前回の記事「自動車に求められるEMC性能」では、自動車のEMC試験の種類やEMC性能の厳しさについて紹介しました。
今回はその続きとして、自動車のEMC規格「ECE R10(ECE Regulation No.10)」について紹介します。
規格の概要
ECE R10は、EMC規格では珍しい国際連合が発行した EMCの国際規格です。
規格の適用範囲は、路上での使用が意図された車両、及び車両への取り付けが意図されたコンポーネントやセパレート・テクニカル・ユニット(STU) とされています。
つまり、車両そのものはもちろん
車両に搭載される「ECU」や
「インバータ」や「モーター」にも適用される規格ということです。
ECE R10の参照規格
自動車のEMCの国際規格の多くは、エミッション規格が「CISPR規格」、イミュニティ規格が「ISO規格」として規定されています。
「ECE R10」においても、参照規格としてこれらの規格が適用されています。
①:全ての車両に適用
②:充電回路を有する車両に追加適用
③:全ての ESA(electronic sub assembly)に適用
④:充電回路を有する ESA に追加適応
* :充電状態での試験モードが追加
また、第5版からは充電機能を有するESA(Electorical Sub Assembly)が規格の適用対象となっています。
つまり「HEV」や「EV」、さらにはそれに付随するECUも「ECE R10」の適用対象となることを意味します。
また「充電回路を有する ESA 」を対象とした試験では、民生品向けの試験規格である「IEC61000シリーズ」や「CISPR22(VCCI規格)」の試験項目が追加されています。
これらの試験が追加された要因としては、自動車が様々な機器に接続される「V2X」の機能が拡張されたことによって、民生機器と協調して動作するようになったためです。
接続先の「急速充電機器」においても同様に「IEC61851-22」として同じ項目の試験が規定されています。
ECE R10の最新動向
2020年1月現在においては、第6版が最新版となっています。
第6版は、2019年11月に発行されたばかりの新しい規格です。
第6版の規格の原文は「UNECE」のサイト、または以下のリンクから確認できます。
http://www.unece.org/fileadmin/DAM/trans/main/wp29/wp29regs/2019/E-ECE-324-Add.9-Rev.6.pdf
おわりに
自動車のEMC規格「ECE R10」の概要について紹介しました。
ECE R10も自動車の進化に合わせて、第4版、第5版、そして第6版と進化を重ねてきていることがわかります。
ECE R10で参照されているそれぞれの試験方法「ISO規格」「CISPR12」「CISPR25」などは、今後別の記事でご紹介していく予定です。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。