電波暗室の特性を評価するための試験。
それが正規化サイトアッテネーション(NSA:Normalized Site Attenuation)です。
今回の記事では、NSAの概要と測定時の注意事項について紹介します。
NSAとは
定義
NSAとは「正規化されたサイトの減衰量」を表す指標です。
正規化するということは、何かの基準に照らし合わせるということで、ここでの基準は「CISPR16-1-4」で規定されている「完全平面、かつ、無限の面積を持った完全導体大地から構成され、大地面を除き反射物がないオープンサイト(OATS)」になります。
つまりNSA特性とは、理想的なオープンサイトの伝搬損失(理論値)とテストサイト(電波暗室)の伝搬損失の差を表したものと言えます。
「CISPR16-1-4」においては、エミッション試験に使用するサイトに対して伝搬損失が「理論値±4dB」の範囲に収まることを要求しています。
測定方法
NSA特性は、送信アンテナと受信アンテナを対向させて測定します。
このとき受信アンテナ高さを「1m~4m」の範囲で走査し、得られる最大の電界強度をもとに伝搬損失を求めます。
伝搬損失は床面や壁面の反射波の影響を受けるため、サイトの形状や大きさや電波吸収体の性能によって違いが生じます。
つまりテストサイト固有の特性ですね。
さらに送信アンテナの位置を変化させて、テストボリューム全体の特性を評価します。
NSA測定時の注意事項
送受信ケーブルの影響
アンテナに接続されている同軸ケーブルは測定結果に大きな影響を与えます。
原因は同軸ケーブルが垂直に垂れ下がっていることで、アンテナとして作用するためです。
その影響を低減するためには、同軸ケーブルにフェライトコアを装着します。
フェライトコアは、影響の出ている周波数(一般的には30~200MHzあたり)に適した型式を選定する必要があります。
例えばこういうタイプのものです。
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また、フェライトコアは1つ付けるだけでは不十分です。
一般的には、同軸ケーブルに10cmピッチで多数のフェライトコアが装着します。
アンテナマストの影響
アンテナマストは一般的にプラスチックで作られています。
プラスチックは空気と比較して誘電率が高いため、周波数が高くなるにつれて電波を反射したり減衰させたりする性質が表れます。
アンテナとの距離が近いほど影響が大きくなるため、アンテナマストとアンテナの距離をできるだけ離す必要があります。
一般的には、アンテナとアンテナマスト間の距離を1m以上とることが多いです。
アンテナマストの支持台
これはマストメーカーによる処置になりますが、アンテナマストの支持台には金属部品が使用されています。
この金属部品によって電波が反射するため、金属台の上にフェライト板や電波吸収体を装着することがあります。
おわりに
NSAの概要と測定時の注意事項について紹介しました。
サイトの校正作業は、あまり関わる機会が少ないかもしれませんが、EMC試験にとって非常に重要な評価です。
iNarte資格試験においても出題範囲であるため、まずは概要だけでも理解しましょう。
NSAの詳細については、総務省の「CISPR16-1-4の国内答申」からも確認できますのでチェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント失礼します。
・NSA測定時(距離3m,10m)のテストボリュームの最大値は規格で決まっているのでしょうか?
・同じくSVSWR測定時のテストボリュームの最大値は規格で決まっているのでしょうか?
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
テストボリュームの最大値については存じ上げませんが、上限は規定されていないと思います。(詳細は確認していませんが)
現実的には試験サイトが非常に大きくない限り、テストボリュームはそれほど大きくできないはずです。