今回は電子工作にに必要な計測器を紹介します。
動画はこちら↓
マルチメーター
マルチメーターは「テスター」と呼ばれるもので、「電圧」「周波数」さらには「抵抗値」など複数の測定機能を持つ計測器です。
電気回路における最も基本的な計測器の一つです。
このマルチメーターについてはとりあえず1つは必ず持っておくべき計測器で、電子工作に限らず日常生活においても1台あれば重宝します。
現在はデジタル方式のものが主流で、最近のものであればアプリと連動してスマホでデータを確認できるものもあるようです。
マルチメーターについてはこれ自体で正確な測定を行うというよりも、動作のあたりをつけたり、異常な動作に陥っていないかなどの確認のために使用することが多いです。そのためプロの現場以外では、測定精度についてはそこまで気にする必要はありません。
わたしがよく使用しているのはポケットタイプの小型のマルチメータですが、これくらいの安くて小さいタイプのものでも十分実用に耐えます。
トランジスタテスター
トランジスタテスターは計測器というよりも計測ツールといった立ち位置の商品で、電子部品の定数を確認するときに使用すると便利です。
機器の詳細については、以下の記事で解説しています。
使用上の注意点としては、各部品ごとに測定範囲が規定されており、その範囲を超えるものについては正しく測定を行えません。
また測定精度についてもツールという立ち位置のものなので、参考程度とするのが良いかと思います。
Amazon などの通販サイトでケース有り無しや部品の実装有無など、様々なバリエーションのものが販売されています。
安定化電源
電子工作では直流の数V~数十Vの電圧が必要になることが多く、そうしたときに使用されるのが「安定化電源」です。
安定化電源は任意の電圧や電流を出力することができ、様々な回路を動作させる際に非常によく使用します。
安定化電源にはいくつかの種類がありますが、特別なこだわりがないのならスイッチングタイプの安価なモデルでも問題ありません。
ただし安定化電源本体に Outputボタンがあるかどうかは確認したほうが良いです。
ある程度の経験があれば誤った使い方をしないと思いますが、初心者の方にとって Outputボタンがないのはやや不親切で、回路を故障させてしまう可能性があります。
そのため価格が多少高くとも、Outputボタンが搭載されたタイプの安定化電源を選択する方が良いです。
電子負荷
電子負荷は電源回路などの電子工作を行う方に必要となる計測器です。
電子負荷は名前の通り、電子制御可能な負荷のことで「定電圧モード」「定電流モード」「
定電力モード」など様々な負荷条件で電源回路を評価することができます。
電子負荷は基本的に負荷容量によって種類が分かれています。
こちらのUSBタイプの電子負荷は「USBチェッカー」と呼ばれているもので、数十W程度までの電力に対応しています。
一方で100Wを超えてくるとそれなりの放熱機構が必要となるため、大きなファンが搭載された電子負荷が一般的となります。
こちらの電子負荷は150Wまで対応できるもので、これくらいの電力容量があれば身近な電源製品の測定にはほとんど賄えます。
オシロスコープ
オシロスコープは電気信号の波形を確認するための計測器で、電子工作といえば「オシロスコープ」というイメージを持つ方も多いはずです。
オシロスコープについては価格と性能がピンキリで存在するため、どれを選べばよいかわからないという方も多いと思います。
細かい性能に言及すればキリがないですが、個人的にははじめの1台として「チャンネル数が2ch以上」で、かつ「帯域幅が100MHz程度」あれば十分だと思います。
これくらいの性能があれば、おそらくは電子工作のほとんどの場面で困ることは無いはずです。あとは価格次第で、チャンネル数を4chのものやシリアル通信のデコーダが搭載されたものなどを選択するのも悪くないと思います。
最近はエントリーモデルのオシロスコープの価格が非常に安くなっているので、電子工作にチャレンジしてみたい方はぜひ早いうちにオシロスコープを導入することをおすすめします。
信号発生器
オシロスコープと合わせて「信号発生器」も必要になることが多い計測器です。
信号発生器はADコンバータを使うような電子工作において重宝する計測器で「正弦波」「矩形波」「三角波」など任意の波形を出力することができます。
信号発生器の性能については 2chもあれば十分で、出力可能な周波数範囲も10MHzまで対応していれば困ることはほとんどありません。
なお信号発生器についてはオシロスコープに内蔵されているモデルもあり、そちらを選択するのもリーズナブルです。
以前の記事で紹介した「Analog Discovery 2」も同じような計測器で、スタンドアロンで動作はできませんが、オシロスコープと信号発生器のどちらも必要十分な性能を持っています。
ネットワークアナライザ
ネットワークアナライザは高周波回路の測定に使用する計測器です。
ここではその中でも安価で非常に高性能な「NanoVNA」をおすすめします。
NanoVNAは高周波回路に少しでも興味がある方には非常に役立つ計測器で、1万円以下で入手可能です。
使用方法については、以下の記事やトランジスタ技術2022年7月号で解説しています。
より高い周波数まで測定したい方には「LiteVNA」がおすすめです。
LiteVNA はNanoVNAの進化版という位置づけで、周波数帯域が6GHzまで拡張されています。
スペクトラム・アナライザ
スペクトラムアナライザも高周波回路の評価に使用する計測器です。
一般的な電子工作においては使用頻度が少ないかもしれませんが、無線や高周波を取り扱うのであれば1台あると非常に便利です。
スペクトラムアナライザも機能や価格はピンキリで、安いものであれば 「TinySA」、ソフトウェア無線機の 「HachRF One」、持ち運び可能な「ハンドヘルド型」、据え置きで使用する「ベンチトップ型」などがあります。
それなりの性能を必要とするならハンドヘルド型やベンチトップ型がおすすめです。
スペクトラムアナライザの選択の基準としては「上限周波数」と「トラッキングジェネレータの有無」です。
このうち上限周波数については周波数が高いほど価格が高くなるので、用途に合わせて選択することが大切です。
トラッキングジェネレータについては、スペクトラムアナライザに内蔵される信号発生器のようなもので、スペクトラムアナライザをネットワークアナライザのように使用できます。
おわりに
今回は電子工作に必要な計測器というテーマで、よく使用する計測器を8つ紹介しました。
昔に比べると計測器全般とも価格が安くなり、手が届きやすくなっています。
いずれの計測器とも用途に応じて必要かどうかが変わってきますが、興味のある計測器があればチェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。