電気回路において、様々な回路で使用されるコンデンサ。
今回はそんなコンデンサの中でも、最もよく使用される部品 TOP3 の「電解コンデンサ」「フィルムコンデンサ」「セラミックコンデンサ」のそれぞれの長所と短所について解説します。
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電解コンデンサ
電解コンデンサの長所はなんと言っても「静電容量が高い」ことです。
誘電体の比誘電率は 7~10 程度とそれほど高くありませんが、絶縁層の厚みが極めて薄く、また電極となるアルミ箔の表面がエッチングによって凹凸が生じるため、高い静電容量が得られます。
反対に短所としては「寿命」と「周波数特性」が挙げられます。
寿命は誘電体として電解液を使用しているため、時間が経過するごとにコンデンサの封口部から電解液が徐々に抜けていき、結果として静電容量が低下する、つまり寿命が短くなります。
この静電容量の低下速度は、コンデンサの使用環境温度が10℃上昇するごとに寿命が 1/2 になるという「アレニウスの10℃則」 で計算することが可能です。
電解コンデンサの各メーカーのWEBサイトでは、パラメータを入力することで寿命が計算できるツールが用意されていたりしますね。
また周波数特性に関しては、他のコンデンサと比較すると寄生抵抗 ESR が大きいという特徴を持ちます。
この ESR は損失が発生させ、コンデンサ内部で自己発熱して寿命が低下することにつながるため、電解コンデンサを高い周波数において使用することはできません。
フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサには、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの種類があります。
これらはそれぞれ違った特徴を持ちますが、ここではポリプロピレンのフィルムコンデンサをもとにその特徴を見ていきます。
フィルムコンデンサの構造は、誘電体となるプラスチックフィルムの両面にアルミを蒸着することで電極を構成し、これを巻き上げることで円筒状や角状に成形しています。
このように蒸着によって電極を構成するコンデンサは「メタライズドフィルムコンデンサ」と呼ばれており、部品の形状としてはリード付きのタイプが主流となります。
フィルムコンデンサの長所は「耐圧が非常に高い」ことと「DCバイアス特性が小さい」ことです。
耐圧に関しては、商用の交流電源回路で使用するために必要な安全規格の認証を取得しているものが多く存在しています。
この安全規格というのは、商用電源での短絡や漏電が人体への感電に直結するということで、それらの障害を抑制するために定められた規格で、この規格を取得していることは高い絶縁耐性を持つことの証明になります。
さらにフィルムコンデンサの場合には、蒸着した電極が局所的に絶縁破壊を起こしたとしても、自己修復機能を持っており、これによって瞬時に絶縁状態を回復することもできます。
一方で短所としては誘電率が低いこと、つまりは他のコンデンサよりも「サイズが大きく」また「価格が高い」ことが挙げられます。
サイズに関しては、誘電体の比誘電率 2~3 と低いため、他のコンデンサと同じ静電容量を得るためにはサイズを大きくする他に方法はありません。
またサイズが大きくなることによって、その分だけ使用する材料も多くなるということで、同じ静電容量で比較した場合に他のコンデンサよりも価格が高い傾向にあります。
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサは「低誘電率系」「高誘電率系」「半導体系」の3つの種類に分かれますが、ここでは最も汎用的に使用されている「高誘電率系」の特徴を見ていきます。
セラミックコンデンサは、誘電体となるセラミックを電極で挟み込んだもので、部品の形状としては「リード付き」と「表面実装」のどちらのタイプもあります。
このうちリード付きの部品は「単板型」と「積層型」に分かれています。
単板型は円形の電極の間にセラミックが挟まった非常にシンプルな形状で、静電容量は小さいものの高い耐圧性のを持つことが特徴として挙げられます。
一方で積層型は、表面実装用のチップ部品をリード付きの部品としても使えるよう、はんだ付けしたものとなっており、表面実装の積層セラミックコンデンサとほとんど同じ特性を持ちます。
ただしセラミック特有の電歪、いわゆる音鳴きに関しては、リード線がつくことによって
基板への振動が緩和されて小さくなるとも言われています。
表面実装部品である積層セラミックコンデンサ、MLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor)は、誘電体と内部電極が交互に多層に渡って積層された構造となっており、可能な限り誘電体を薄くして、さらに層数を増やすことで高い静電容量を実現しています。
そんなセラミックコンデンサの長所は「静電容量が高く」かつ「サイズが小さい」ことが挙げられます。
これはセラミックの比誘電率が 10,000 程度と、他のコンデンサと比較して群を抜いて高いことがその要因です。
また ESR や ESL が小さいこと、つまりは周波数特性に優れることも長所の1つで、特にMLCCにおいては、小型化するほど ESL が小さくなるため、高周波で低いインピーダンスが得られます。
さらに 低ESL を実現するために、縦横比を逆にした形状のものあります。
一方で短所は「DCバイアス特性」と「温度特性」です。
DCバイアス特性は、直流電圧が掛かったときに静電容量が変化してしまう現象のことで、高誘電率系のセラミックコンデンサは静電容量の変化が非常に大きいです。
このDCバイアス特性は、静電容量が大きいものやサイズが小さいものほど特性への影響が大きいため、機器を小型化するにあたってはDCバイアスによる静電容量の低下を加味して
部品を選定することが重要となります。
また温度特性は、周囲温度の変化による静電容量の変化を表すもので、温度に対して
静電容量の変化量が大きいほど温度特性が悪いということになります。
こちらも設計する上では、どれくらいまで静電容量の変化を許容するかが、部品選定時のポイントになります。
おわりに
今回は「電解コンデンサ」「フィルムコンデンサ」「セラミックコンデンサ」のそれぞれの特徴について解説しました。
いずれのコンデンサとも、良い所があれば悪いところもあります。
そのため実際に使用する際には、それぞれのコンデンサの長所と短所をきちんと理解した上で適切に使い分けることが大切です。
この表は、それぞれのコンデンサを相対的に比較したものです。
詳細の仕様は部品ごとにデータシートを確認する必要がありますが、ざっくりどの種類のコンデンサを使うかを判断するときには、この表をベースに考えてみるのも良いかと思います。
今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。