNを使用します。

CDNの種類

そしてCDNには、挿入対象となるケーブルによっていくつか種類が分類されます。

このCDNは「-」の後のアルファベットによって種類が分かれており、「M」が電源ライン用、「S」がシールド線用、「T」が平衡線用、「Af」が不平衡線用となっています。

またその後に続く「x」は端子数を表しており、「2」の場合は2つの端子、「3」の場合は3つの端子を持つことを意味します。

 

 

ノイズの注入方法

伝導イミュニティ試験(IEC61000-4-6)においては、CDNを用いてノイズを注入する他に、EMクランプを使ってノイズを注入することもあります。

これら2つの注入方法は、規格の中で定義された以下のフローに則ってどちらの方法を適用するか判断します。

基本的には CDNによる注入が優先されますが、CDNを使用できない場合には「EMクランプ」を使ってノイズを注入します。

 

EUT単体

ここでは最も利用頻度の高い電源ライン用の「CDN-M」をもとにして、50Ω終端の挿入箇所について解説します。

単相2線式 フレームグランド(FG)なし

単相2線式で、かつ EUTにフレームグランドが無い場合には、EUTの電源ラインに「M2」のCDNを挿入し、そこからノイズを注入します。

このとき、他に CDNが存在しないため終端することはできません。

注入されるノイズは、CDNから EUTへと流れていき、そこからグランドプレーンに対して浮遊容量を介して流れることになります。

このセットアップでは、特に低い周波数において浮遊容量のインピーダンスが高くなる傾向にあり、そのために EUTへ印加される電圧が低くなる可能性があります。

(※伝導イミュニティ試験は、150Ωの治具を使った校正結果に基づいて試験電圧が規定されていますが、EUTに印加される電圧や電流については規定されていません)

単相2線式 フレームグランド(FG)あり

EUTにフレームグランドが存在する場合は、フレームグランドとグランドプレーンを「M1」を介して接続します。

そして「M1」のCDNに対して 50Ω終端を接続します。

この場合、CDNから注入されたノイズは、EUT→ 50Ω終端→ グランドプレーンの順に流れていきます。

50Ω終端を接続することによって、ノイズ注入源から見たコモンモードインピーダンスが 150Ωとなります。

 

 

周辺機器(AE)あり

周辺機器(AE:Auxiliary Equipment)がある場合は、CDNの数が増えるため試験配置が若干複雑になります。

EUT:FGなし AE:FGなし

EUT、AEともに FGがない場合は、AE側の CDNに対して 50Ω終端を接続します。

この場合、ノイズは EUT側の CDNから、EUT → 通信ケーブル → AE → AE側のCDN へと流れていきます。

ただしこのセットアップにおいて、AEが誤動作する場合には通信ケーブルに対して EMクランプを挿入することができます。

EMクランプを使用する場合には、EMクランプと AE側の CDNの両方に 50Ω終端をを接続します。

EUT:FGあり AE:FGなし

EUTにのみ FGが存在する場合は、FGに使用する「M1」の CDNに対して 50Ω終端を接続します。

終端可能な CDNが複数存在する場合、アース端子を含み、かつ端子数の少ないものから優先的に 50Ω終端を接続していきます。

つまり「M1」が他のどの CDNよりも優先的に終端され、次いで「M3」「M4」「M5」、そして最後に「M2」という順で終端することになります。

なおこのセットアップにおいても AEが誤動作する場合には、通信ケーブルに 50Ω終端を接続した EMクランプを挿入します。

EUT:FGなし AE:FGあり

AEにのみ FGが存在する場合は、AEに接続された「M1」に対して 50Ω終端を接続します。

50Ω終端の優先順位については、先ほど説明したとおりです。

EUT:FGあり AE:FGあり

EUTと AEそれぞれに FGが存在する場合は、EUT側の「M1」に 50Ω終端をを接続します。

ここでも基本的な考え方は先ほどまでと同じで、アースを含む端子数の少ない CDNの優先順位が高くなります。

また EUTと AEでは、EUTの方が優先順位が高くなります。

 

クランプ注入

EMクランプを使ってノイズを注入する場合、50Ω終端を2箇所に接続します。

この理由は EMクランプからノイズ注入する際に、ノイズ電流が流れるための閉回路(ループ)が必要になるためです。

EUT:FGなし AE:FGなし

EUTと AEのどちらにも FGがない場合は、それぞれの「M2」に対して 50Ω終端を接続します。

EUT:FGあり AE:FGあり

それぞれに FGが存在する場合は、「M1」に対して 50Ω終端を接続します。

終端の優先順位の考え方は、CDN注入のときと同じです。

EUT:FGあり AE:電源なし

AEがキーボードなどの電源ラインを有さないもので、かつキーボードのような人の手で触れて操作するものの場合、CDNの代わりに疑似手(550Ωの抵抗+220pFのコンデンサ)を使って終端することもあります。

 

 

おわりに

今回は、伝導イミュニティ試験(IEC61000-4-6)における終端の考え方について解説しました。

終端の接続位置については、EUTの構成によってはかなり複雑になることもありますが、アース端子を含み、かつ端子数の少ないものから優先的に接続することと理解しておけば、ほとんどの場面で対処できるかと思います。

なお伝導イミュニティ試験(IEC61000-4-6)の規格の概要については、以下の記事で解説しています。

伝導イミュニティ試験【IEC61000-4-6】の概要伝導イミュニティ試験「IEC61000-4-6」の概要について紹介しています。...

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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