EMCの資格には「iNarte EMC Engineer 」と「iNarte EMC Technician」があります。
約20年前からKECによって運営されてきていた資格試験ですが、試験内容としてはEMC試験所の技術者寄りとなっています。
しかしEMCの技術分野を考えると、計測だけでなくEMC設計やノイズた対策といったことも実務では重要です。
そこで「設計技術」と「対策技術」にフォーカスを当てた、設計技術者向けの資格試験として「EMC設計技術者資格(EMC Design Engineer)」が設立されました。
今回の記事では、EMC設計技術者資格の概要と勉強方法について紹介します。
資格概要
EMC設計技術者資格は、KECと iNarteが2011年に共同で創設した技術資格です。
資格は「EMC設計技術者」と「EMCシニア設計技術者」の2種類に分かれています。
「EMCシニア設計技術者」は「EMC設計技術者」の資格を取得してから3年の実務経験を経て受験可能となります。
つまり、資格の中で上位、下位の関係があるということです。
オープンブック形式でありながらも当初は自作ノート1冊しか許可されていませんでした。
しかし、現在は条件が変更されて iNarte資格試験と同じくすべての参考図書が持ち込めるようになっています。
(もちろん関数電卓やPCもOKです。)
資格設立の趣旨にもあるように、設計技術者向けの試験であるため、出題分野も iNarte資格試験とは若干異なります。
試験所としての運営、試験方法、規格といった内容が対象外となっています。
一方で、「伝送線路」「シグナルインテグリティ」「パワーインテグリティ」「シミュレーション」「ノイズ対策部品」などの内容に重点が置かれています。
シニア設計技術者はこれらの内容で、さらに専門性が高くなります。
合格率は年度によって多少のばらつきがありますが、概ね50%程度です。
受講者は普段から設計に携わっている方が多いためか、iNarte資格試験よりも合格率は高いですね。
勉強方法
iNarte資格試験のように受験対策本はありませんが、KECからいくつか練習問題が提供されています。
https://www.kec.jp/wp/img/committee/2019/emcde19_005.pdf
まずはこの練習問題で現在のレベルを確認して、どの分野から勉強していくべきかを考えるのが良いと思います。
勉強方法としては、KECから参考図書が挙げられています。
https://www.kec.jp/wp/img/committee/2019/emcde19_004.pdf
しかし絶版となっている図書も多く含まれているので、ここでは個人的におすすめの書籍を紹介していきます。
ノイズ解決の早道六法
EMC設計の概要を掴むにはコレ。
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以前の記事でも紹介しましたが、EMC設計に関する網羅性が高いので試験時に使いやすい一冊です。
高速デジタル信号の伝送技術
伝送線路について専門的に勉強するには「高速デジタル信号の伝送技術」。
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伝送線路はこの一冊勉強すれば十分といったくらいの内容になっています。
実務で使用できることも考えれば、必携の1冊と言えると思います。
パワーインテグリティのすべて
EMC設計技術者で新たに加わるパワーインテグリティに関しては「パワーインテグリティのすべて」がオススメです。
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翻訳書でありながらも、訳に違和感がなく、構成も非常に見やすくなっているため、取っ掛かりにくい分野でありながらもスムーズに読みすすめることができます。
専門性も非常に高いので、EMC設計技術者試験で活躍してくれる一冊です。
電子機器設計者が知りたい電子部品の故障原因とその対策
電子部品に関する知識も問われます。
特に寿命や故障モードなど設計において重要な知識はしっかり勉強しておくべきです。
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少し古い書籍ですが、普遍の内容を学ぶことができるのでオススメです。
電子部品の信頼性評価・解析ガイドブックシリーズ
電子部品の評価も含めて実践的な知識を習得したければ「電子部品の信頼性評価・解析ガイドブックシリーズ」。
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その他の分野に関しては iNarte資格試験と同じ参考書で対処できると思います。
以下の記事で紹介しているので、チェックしてみてください。
おわりに
EMC設計技術者の概要と勉強方法について紹介しました。
今回紹介した勉強方法の他にも、KEC主催のセミナーに参加する方法もあります。
講座ごとに受講できるので、興味がある内容だけ参加するのもアリだと思います。
(通年で10万円は正直高いので)
試験時期は iNarte資格試験と同じく11月です。
1年間じっくり勉強していけば十分合格可能な試験ですので、興味のある方は是非チャレンジしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。