EMC試験になくてはならない「アンテナ」。
iNarte資格試験においても、アンテナ関連の問題は出題される頻度が高く、アンテナの基本的な特性については理解しておくべきです。
そこで今回の記事では、アンテナの「放射パターン」と「ゲイン」の測定方法について紹介します。
動画はコチラ↓
【アンテナゲイン】
【指向性(放射パターン)】
放射パターンとアンテナゲインの定義
測定方法の前に定義の確認です。
放射パターン
放射パターンはアンテナの指向性を表すものです。
ある方向からの角度をθとするとき、θ方向に放射する電界の大きさを示します。
最大値を示す角度の電界強度の大きさを基準として、相対値で結果を表示します。
1GHz超の放射エミッション試験では、試験に使用できるアンテナの「半値幅」が規定されています。
半値幅は電界強度の大きさが 1/√2 = 0.707 倍になる角度の幅のことで、これがいわゆる「指向性」を表します。
ゲイン
ゲインには基準アンテナの設定により、2種類のゲインがあります。
この基準となるアンテナは「等方性アンテナ」と「半波長ダイポールアンテナ」です。
絶対利得
等方性アンテナを基準とした場合、ゲインの単位は[dBi]で表します。
dBのあとに付く「i」が等方性を示す「isotropic」の略になっています。
等方性アンテナ自体は電波をすべての方向に一様に放射することができる素子で、実在しない理想的なアンテナです。
このアンテナに対するゲインの比が「絶対利得」として表されます。
相対利得
半波長ダイポールアンテナが基準の場合は「dBd」となります。
同じく「d」は「dipole」の略ですね。
半波長ダイポールアンテナはアンテナ効率が良く、構造がシンプルなため理論計算も容易であるため基準として使用されます。
半端頂戴ポールを基準としたときのゲインを「相対利得」と呼びます。
利得の変換
絶対利得と相対利得は相互に変換可能で、以下のようになります。
【対数】 絶対利得 = 相対利得 + 2.15 〔〕
【真数」 絶対利得 = 相対利得 × 1.64 (真数)
放射パターンの測定方法
アンテナの測定では平面波として評価するために、遠方界とみなせる場で測定する必要があります。
アンテナの周囲に反射物や障害物があると測定値に誤差を生じるため、一般的には測定周波数の波長の長さと比較して十分に広い電波暗室で行われる場合が多いです。
放射エミッション試験と違い、床面にも吸収体を敷き詰めた「六面電波暗室」で測定します。
送信アンテナから出力された電波に対して、受信側のアンテナ(供試品)を回転させて、それぞれの角度での読み値をプロットしていきます。
「メインローブ」のゲインを基準として、回転角度ごとにゲインが表示されます。
横方向への出力を「サイドローブ」、後方への出力を「バックローブ」と呼びます。
アンテナゲインの測定方法
アンテナゲインの測定方法はいくつか種類がありますが、ここでは「標準アンテナ法」による方法を紹介します。
標準アンテナ法では,あらかじめゲインが既知の標準アンテナ(Standard Antenna)と比較することでゲインを求めます。
測定環境としては、放射パターンの測定環境と同じ六面電波暗室で行います。
標準アンテナとして使用されるアンテナは、 UHF 帯より上の周波数ではホーンアンテナ、UHF 帯以下ではダイポールや 3 素子八木・宇田アレーアンテナが用いられます。
おわりに
アンテナの「放射パターン」と「ゲイン」の定義と測定方法について紹介しました。
普段アンテナを測定する機会がない方にとってはあまり馴染みがないかもしれませんが、それぞれEMC試験において大切なファクターです。
また陸上無線技術士の資格には必須の知識となります。
資格取得に興味のある方は、勉強してみてください。
アンテナ関連の書籍では、以下のものが参考になります。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。