EMC

電磁波の種類と人体への影響

昨今は5Gをはじめとして無線通信が普及したことで、電磁波の人体への影響に関する話題が増えてきています。

そこでこの記事では、工学的な観点から電磁波の「種類」と「人体に与える影響」について解説します。

 

電磁波とは

電磁波は、電界Eと磁界Hが相互に作用して伝達する波(エネルギー)のことです。

この電磁波は「光の速さc」と「波長λ」をもとに、1秒間に振動する回数「周波数」を求めることができます。

そして電磁波の種類には、一般的に電磁波として認識されれている「電波」はもちろんですが、「赤外線」や「可視光線」「X線」などもあります。

出典:新潟大学

これらの電磁波は、周波数(波長)によってそれぞれ違った用途で活用されています。

電波

電波は、テレビをはじめとした「放送波」やパソコンやスマホに搭載されている「無線通信」、さらには電子レンジなどの「電磁調理器」など、身近な生活の中でも幅広い用途で利用されています。

赤外線

赤外線は、リモコンをはじめとした「赤外線通信」で利用されている他にも、保温や加熱のために利用されることもあります。

ちなみに赤外線による発熱は、赤外線が熱エネルギーを持つためではなく、赤外線の周波数と分子の振動数(周波数)が一致しているために発生する現象で、赤外線によって分子の運動が促進され、その運動エネルギーによって発熱が生じます。

可視光線

可視光線は、電磁波のうちヒトの目で見える波長のもので、いわゆる光と呼ばれるものになります。ヒトの目においては、波長によって色が違って見えるようになっており、波長が長いほど暖色、波長が短いほど寒色に見えます。

可視光線は、カメラなどの撮像素子やテレビなどの表示デバイスで利用されている他にも、「可視光通信」として発光デバイスを制御して通信用途で使用されることもあります。

紫外線

紫外線は、ウィルスの除菌・殺菌用途や樹脂硬化などで活用されています。

X線

X線は、レントゲン装置の光源として活用されています。

 

電磁波の性質

電磁波は「波」と「粒子」の2つの性質を持ちます。

波の性質

電磁波はの波の性質は、周波数が低い「電波」において支配的となる性質で、「干渉」や「回折」といった現象を引き起こします。

干渉

干渉は、2つの波が互いに影響し合うことで、複数の波が強め合ったり、弱め合ったりすることで電磁波の振幅や位相が変化します。

実際の電磁波においては、地面や障害物の反射波によって「マルチパス」が生じ、複数の経路から到達した電磁波が互いに干渉を起こします。

回折

回折は電磁波の回り込みの性質を表したもので、周波数が低いほど回折が大きくなります。

これを通信の観点で捉えると、回折が大きいほど電波が届きやすいことを意味し、そのため障害物が存在した場合にも、周波数が低い電磁波ほど遠くへ届けることができます。反対に周波数が高い電磁波は、障害物が存在するとそこで反射するため、見通しの悪い環境では遠くへ届けることはできません。

粒子の性質

電磁波の粒子としての性質は、電子や光子として考えると理解しやすいです。これらの粒子1つあたりが持つエネルギーは、波長が短くなるほど大きくなります。

つまり、周波数が高くなるほどエネルギーが大きくなるということです。

よく紫外線やX線が人体に危険と言われているのは、この粒子のエネルギーが高いためで、これらの高エネルギーの粒子は「電離作用」によって細胞を電子・分子レベルで損傷させる可能性があります。

反対に粒子のエネルギーが小さい「電波」においては、人体に対して「刺激作用」や「熱作用」を持ちます。

 

電磁波の作用

電磁波が人体に与える影響には「刺激作用」「熱作用」「電離作用」の3つの作用が存在します。

出典:総務省

刺激作用

刺激作用は、100kHz以下の比較的低い周波数で発生する人体への作用で、ビリビリやチクチクといった刺激を伴って人体に微小な電流が流れます。

電流が流れる理由は、人体が電気を流す「導体」であるためです。

導体に対して強い電波を照射すると、誘導起電力によって導体(人体)に誘導電流が流れます。この誘導電流は周波数が低いほど流れやすく、周波数が高くなるにつれて表皮効果によって表面にしか電流が流れなくなるため、徐々に誘導電流が流れにくくなります。

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熱作用

熱作用は、電波のエネルギーの一部が体内に熱として取り込まれる作用で、100kHz以上の周波数で発生します。

人体に電波が照射されると大半は反射しますが、一部は人体へと侵入し熱に変換されます。このときに電波の強度が非常に高いと、発熱量も大きくなるため体温が上昇し、一定以上の温度上昇に至ると、その熱ストレスから行動パターンが変化すると言われています。

そのため電波を意図的に放射する電子機器(携帯電話、無線機など)においては、人体の電波の吸収量が一定以下に収まるように、電波防護指針で「SAR:Specific Absorption Rate(比吸収率)」をもとに閾値が定められています。

熱作用の身近な例としては「電子レンジ」がありますが、電子レンジは加熱対象の食材に対して、2.4GHzの電波を照射することで熱作用を発生させて温めています。

電子レンジの電力は数100W~1,000Wを超えるものまで存在し、人体が熱作用によって温められないように金属筐体でシールドされています。

一方で Wi-Fi や Bluetooth などの電波は同じ2.4GHzですが、出力電力が10mWと電子レンジの 1/10,000 程度の強度であるため、熱作用によって人体が温められることはありません。

電離作用

電離作用は、粒子のエネルギーが高くなる放射線の周波数領域で発生する現象です。

これらの電磁波は、物質中を通過するときに原子や分子から電子を弾き飛ばして、陽電荷を帯びた原子(分子)と自由電子に分離せてしまい、このことを電離と呼びます。

出典:文部科学省

電離作用は、人体のDNAを損傷させる可能性があるため、被曝量を一定以下に抑える必要があります。

 

おわりに

今回は電磁波の種類と人体への影響について解説しました。

電磁波はひとくくりに有害なものとして扱われることがありますが、実際には周波数によって性質が異なり、電波と呼ばれる周波数帯のものにはほとんど危険性はありません。

不必要に電磁波の危険性を煽る記事や書籍などがありますが、正しい知識を身につけて、デマや迷信に惑わされないようにしてください。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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ABOUT ME
エンジャー
EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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