EMC試験を含めて、高周波の測定には高周波特有の部品を使用します。
高周波は信号の波長が短く、信号の反射やロスの影響が大きいためです。
今回の記事では、高周波測定で使用される代表的な部品「アッテネータ」「アンプ」「ミキサー」について紹介します。
アッテネータ
アッテネータは高周波の信号を減衰させる働きがあります。
なぜ減衰させるのか?
一例としては、受信機に大きな信号を入れると、入力が飽和(過入力)して波形が歪むためです。
歪みをなくすためには、入力する信号を減衰させる必要があります。
そしてそのためにアッテネータは使用されます。
アッテネータ自体は、抵抗をπ型、もしくはT型に配置した回路で構成されます。
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具体的な設計方法は以前の記事で紹介しているので、参考にしてみてください。
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実際のアッテネータは、受信機の内部に組み込まれていたり、減衰量がコントロールできるようになっていたり、大電力に対応していたりと多様です。
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高周波測定では非常に大切な部品です。
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アンプ
アンプは高周波以外の分野でもよく使用されているので、何のための部品かはすぐに分かりますね。
信号を増幅させる部品です。
アッテネータと反対の作用を持ちます。
しかし、高周波測定においてはアンプとアッテネータは併用されます。
なぜか?
高周波の測定においては、信号の反射を防ぐためにインピーダンスマッチングという考え方があります。
インピーダンスマッチングは言葉の通り、インピーダンスを整合させることです。
アンプの入力が50Ωに整合できていない場合に、アンプの入力段にアッテネータを挿入します。
話が逸れてしまいました。
アンプの話しに戻ります。
アンプは小さな信号増幅するための部品ですが、その性能は増幅度「ゲイン」と増幅したときのノイズ性能「雑音指数」で表されます。
一般的には「ゲイン」が大きく、「雑音指数」の小さいアンプが好まれますが、用途に合わせてスペックを調整します。
高周波測定で使用するアンプも、モジュールタイプ、少電力用(プリアンプ)、大電力用(パワーアンプ)といろいろな種類があります。
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ミキサー
ミキサーは特に受信機で使用されるもので、名の通り「信号を混ぜる」ものです。
なぜ信号を混ぜるのか?
それは受信機で処理しやすい周波数に信号を変換するためです。
一般的な受信機では、「中間周波数」と呼ばれる受信機が処理しやすい周波数があり、その周波数に変換するためにミキサーが使用されます。
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ミキサーの動作としては、2つの信号を掛け合わせて、2つの信号の「和」と「差」の周波数に信号が発生させます。
そしてこの2つの信号のうち「差」の成分を「中間周波数」の信号とすることで、高周波の信号を受信することができるようになります。
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実物の多くは受信機の内部に組み込まれているので目にする機会は少ないですが、モジュールタイプのものなどは目にしたことがあるかもしれませんね。また高周波測定に使用するネットワークアナライザでは、アップコンバート(周波数を上げる)やダウンコンバート(周波数を下げる)する機能を外付けしている場合があります。
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おわりに
高周波測定に使用する部品のうち「アッテネータ」「アンプ」「ミキサー」について紹介しました。
EMC試験においても、それぞれの部品を使用しています。
受信機を触るだけではなかなか意識できないかもしれませんが、正しい試験を行うためには重要な部品なので、機会を見つけてスペックなどを確認してみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。