万能計測器として知られている Analog Discoveryに新製品(Analog Discovery3)が登場したので、旧製品(Analog Discovery2)と比較してみます。
動画はこちら↓
スペック
ここでは計測器で重要となるアナログの入出力特性を中心に、Analog Discovery2と Analog Discovery3の性能を比較します。
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オシロスコープ(アナログ入力)
オシロスコープの性能に関わるアナログ入力特性を比較すると、Analog Discovery3になってサンプリングレートが 125MSPSまで性能向上しています。
この性能向上は内部で使用している ADコンバータのスペックによるものですが、用途から考えると 100MSPSと 125MSPSとでそれほど大きな違いがあるわけではありません。そのため性能向上したとはいえ、用途を変えるほどではないかなという印象です。
メモリ長についても従来の16kポイントから 32kポイントと、2倍多くなっています。ポイント数が多いほど長時間波形を測定できるため Analog Discovery3を選ぶメリットがあると言えますが、数Mポイント以上のメモリ長を持つオシロスコープと比較すると大した性能向上に感じないのが難しいところです。
信号発生器(アナログ出力)
アナログ出力特性についてもアナログ入力と同様に、サンプリングレートが100MSPSから125MSPSに性能向上しています。
ただしこの性能向上も Analog Discovery自体の使い方を変えるほどではなく、どちらかというとマイナーアップデートくらいの印象です。
その他
その他の性能もサンプリングレートに関連する項目については性能向上が図られていますが、一方でそれ以外の性能はAnalog Discovery2から据え置きとなっています。
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外観
2つのAnalog Discoveryを並べてみると、Analog Discovery3の方が一回り以上大きくなっていることがわかります。
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Analog Discoveryが卓上で電子回路の実験をする際に使用するものと考えると、例えば作業スペースが狭い場合ではサイズが大きいことで使いづらく感じるかもしれません。
また重量に関しては Analog Discovery2が 約80g、Analog Discovery3 が 約140gとなっており、サイズが大きい分だけ Analog Discovery3の方が重いです。
インターフェース
測定を行う上で重要となるインターフェースについては、Analog Discovery2の仕様を引き継いで Analog Discovery3でも40ピンの入出力端子が設けられています。
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Analog Discoveryシリーズの特徴として、アダプタモジュールと組み合わせて様々な機能が実現できることが挙げられます。
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具体的にはBNCアダプタを使えばオシロスコープのパッシブプローブが使えますし、インピーダンス測定用のアダプタを使えばインピーダンスアナライザの機能が使えます。
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そのため Analog Discovery3になっても従来のアダプタモジュールが使えるのは非常に良いポイントです。
PC接続
PC接続するための USB端子は Analog Discovery3になって従来の Micro-Bから USB-Cに変更されました。
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近年は USB-Cコネクタがかなり普及しているので、このUSB-Cの採用も良いポイントの1つです。
その他
その他に外観に関わることとしては、ゴム脚が滑りにくくなったことが挙げられます。もちろん机の材質によって滑りやすさは変わりますが、特にケーブルやアダプタを接続したときに位置ずれしづらくなったことは使いやすくなったポイントと言えます。
Analog Discovery3 の位置づけ
Analog Discovery2の発売から7年以上の時を経て Analog Discovery3が発売されたわけですが、時間経過の割にはそれほど大きな性能差がないというのが正直な印象です。
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この性能差が小さい理由については大きく2つの要因があると考えています。
用途
1つ目は Analog Discoveryが教育用の計測器であるということです。
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Analog Discoveryは機能の豊富さから実務で使用されている方もいますが、主たる用途が教育用となっているため高性能化するメリットはそれほどありません。
またハードウェア的な性能よりも、ソフトウェア無線のようにアップデートによって機能拡大している側面もあります。
つまりAnalog Discovery自体がハードウェア性能を重視する計測器として開発されていないというのが1つ目の理由です。
サプライヤー
2つ目の理由が半導体部品のサプライヤーの影響です。
近年、半導体部品の入手性は様々な産業において重要な問題となっていますが、Analog Discoveryにおいても ADCと DACがアナログ・デバイセズ製のものからテキサス・インスツルメンツ製のものに変わっています。
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この2つの部品は ADCが AD9648 → ADC3644に、DACが AD9717 → DAC5672へと変更されています。
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この部品変更が入手性の問題なのかはわかりませんが、いずれにしてもアナログ・デバイセズからテキサス・インスツルメンツへの鞍替えというのが Analog Discovery3発売の理由なのではないかと思います。
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おわりに
今回は Analog Discovery3のスペックや旧製品からの変更点について紹介しました。
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Analog Discovery3はサンプリングレートやメモリ長など、いくつかのポイントが旧製品から改良されているため性能を重視したい方にはおすすめです。
一方でそこまで性能が必要ない方は Analog Discovery2で十分満足できるはずです。
ただし Analog Discovery2は在庫限りで売り切りとなってしまう可能性もあるため、入手を検討している方は早めに買っておくことをおすすめします。
Analog Discovery2の使い方はこちらの記事で解説しています。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。