EMI試験で基準として採用されている「QP値」。
普段聞きなれない言葉なので、EMC試験を難しく感じさせる一つの要因です。
特にEMI測定のソフトウェアは、ピーク検波で測定した値をグラフ表示しるため、見かけでは基準値を超えているが規格に適合しているといったことがよく起こります。
というわけで「QP値」「QP検波」がどういったものか、考えてみたいと思います。
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QP値とは
QP値は「Quasi Peak」の略で日本語で「準尖頭値」と訳されます。
全然意味が分かりませんね(笑)
そもそもの成り立ちは、ラジオの受信障害に対する指標として考えられたもののようです。
ラジオの場合、ノイズの持続時間が短く、かつ頻度が低ければノイズのレベルが高くてもそれほど影響を与えないという考え方に基づいています。
つまり、CISPR規格の成り立ちと合致するわけです。
アナログ通信に対して、この考え方は非常に役立つものだったとは思います。
一方で、デジタル通信に対しては有効な指標といえないようです。
時代が進み、通信方式がアナログからデジタルに移行するなかで、旧時代の指標がEMI規格の中で取り残されたまま存在し続けています。
QP値の特徴
QP値は「持続時間」と「頻度(周期)」が重要なパラメータとなります。
T.Satoさんが翻訳しているサイトの「準尖頭値検波の使用の動機」という記事において、以下のように説明されています。
準尖頭値検波では先に示したサンプルで示した 持続時間 5 ms, 周期 20 ms のノイズよりも 持続時間 500 ms, 周期 2000 ms のノイズ の方が高く評価されるようになる。
また、単一の過渡的なノイズに対しても、 その持続時間が非常に短ければ低い値を示すが、 持続時間が長くなればそれが示す値は高くなり、 持続時間がある程度以上となれば尖頭値検波と同様の値を示す。
持続時間が「デューティー比」と考えると、デューティー比が高いほどQP値が高くなると言えます。
ただし、注意しなければならないのはスペクトラムアナライザやEMIレシーバーは周波数軸で解析する装置という点です。
単純なデューティー比ではなく、単一の周波数における時間変化を見る必要があります。
時間軸で見た時の周期は周波数に対応しますが、ここでいう周期は単一の周波数が発生する周期です。
普段オシロスコープを使用することが多い方には少しややこしいですが、混在しないようにしてください。
「時間領域」と「周波数領域」ときちんと分けた考えることが大切です。
QP検波器
実際にQP値を表示するためには、専用の検波器に信号を通す必要があります。
QP検波器は、抵抗とコンデンサで構成された「ローパスフィルタ」です。
QP値に「持続時間」と「頻度」が影響するというのも理解できます。
それぞれの検波器に特徴も図で見るとわかりやすいです。
おわりに
QP値の成り立ち、値の性質、検波器について紹介しました。
QP値は、EMCに携わった当初はだれでも当惑しますし、EMCに関わり続けていても本質はあまり理解されていないことが多いです。
今回紹介した内容によって、少しでも理解が深まれば幸いです。
今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。