ノイズ対策やEMC設計において、グランドは非常に重要な役割を果たします。
そこでこの記事では、グランド設計の中でも重要となるポイントを5つ紹介します。
- スリットを作らない
- 浮きパターンを作らない
- 一定間隔でビアを打つ
- 基板外周を囲う
- ガードパターンを太くする
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スリットを作らない
基板設計においては「スリットによってリターン電流が流れにくくなる」というように表現しますが、信号のリターン電流が流れる経路にスリット(電気的に不連続な点・線)が存在すると、そこでコモンモードノイズが発生してしまいます。
特にバスラインのような複数の線が並行配線されている場合に、密接したビアを使って層を跨いだときにスリットが生じ、ノイズ問題の原因となることが多いです。(等価的にはグランドパターンにインダクタが付与され、インダクタに生じる逆起電力がノイズ源となります)
そのためバスラインにおいては、ビアを密接して配置するのではなく、ビア間隔を広くしてリターン電流の経路を確保することが重要になります。
またビアの箇所で配線を曲げる場合には、ビアの方向にも注意する必要があります。
この例のように上から左方向へリターン電流が流れている場合、ビアが右肩下がりに配置されているとリターン電流に対してスリットとなるため、ノイズの発生原因となります。
一方でビアが右肩上がりに配置されている方では、リターン電流に対して反対方向にビアが配置されているため、リターン電流が妨害されることもなく、ノイズも発生しません。
浮きパターンを作らない
多層基板においては「ベタGND」と呼ばれる広いグランドパターンが配置されるますが、このベタGNDはただ単に配置しただけでは適切な効果が得られません。
なぜならグランドであるとはいえ、電気的に見るとただの導体でしかないため、リターン電流が流れると導体のインピーダンスによってコモンモードノイズが発生するからです。
つまりグランド同士を低いインピーダンスで接続していなければ、ベタGNDを配置してもノイズ対策として機能しないということです。
そのため基本的にはビアを使ってベタGND同士、あるいはGNDパターン間を接続するのですが、アートワークの都合でビアを配置できない場合には、ベタGNDの一部をカットする必要があります。
ちなみに、グランド同士の接続ができていない箇所のことを「浮き島」や「浮きパターン」と呼びます。これらの浮きパターンはアンテナとして作用する性質を持つため、ノイズを出したり拾ったりしてしまうことがあり、そのためにも必ずカットしておく必要があります。
一定間隔でビアを打つ
浮きパターンを作らないためにも、ベタGNDには一定間隔でビアを配置する必要があります。ビアの配置間隔は、対象となる基板の動作周波数によって変わってきますが、経験則として機器内で使用されている最高周波数の波長λに対して「λ/20以下」の間隔でビアを配置することが推奨されています。
λ/20に関してはあくまでも経験則ですが、多くの場合この経験則に従ってビアを配置することで、ノイズ問題の発生頻度は大幅に低減されます。
ビアによる接続がないベタGNDは、パッチアンテナとして機能します。このパッチアンテナは、辺の長さに応じて特定の周波数でアンテナとして電波を受信したり、送信したりします。
一方でこのパッチアンテナのエレメント間にビアを配置すると、ビア間の距離がアンテナの電気的な長さとなるため、共振周波数が高い周波数へと移行します。
これをノイズ対策の観点で見ると、ビアを配置することで共振周波数を高周波側へと移行させて、それによってノイズ対策が必要な周波数においてアンテナとしての機能を低下させていると言えます。
つまりビアを一定間隔で配置するというのは、ノイズを根本的に抑え込むことはもちろんですが、ベタGNDをアンテナとして機能させないためにも重要となるということです。
基板外周を囲う
プリント基板の外周を囲うようベタGNDを配置することで、ベタGNDをシールドとして機能させることができます。
特に基板端部の配線は、リターン経路が狭いことが多く、ノイズの発生原因となったり、あるいは外部からノイズを受けて誤動作する原因になったりします。
一方で、基板外周にベタGNDが配置されていれば、ベタGNDがリターン経路として機能するためノイズの発生が最小化され、かつ外部からのノイズに対してシールドとして機能します。
一般的に電磁波シールドは導体の導電率によってシールド効果が決まりますが、プリント基板の銅箔は導電率が非常に高いため、信号線との間にベタGNDを配置するだけでかなり高いシールド効果を得ることができます。
ただし前述の通り、外周を囲うベタGNDはノイズの波長λに対して λ/20以下の間隔でビアを配置している必要があります。
ガードパターンを太くする
クロストークなどのノイズの影響を受けないために、信号線に並行するガードパターンと呼ばれるグランドパターンが用いられることがあります。
このガードパターンは、信号線同士が干渉しないようにシールドとして機能しますが、ガードパターンの配線幅が細い場合には、逆にノイズの発生原因となることがあります。
この理由は、ガードパターンが細すぎるとインダクタンスが大きくなり、このインダクタンスによって逆起電力が生じるためです。
そのためガードパターンを使用する場合には、ある程度の配線幅を確保できるように信号線の引き回しを調整する必要があります。
またこのガードパターンもアンテナとして機能しないように一定間隔以下でビアを打ち、さらには端部にも必ずビアを配置する必要があります。
おわりに
今回は基板設計において重要となる「グランド設計」のポイントを5つ紹介しました。
- スリットを作らない
- 浮きパターンを作らない
- 一定間隔でビアを打つ
- 基板外周を囲う
- ガードパターンを太くする
実際の設計においては、いずれか一つだけを注意すればよいということではなく、全てに気を配る必要があります。
そのためこれらの注意事項を全て考慮して設計するにはある程度の経験が必要となりますが、まずは1つずつポイントを抑えながら設計された基板を確認してみてください。
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今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。