バイアスティーは、高周波の回路においてICやトランジスタなどの能動素子に電源を供給するために使用される回路です。
今回はそんなバイアスティーの基本となる知識について解説します。
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バイアスティーとは
バイアスティーは通常の電源回路と違い、バイアスという名にある通り、直流電圧を信号線に重畳して供給する回路になります。
このバイアスされた直流電圧は信号にとっては不要なものなので、直流電圧をカットするためのコンデンサも付与されています。
このようにバイアスティーは、信号の伝送線路と電源の供給回路が組み合わさった回路となっており、回路全体の形状がアルファベットの「T」の形に似ていることから「バイアスティー」と呼ばれています。
バイアスティーの特性としては、電源回路が信号線に対して影響を与えていないかを見るために、Sパラメータで言うとS21に相当する「挿入損失特性」やS31に相当する「アイソレーション特性」が規定されています。
電源回路のローパスフィルタ、信号線のハイパスフィルタ、これら2つのフィルタが組み合わさったものがバイアスティーです。
回路方式
バイアスティーの回路方式には、コイルとコンデンサによる「集中定数型」と伝送線路で構成された「分布定数型」があります。
それぞれの使い分けとしては、集中定数型が一般的なタイプで、分布定数型がマイクロ波帯などの高周波用といったイメージです。
集中定数型
集中定数型の方の原理は、コイルが周波数が高くなるに従ってインピーダンスが高くなり、反対にコンデンサは周波数が高くなるほどインピーダンスが低くなるという性質を利用して、ローパスフィルタとハイパスフィルタを構成します。
分布定数型
分布定数型の方は、信号線にコンデンサを挿入するのは同じですが、電源回路の方はオープンスタブとショートスタブによってローパスフィルタを構成します。
スタブというのは、日本語では「切り株」という意味で、伝送線路が途中で切りっぱなしになったものになります。
この切りっぱなしになった伝送線路は、一見するとただの無駄な配線のようですが、高周波においては波長λに対して λ/4 の長さを持ったときに、スタブの先端で反射した信号がもとの信号から位相が反転して戻ってきて、信号を打つ消す働きを持つためフィルタとして機能します。
そのため特に高周波では、コイルやコンデンサを使ってフィルタを構成するのではなく、このように伝送線路上にスタブを作って、フィルタ回路を構成する方法が用いられます。
分布定数型のバイアスティーでは、電源ラインと並列にオープンスタブを配置し、さらに電源ラインそのものをショートスタブとすることでローパスフィルタを構成しています。
このときにオープンスタブの方は、信号を打ち消す働きを持つため、等価的には並列に接続したコンデンサと同じような役割となり、反対にショートスタブの方は信号線から見るとインピーダンスが∞の伝送線路に見えるため、直列に接続したコイルと同じように働きます。
ちなみにこのスタブですが、オープンスタブの方を伝送線路の配線幅を太くし、ショートスタブの方を配線幅を細くすることでより広い周波数帯でローパスフィルタとして機能させることができます。
おわりに
今回はバイアスティーの概要と集中定数型と分布定数型の違いについて解説しました。
バイアスティーそのものは、集中定数型であれば簡単に作ることができるので、ちょっとした実験に必要な際は自作してみるのも良いかと思います。
ただしコイルとコンデンサのどちらも温度依存性のある部品なので、実際の使用環境に合わせて設計しないといざ使ってみると思ったような性能が出ないこともあるので、そのあたりには注意してください。
フィルタの設計方法はコチラ。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。